熊野三山(読み)クマノサンザン

デジタル大辞泉 「熊野三山」の意味・読み・例文・類語

くまの‐さんざん【熊野三山】

熊野三社くまのさんしゃ

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精選版 日本国語大辞典 「熊野三山」の意味・読み・例文・類語

くまの‐さんざん【熊野三山】

  1. くまのさんしゃ(熊野三社)
    1. [初出の実例]「熊野三山のうちのなち」(出典:名語記(1275)四)

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百科事典マイペディア 「熊野三山」の意味・わかりやすい解説

熊野三山【くまのさんざん】

和歌山県熊野地方にある本宮(熊野本宮大社,田辺市本宮町),新宮(熊野速玉(はやたま)大社,新宮市),那智(熊野那智大社,東牟婁郡那智勝浦町)の3社をいう。本宮はもと熊野坐(くまのにます)神社といい,家都御子(けつみこ)神(素戔嗚(すさのお)尊)を,新宮は熊野速玉神を,那智は熊野夫須美(ふすみ)神(伊弉冉(いざなみ)尊)を主祭し,おのおの他2社の神を併祀する。延喜式では本宮が名神大社,新宮が大社。本宮,新宮は旧官幣大社,那智は旧官幣中社。熊野信仰の中心地で,平安〜鎌倉時代には各上皇等の寄進を受け,三山とも発展。本地垂迹(すいじゃく)思想により,阿弥陀浄土と信じられ,妣(はは)の国,常世(とこよ)の国への通路とも,また補陀落(ふだらく)浄土(観音浄土)とも信じられた。那智の滝,大峰山,金峰山があり修験(しゅげん)道の霊場としても栄えた。例祭は,本宮は4月15日,新宮は10月15日,那智は7月14日。新宮の例祭日の御船祭,那智の例祭日の扇神輿渡御祭,本宮の4月上旬の舟玉祭など,海に関する神事が多い。木造神像,八葉曼荼羅,正恒銘太刀,那智大社神社文書など多数の文化財がある。2004年紀伊山地の霊場と参詣道として世界遺産条約文化遺産リストに登録された。
→関連項目御師熊野熊野街道熊野詣聖護院那智山本宮[町]八代荘吉野熊野国立公園

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「熊野三山」の意味・わかりやすい解説

熊野三山
くまのさんざん

和歌山県の熊野地方に鎮座する熊野本宮(ほんぐう)大社(旧称は熊野坐(にます)神社、通称は本宮)、熊野速玉(はやたま)大社(旧称は熊野早玉神社、通称は新宮)、熊野那智(なち)大社(旧称は飛滝権現(ひろうごんげん)、熊野夫須美(ふすみ)神社、熊野那智神社、通称は那智山)の総称。熊野三所(さんしょ)権現ともよばれた。3社とも院政期(1086~1179)以降、家都御子(けつみこ)大神、速玉大神、熊野夫須美大神を祀(まつ)っている。平安初期に新宮・本宮を中心に修験(しゅげん)道場が開かれ、延喜(えんぎ)年間(901~923)にさらに那智が加えられ、この3社が知られるとともに、11世紀末の永保(えいほう)・応徳(おうとく)年間(1081~87)ころ、熊野三山の呼称が一般となり、本宮の本地阿弥陀如来(あみだにょらい)、新宮の本地薬師(やくし)如来、那智の本地観音菩薩(かんのんぼさつ)を一体としての熊野信仰が発達した。1090年(寛治4)白河(しらかわ)上皇の熊野御幸を機会に三山検校(けんぎょう)職が置かれ、全山管理の別当(べっとう)も補された。さらに続いた上皇および女院以下の熊野御幸で、その宗教的権威を高め、経済的にも保証されるに至り、御師(おし)が発達するとともに、熊野権現として全国に勧請(かんじょう)された。なお、霊場「熊野三山」は、2004年(平成16)「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコ世界遺産(文化遺産)に登録された。

[鎌田純一]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「熊野三山」の意味・わかりやすい解説

熊野三山
くまのさんざん

和歌山県南部に鎮座する熊野本宮大社(本宮),熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ。新宮),熊野那智大社(那智)の総称。熊野三社三熊野ともいう。全国 3000社あまりの熊野神社の総本社。本宮は田辺市東部に鎮座する元官幣大社。もと熊野坐神社(くまのにますじんじゃ)と称し,三山の根本宮である。祭神はケツミミコノオオカミ(→スサノオノミコト〈素戔嗚尊〉)。例祭 4月15日。新宮は新宮市に鎮座する元官幣大社。祭神はクマノハヤタマノオオカミ(→イザナギノミコト〈伊弉諾尊〉)ほか 2神。例祭 10月15,16日。明徳1(1390)年の造替に際して奉献された古神宝類は国宝に指定されている。那智は,もと熊野夫須美神社(くまのふすみじんじゃ)といい,那智勝浦町に鎮座する元官幣中社。祭神はクマノフスミノオオカミ(→イザナミノミコト〈伊弉冉尊〉)。例祭 7月14日。那智が那智滝を神格化する信仰と結びついているように,三山の成立は古代信仰と関係が深い。そのため古くから修験者の道場として栄え,またこの地方一帯を観音の霊場とする本地垂迹思想(→本地垂迹説)の発達もあって,皇室,武家の尊崇が厚かった。2004年紀伊山地の霊場と参詣道として高野山などとともに,世界遺産の文化遺産に登録。(→熊野信仰

