(読み)フ

デジタル大辞泉 「夫」の意味・読み・例文・類語

ふ【夫】[漢字項目]

[音](呉)(漢) フウ(慣) ブ(慣) [訓]おっと つま おとこ それ
学習漢字]4年
〈フ〉
成人した男。「丈夫情夫壮夫大夫たいふ匹夫凡夫
仕事にたずさわる男。「火夫漁夫工夫こうふ坑夫水夫すいふ農夫牧夫
男の配偶者おっと。「夫君夫妻先夫亡夫有夫一夫一婦
〈フウ〉
りっぱな男子。「夫子
おっと。「夫婦
[名のり]あき・お・すけ
[難読]水夫かこ妓夫ぎゆう工夫くふう大夫たゆう太夫たゆう夫役ぶやく丈夫ますらお夫婦めおと・みょうと鰥夫やもお鰥夫やもめ

つま【夫/妻】

《「つま」の意》
夫婦や恋人が、互いに相手を呼ぶ称。
はもよにしあればはなし汝を置て―はなし」〈・上・歌謡〉
動物のつがいで、互いの相手。
下辺しもへにはかはづ―呼ぶ」〈・九二〇〉
鹿と萩、秋風と萩など、関係の深い一組のものの一方をいう語。
小牡鹿さをしかの―にすめる萩の露にも」〈・匂宮〉
[類語]家内女房細君かみさんワイフかかあ山の神さいベターハーフ

おっと〔をつと〕【夫/良人】

《「おひと(男人)」の音変化》配偶者である男性。結婚している男女の、女性を「妻」というのに対し、男性をいう語。亭主。「―のある身」⇔
[類語]主人亭主旦那ハズバンドハズ夫君内の人宿六良人旦つく先夫前夫亡夫男鰥おとこやもめ寡夫

ぶ【夫】

公事などのために徴発された人夫夫役ぶやくに従う人夫。
「この御堂の―をしきりに召す事こそ」〈大鏡・道長上〉
(「歩」とも書く)雑兵。
かたちをやつし―になり」〈太平記・一〇〉

ふう【夫/富】[漢字項目]

〈夫〉⇒
〈富〉⇒

ひこ‐じ〔‐ぢ〕【夫】

《「ひこ」は男子の美称。「じ」は敬称》おっと。
「その―答へて歌ひたまひしく」〈・上〉

お‐うと〔を‐〕【夫】

《「おひと」の音変化》おっと。
「―は若く色衰へず盛りなる程なり」〈水鏡・上〉

お‐ひと〔を‐〕【夫】

おっと」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「夫」の意味・読み・例文・類語

せ【夫・兄・背】

  1. 〘 名詞 〙 夫、兄弟、恋人などすべて男性を親しんでいう語。主として女性が用いる。せこ。せな。せなな。せのきみ。せろ。せうと。⇔妹(いも)
  2. (イ) 女性が、自分の夫あるいは恋人である男性に対して用いる場合。畏敬の念を伴わない。
    1. [初出の実例]「後れ居て恋ひつつあらずは追ひ及(し)かむ道の隈廻(くまみ)に標(しめ)結へ吾が勢(セ)」(出典万葉集(8C後)二・一一五)
    2. 「あはぬせをこひしとおもはば思どちへんなかがはにわれをすませよ」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
  3. (ロ) 女性が兄または弟に対して用いる場合。年齢の上下を区別しない。
    1. [初出の実例]「言問はぬ木すら妹(いも)と兄(せ)と有りと云ふをただ独り子にあるが苦しさ」(出典:万葉集(8C後)六・一〇〇七)
  4. (ハ) 男性が、兄弟その他の親しい男性に対して用いる場合。歌語に特有である。
    1. [初出の実例]「向かつ峰(を)に 立てる制(セ)らが 柔手(にこで)こそ 我が手を取らめ」(出典:日本書紀(720)皇極三年六月・歌謡)

ぶ【夫】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 公事のために徴発された人。夫役(ぶやく)の人夫。
    1. [初出の実例]「始造八幡比売神宮寺。其夫者便神寺封戸」(出典:続日本紀‐神護景雲元年(767)九月乙丑)
  3. ( 「歩」とも書く ) いくさにかり集められた人足。名もない下級兵士。雑兵(ぞうひょう)
    1. [初出の実例]「貌をやつし夫(ブ)になり、中間二人に物具きせて馬にのせ」(出典:太平記(14C後)一〇)

おっとをっと【夫・良人・所天】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「おひと(男人)」から変化した語 ) 結婚している男を、女を妻というのに対していう語。夫君。亭主。また、結婚している、していないにかかわらず、女に対する男の意としても用いられる。おうと。
    1. [初出の実例]「紀伊の二位の夫たるによって」(出典:平治物語(1220頃か)上)

