三山(読み)さんざん

精選版 日本国語大辞典 「三山」の意味・読み・例文・類語

さん‐ざん【三山】

[1] 〘名〙
三つの山。特に、天香久山、畝傍山、耳成山の「大和三山」をさす。また、月山、羽黒山湯殿山の「出羽三山」、熊野本宮、新宮熊野那智大社の「熊野三山」をもいう。
播磨風土記(715頃)揖保「出雲の国の阿菩の大神大和の国の畝火・香具山・耳梨の、三山相たたかふと聞かして」
※太平記(14C後)五「三山の別当定遍僧都は無二の武家方にて候へば、熊野辺に御忍あらん事は成り難く覚へ候」
※深窓秘抄(室町中頃か)「三山。唐冠之時用之」
[2]
[一] 中国で三つの仙山、蓬莱方丈瀛州の総称。三神山。
※本朝文粋(1060頃)一〇・落葉声如雨詩序〈慶滋保胤〉「嗟呼三山与五天。不知又不知」
[二] 中国江蘇省江寧県、揚子江に臨んで連なる三峰の総称。

みつ‐やま【三山】

[1] 〘名〙
① 三等分すること。また、そのもの。
浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油屋「何でも三つ山の約束に」
楊弓・大弓で、銭を賭物(かけもの)にするとき、九銭をいう符丁。きわ。
類聚名物考(1780頃)調度部一五「銭を数ふる異称 〈略〉九銭、きは(際)或九騎打又三山」
③ 紋所の名。三つの山を、その頂上を中心に円形に配して図案化したもの。
[2] 謡曲。四番目物。宝生・金剛流。作者未詳。「万葉集」による。良忍上人が耳成山に行くと、里の女が来て、昔香具山に住む男が畝火山の里の桜子と耳成山の里の桂子の二人と契りを交したが、しだいに桜子の方に心を移したので桂子は池に身を投げて死んだという三山のいわれを語り、桂子を名帳(みょうちょう)に入れるように頼んで姿を消す。上人が桂子の跡を弔っていると、桜子の霊が狂乱の態で現われてざんげする。つぎに桂子の霊も現われて桜子を打ち散らすが、やがて恨みを晴らしてともに成仏する。

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デジタル大辞泉 「三山」の意味・読み・例文・類語

さん‐ざん【三山】

有名な三つの山。香具山かぐやま畝傍山うねびやま耳成山みみなしやま大和やまと三山月山がっさん湯殿山羽黒山出羽でわ三山など。
熊野三山」に同じ。

みやま

福岡県南部にある市。平成19年(2007)1月、瀬高町・山川町・高田町が合併して成立。長茄子などの野菜や果実の生産が、海岸部では海苔の養殖が盛ん。人口4.1万人(2010)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三山」の意味・わかりやすい解説

三山
さんざん

14世紀から15世紀初期の沖縄に存在した三つの小国家の総称。沖縄本島の北部一帯に山北(さんほく)(または北山(ほくざん))が、中部地方に中山(ちゅうざん)が、南部地方に山南(さんなん)(南山(なんざん))が鼎立(ていりつ)し抗争を繰り返していた。

 12世紀前後から沖縄では按司(あんじ)とよばれる首長が登場し、それぞれ政治的地域小単位を形成して、相互に対立を繰り返すようになった。この争乱のなかから、より強大化した按司が出現し、他の按司を従属させて広域的な勢力圏を構築するようになる。やがて沖縄本島を中心に三つの小国家に集合されたが、山北の拠点は今帰仁(なきじん)城、中山の拠点は浦添(うらそえ)城(のちに首里(しゅり)城)、山南の拠点は島尻大里(しまじりおおざと)城であった(山南は内部抗争の結果、島添(しまそえ)大里城に拠点が移ったこともあるという)。1372年に中山王察度(さっと)が明(みん)に入貢して外交・交易関係を樹立すると、他の二山もただちに同様の関係を樹立して抗争を続けた。83年、明の太祖洪武帝(こうぶてい)は使臣を遣わして、対立をやめるよう三王に説諭したが、やまなかった。1406年、ダークホースのように登場する佐敷(さしき)按司尚巴志(しょうはし)は中山を攻略して覇権を手中にすると、16年には山北を、29年には山南を滅ぼして沖縄を統一し、琉球(りゅうきゅう)王国を発足させた。三山鼎立の時代を沖縄歴史では三山時代とも称している。

[高良倉吉]

『高良倉吉著『琉球の時代』(1980・筑摩書房)』

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とっさの日本語便利帳 「三山」の解説

三山

出羽三山▽月山(がっさん)、羽黒(はぐろ)山、湯殿(ゆどの)山
大和三山▽畝傍(うねび)山、香具(かぐ)山、耳成(みみなし)山

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