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国指定史跡ガイド 「熊野三山」の解説

くまのさんざん【熊野三山】


和歌山県新宮市・田辺市・東牟婁(ひがしむろ)郡那智勝浦(なちかつうら)町、三重県南牟婁郡紀宝町にある寺社。紀伊山地の東南部にあり、相互に20~40kmの距離を隔てて位置する熊野本宮大社(ほんぐうたいしゃ)(田辺市本宮町)、熊野速玉大社(はやたまたいしゃ)(新宮市新宮)、熊野那智大社(那智勝浦町那智山)の3社と青岸渡寺(せいがんとじ)(那智勝浦町那智山)および補陀洛山寺(ふだらくさんじ)(那智勝浦町浜の宮)の2寺からなり、熊野参詣道の中辺路(なかへち)によって結ばれている。平安後期に神仏習合によって、3社の神々にも本地仏(ほんじぶつ)があてられ、仏が権(かり)に現れたものとして、熊野の3神は熊野三所権現と呼ばれ、主祭神以外も含めて熊野十二所権現ともいう。3社ともにお互いに三所(十二所)権現を祀りあい、熊野三山として、現世と来世での救いを願う人々の崇敬を集めて発展。2000年(平成12)に国の史跡に指定された。2004年(平成16)には「紀伊山地の霊場と参詣道」として、世界遺産に登録された。熊野本宮大社へは、JR紀勢本線新宮駅から車で約40分。熊野速玉大社へは、新宮駅から車で約5分。熊野那智大社へは、JR紀勢本線紀伊勝浦駅から車で約20分。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「熊野三山」の解説

熊野三山
くまのさんざん

熊野三所権現とも。熊野本宮大社(和歌山県田辺市)・熊野速玉大社(同新宮市)・熊野那智大社(同那智勝浦町)の総称。自然信仰に由来し,神仏習合により阿弥陀信仰や補陀落(ふだらく)渡海信仰と結びつき,霊場化を進めた。院政期の院・貴族の熊野詣をきっかけに熊野信仰が広まり,鎌倉時代以降は武士や庶民にまで及んだ。有力者は檀那として御師(おし)に把握され,師檀関係が成立。この関係ははじめは特定の結びつきをもっていたが,しだいに御師間で売買・譲与が行われるようになった。檀那の熊野詣に際しては先達が案内役を務める一方,各地の檀那に牛王(ごおう)宝印や守札などの配布も行った。1090年(寛治4)以降,熊野三山は形式上は園城寺の僧が兼帯する検校(けんぎょう)の支配下にあったが,実際には現地を統轄する別当が支配した。

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事典・日本の観光資源 「熊野三山」の解説

熊野三山

熊野三社・三熊野・三所権現とも呼ばれる。平安時代の中期から鎌倉時代にかけて熊野詣がさかんに行われた。法皇・上皇の御幸も多くを数え、「蟻の熊野詣」と称された。
[観光資源] 熊野那智大社 | 熊野速玉大社(熊野新宮) | 熊野本宮大社

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「熊野三山」の解説

くまのさんざん【熊野三山】

和歌山の日本酒。酒名は、蔵が世界遺産・熊野三山地域唯一の酒蔵であることにちなみ命名。精米歩合55%で仕込む吟醸酒。味わいは辛口。原料米は山田錦。仕込み水は熊野川伏流水。蔵元の「尾﨑酒造」は明治2年(1869)創業。所在地は新宮市船町。

出典 講談社[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の熊野三山の言及

【熊野】より

…クマノとは霊魂の籠(こも)る地との意味があるらしく,早く《日本書紀》神代巻に,伊弉冉(いざなみ)尊が火神を生むとき灼(や)かれて死んだので,紀伊国の熊野に葬ったとある。やがてこの地に熊野三山と称される霊場が開かれると,神秘的な伝承が数多く発生し,死者の霊は遠隔の地からもこの熊野へ行くものだとか,熊野へ行けば死者の霊に会えるとかの信仰を生んだ(熊野信仰)。山岳が重畳し,交通きわめて不便であったにもかかわらず,熊野灘に臨む海岸美に,瀞(どろ)峡,那智滝などの景勝地や,湯ノ峰,湯ノ川などの温泉の存在も手伝って,熊野三山参詣のためにはるばる足を運ぶ人が,古代末期から中世にかけて増大した(熊野詣(くまのもうで))。…

【熊野信仰】より

…和歌山県の熊野山(熊野三山,熊野三所と呼ぶことが多い)を中心とした民俗的信仰。熊野地方は近畿の南端に突出した山岳地帯であるが,ふもとには大河がうねって流れ,しかも洋々たる大海を見渡すことのできる地である。…

【熊野大社】より

…熊野夫須美大神とも称し,千手観音を本地とした。 以上の三社がいわゆる熊野三山であり,その霊威は平安末期以後全国的にあがめられた。三社がそれぞれ共通の三所権現(本宮,新宮,那智)をまつったというのも特色の一つで,しかも四所明神などの眷属神,五所王子やいわゆる九十九王子などの王子神(御子神)を含む多数の神格の集合体となったのも特色である。…

※「熊野三山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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