ファエトン(その他表記)Phaethon

翻訳|Phaethon

デジタル大辞泉 「ファエトン」の意味・読み・例文・類語

ファエトン(Phaethon)

Phaethonギリシャ神話の登場人物パエトンのこと。
Phaethon小惑星の一。1983年に赤外線天文衛星IRASの画像から発見された。名称は由来直径約5キロメートル。軌道長半径は1.27天文単位公転周期は約1.4年。地球近傍小惑星アポロ群に属す。軌道要素双子座流星群と一致するため、同流星群の母天体である彗星小惑星遷移天体と考えられている。フェートン
Phaétonサン=サーンス交響詩。1873年作曲。パエトンの物語に基づく。

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改訂新版 世界大百科事典 「ファエトン」の意味・わかりやすい解説

ファエトン
Phaethōn

ギリシア神話で,太陽ヘリオスの子。その名は〈輝く者〉の意。成人してはじめて会った父神に,どんな願いもかなえてやるといわれた彼は,1日だけの約束で父の馬車を借りて大空に乗り出したが,荒馬を御すすべを知らなかったため,軌道を踏み外した火炎の車があやうく地を焼き払いそうになったとき,ゼウス雷霆によってエリダノス川へ撃ち落とされた。このとき河畔に集まった彼の姉妹たちのヘリアデスHēliades(太陽神の娘たち)は,その死を悼んで嘆き続けるうちにポプラの木と化し,彼女たちの涙は凝固して琥珀(こはく)になったという。エリダノス川は古く北洋に注ぐ大河と想像され,のちにはポー川と同一視されたが,河口にエレクトリデス(琥珀)諸島があるというこの川は,ヨーロッパではバルト海にしか産しない琥珀が青銅器時代の地中海世界に入ったときの交易路,いわゆる〈琥珀の道〉の記憶をとどめるものと考えられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファエトン」の意味・わかりやすい解説

ファエトン
ふぁえとん
Phaethon

ギリシア神話の太陽神の子。普通、父はヘリオスとされるが、後代になると、たとえばオウィディウスではアポロンとなっている。ホメロスでは、この名は「光り輝く」を意味する形容詞として太陽について用いられる。成人したのち初めて父の名を知ったファエトンは、世界の果てにいる父を尋ねて行く。太陽神は、父である証拠にどのような願いでもかなえてやろうと約束したので、ファエトンは太陽神の二輪車に乗ることを願った。太陽神は、その危険から、ほかのことを願うよう彼を諭(さと)すが、結局約束どおり許してしまう。ファエトンには四頭の馬を御すだけの力がなかったので、二輪車はたちまち太陽神の教えた太陽の軌道を外れ、狂奔する太陽の炎は地上を焼き払った。ついにゼウスは雷霆(らいてい)をファエトンに投げつけ、彼はエリダノス河に撃ち落とされて死ぬ。彼の姉妹たち(ヘリアデス)は、彼の死骸(しがい)を葬ったのちも嘆き悲しみ、ついにポプラの木と化した。その流れ落ちた涙は琥珀(こはく)になったという。物語は、アイスキロスエウリピデスによって劇化されたが、いずれも散逸して伝わっていない。

[伊藤照夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ファエトン」の意味・わかりやすい解説

ファエトン
Phaethōn

ギリシア神話の人物。太陽神ヘリオスとオケアノスの娘クリュメネの子。母に育てられ,長じて父がだれであるか教えられると,ヘリオスの館を訪れ,しぶる父を説得して,太陽の車を操縦する役を1日だけ父に代ってつとめる許可を得た。しかしヘリオスが危惧したとおり,父の車を引く馬たちを御することができず,暴走させて世界を火災に陥れたため,ゼウスによって雷で打たれ,エリダノス川に墜死した。彼の死を嘆いた姉妹のヘリアデスたちは,川岸でポプラの木に変り,その涙は琥珀になったという。

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百科事典マイペディア 「ファエトン」の意味・わかりやすい解説

ファエトン

ギリシア神話の太陽神ヘリオスの子。成人して父に会い,太陽の馬車を御すことを願って許されたが,大地を焼きそうになったので,ゼウスは雷霆(らいてい)で彼をエリダノス川に撃ち落とした。死を嘆く姉妹たち(ヘリアデス)はポプラと化し,その涙は琥珀になったとも。

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世界大百科事典(旧版)内のファエトンの言及

【エオス】より

…同じくティタン神のひとりアストライオス(〈星男〉の意)とのあいだにゼフュロスZephyros(西風),エウロスEuros(東風),ノトスNotos(南風),ボレアスBoreas(北風)などの風神と,暁の明星その他の星を生んだ。ランポス(光)とファエトン(輝く者)という名の2頭の馬がひく戦車に乗り,太陽神の先駆けとなって大空をはせる女神は,ホメロスの叙事詩に〈ばら色の指をもてる〉〈サフラン色の衣をまとえる〉女神と歌われている。彼女はまた美男子の狩人オリオン,アッティカの王子ケファロス,トロイア王プリアモスの兄弟ティトノスらを恋人として誘拐したが,ティトノスとのあいだにもうけた子メムノンは,トロイア戦争でアキレウスに討たれた。…

【コハク(琥珀)】より

…もっとも,このリュンクリウムは黄コハクとは関係がなく,青や緑や赤の燃えるような色を呈するケイ酸塩鉱物の一種,トルマリン(電気石)だという説もある。 ギリシア神話では,太陽の黄金の二輪車を走らせているうち,誤って軌道を踏みはずし,転落して死んだファエトンの姉妹たち(太陽神ヘリオスの娘たち)が,ファエトンの死を嘆き悲しんでポプラの樹と化し,彼女たちの涙が太陽の光で乾かされ,河底に沈んでコハクになったという。ギリシア人がコハクをエレクトロン(〈太陽の石〉の意)と呼んだのは,この神話と関係があるかもしれない。…

※「ファエトン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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