日本大百科全書(ニッポニカ) 「あられ石」の意味・わかりやすい解説
あられ石
あられいし / 霰石
aragonite
炭酸塩鉱物の一つ。方解石、ファーター石などと同質異像関係にあり、これらより密な原子配列をもつ鉱物。超塩基性岩を切る細脈、玄武岩・安山岩、同岩質火山砕屑(さいせつ)岩の空隙(くうげき)、ある種の熱水鉱脈、温泉・地下水沈殿物、比較的低温・高圧条件下生成の広域変成岩、粘土質の堆積(たいせき)岩、金属鉱床酸化帯などに産する。方解石の高圧処理によっても、溶液からの沈殿でも生成される。
自形は多く斜方柱状、板状、あるいはこれが三連双晶(3個の個体が同じ関係で連なった双晶)した六角柱状をなす。中性~アルカリ性の条件下の形成になるが、室温では少量のマグネシウムイオンを含む、可溶性のカルシウム塩の水溶液中に適量の炭酸ソーダ溶液を加えると得られる。しかし溶液の濃度が低いと、常温では方解石相当相が得られる。貝殻や真珠を構成する炭酸カルシウム中にはあられ石が含まれることもある。2015年に、キルギス共和国フェルガナ盆地の南側に位置するオシュの地すべり堆積物中からナノ単位の大きさで第4、第5のCaCO3の変態(高圧相)が現地生成物質として発見された(第1~第3変態は方解石、霞(かすみ)石、ファーター石)。英名は原産地のスペインの地方名アラゴンAragonにちなむ。
[加藤 昭 2015年12月14日]