ひこ‐じ‥ぢ【夫】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ひこ」は男子の美称。「じ」は敬称 ) りっぱな夫をいう。男子の名の一部にも用いる。
    1. [初出の実例]「其の比古遅(ヒコヂ)三字は音を以ゐよ〉答へて歌ひたまひしく」(出典:古事記(712)上)

お‐うとを‥【夫】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「おひと(夫)」の変化した語 ) おっと。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
    1. [初出の実例]「聟(ヲフト)塩商たること十五年」(出典:白氏文集天永四年点(1113)四)

お‐ひとを‥【夫】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「夫(お)人」の意 ) =おっと(夫)

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普及版 字通 「夫」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 4画

[字音] フ・フウ
[字訓] おっと・おとこ・かの・それ・かな

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
大は人の正面形。その頭に髪飾りの(かんざし)を加えて、男子の正装の姿を示す。妻は女子が髪飾りを加えた形。夫妻は結婚のときの男女の正装を示す字形である。〔説文〕十下に「夫なり。大に從ふ。一は以て(しん)に象るなり」という。金文に人を数えるとき、〔鼎(こつてい)〕「厥(そ)の臣二十夫」「衆一夫」のようにいう。夫は労務に服するもの、その管理者を大夫という。夫人とは「夫(か)の人」、先生を「夫子(ふうし)(夫(か)の人)」というのと同じく、婉曲にいう語法である。「それ」は発語、「かな」は詠嘆の助詞。

[訓義]
1. おとこ、大人の人、つわもの。
2. おっと、良人。
3. 人夫、えだち、ぶやく。
4. その、この、かの、それ、これ、かれ、指事詞。
5. かな、句末の助詞。

[古辞書の訓]
和名抄〕夫 乎布度(をふと)、一に云ふ、乎度古(をとこ)〔名義抄〕夫 ソレ・カノ・カレ・ヲフト・ヲトコ・イヤシ・ツカフ・マスラヲ・ヒトヒト/夫 モシソレ/夫然 カクノゴトキ

[部首]
〔説文〕に規・の二字をこの部に属し、〔玉〕になお替を加える。規の従うところの夫の初形はで「ぶんまわし」の形。規は円、矩(く)は方をえがくものであるが、のち規を定規のように使う。(はん)を〔説文〕に「輦(れん)の字、此れに從ふ」とするが、輦の上部はくびきを並べた形で、車に馬をつけた形。また替はもとに作り、盟誓・争訟に関する字で、夫とは関係がない。

[声系]
〔説文〕に夫声として・扶・など八字を収めるが、特に夫の声義を承けるとすべきものはない。

[語系]
夫piua、(父)biuaは声近く、おそらく同系の語。子の父たるものが、また夫である。傅piua、輔biuaと、語としての関係があろう。

[熟語]
夫子・夫婦・夫役・夫家・夫課・夫君・夫妻夫遂夫壻・夫党・夫布・夫力
[下接語]
一夫・役夫・駅夫・火夫・寡夫・介夫・褐夫姦夫・頑夫・窮夫・馭夫・漁夫・狂夫・怯夫・轎夫・工夫・愚夫・軍夫・健夫・賢夫・功夫・坑夫・鉱夫・曠夫・宰夫・讒夫・士夫・車夫・樵夫・丈夫・情夫・嗇夫・水夫・征夫・船夫・潜夫・前夫・夫・膳夫・壮夫・懦夫・大夫・貪夫・丁夫・哲夫・田夫・独夫・人夫・農夫・万夫・鄙夫・匹夫・武夫・牧夫・僕夫・凡夫・野夫・勇夫・余夫・庸夫・懶夫・廉夫・輦夫・老夫

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【婚姻】より

…婚姻とは,社会的に承認された夫と妻の結合であり,この〈夫〉と〈妻〉の資格,役割については,それぞれの社会において独自の意味づけがなされている。この意味づけはときとしてひじょうにかけ離れているので,上記の広い定義にもう少し具体性をもたせようとすると,その定義からはずれてしまう事例が出てくる。…

【離婚】より

…日本では,他のアジア諸国と同じように,宗教や公権力によって離婚が規制されることはなかったので,かなり古くから,離婚は自由にされていた。ただし,夫側からの離婚のみであって妻側には離婚の自由がなく,妻の離婚請求権を初めて認めた1873年5月15日太政官布告も,父兄弟の付添いを条件とし,夫妻双方の離婚請求権を認めた明治31年民法も不平等な離婚原因を残していた。夫婦平等の離婚制度が出現したのは,ようやく1948年施行の現行民法に至ってである。…

※「夫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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