日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハズ」の意味・わかりやすい解説
ハズ
はず / 巴豆
purging croton
[学] Croton tiglium L.
トウダイグサ科(APG分類:トウダイグサ科)の常緑高木。中国南部、台湾以南の熱帯アジアに分布する。高さ6~10メートル。葉は互生し、長さ2~6センチメートルの柄をもつ。葉身は卵形または長卵円形で長さ8~12センチメートル、幅6センチメートル、先端は緩くとがり、葉柄の近くに2個の腺体(せんたい)がある。雌雄同株で、3月から5月にかけて長さ10~12センチメートルの総状花序を頂生するが、全部が雄花のものと、上部に雄花、下部に雌花をつけるものとがある。雄花は緑色で萼(がく)は5裂し、花弁5個をもつが、雌花には花弁がない。蒴果(さくか)は長円形ないし倒卵形で、三鈍角をなし、3個の種子をもつ。
果実は8月から9月にかけて成熟するが、裂開する前に採取し、取り出した種子を漢方では巴豆(はず)と称して峻下(しゅんげ)剤として使用する。巴豆を主薬とした処方では紫円(しえん)が有名である。また、種子を冷圧して得る脂肪油(30~45%)を巴豆油といい、皮膚に強い刺激を与えるので発疱(はっぽう)薬とするほか、峻下剤にも使用される。しかし、巴豆は毒性も作用も強いため、使用に際しては注意を要する。
[長沢元夫 2020年6月23日]