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キモトリプシン chymotrypsin

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

キモトリプシン
chymotrypsin

脊椎動物の膵液中に含まれる主要消化酵素の一つ。酵素番号 3.4.4.5。膵臓で不活性型のキモトリプシノーゲン (キモトリプシンの酵素前駆体) に合成され,膵液に含まれて十二指腸に分泌されたのち,トリプシンやキモトリプシンによって限定分解を受けて活性型キモトリプシンとなり消化酵素として働く。

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デジタル大辞泉の解説

キモトリプシン(chymotrypsin)

たんぱく質分解酵素の一。膵臓(すいぞう)から分泌され、たんぱく質をペプチドまで加水分解する。

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栄養・生化学辞典の解説

キモトリプシン

 [EC3.4.21.1].膵臓から分泌されるプロテアーゼの一種で,主に芳香族アミノ酸のカルボキシル末端側を加水分解する.キモトリプシノーゲンの形で分泌され,トリプシンによって活性化されてキモトリプシンとなる.

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大辞林 第三版の解説

キモトリプシン【chymotrypsin】

プロテアーゼの一種。哺乳類の膵液すいえき中に含まれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

キモトリプシン
きもとりぷしん
chymotrypsin

脊椎(せきつい)動物の膵液(すいえき)中にあるセリンプロテアーゼ(タンパク分解酵素)の一つ。アイソザイム(イソ酵素)としてA、B、Cの3種があるとされてきたが、いまではAとBは同一とされており、Cは別の酵素に分類されている。Cの特異性はAよりも広い。これまでウシのキモトリプシンAがよく研究されている。膵臓でアミノ酸245残基の前駆体キモトリプシノーゲンAとしてつくられ、小腸に至って、トリプシンと既存のキモトリプシンによって、二つのジペプチドSer14-Arg15(セリル‐アルギニン)およびThr147-Asn148(トレオニル‐アスパラギン)が切り離され、241残基、分子量2万5310のα(アルファ)-キモトリプシンとなる。三つに切れたポリペプチド鎖1-13、16-146、149-245はジスルフィド架橋(S‐S架橋)でつながれている。α-キモトリプシンに活性化される途中の段階のものは、それぞれπ(パイ)-、δ(デルタ)-、γ(ガンマ)-などの名称がつけられており、同等の活性をもっている。別の遅い活性過程もある。至適pH(ペーハー)は8.0で、等電点は8.1~8.6である。1967年、X線結晶解析によって立体構造(三次構造)が決定された。分子の形は回転楕円(だえん)体では40×40×51オングストローム(Å)の大きさである。α-ヘリックス(ポリペプチド鎖がとりうる安定な螺旋(らせん)構造の一つ)が少なく、逆平行β(ベータ)-ひだ状構造anti-parallel pleated sheetが多い。
 これまで活性部位にあるヒスチジンHis-57、アスパラギン酸Asr-102、セリンSer-195の三つのアミノ酸の側鎖の共同作用(電荷伝達系charge-relay system)によってペプチド結合(-CO-NH-)が加水分解(切断)されると考えられてきたが、His-57とAsp-102の間には水素結合はなく、His-57も中性付近にプロトン解離平衡をもつことがあることが明らかになり、Asp-His-Serは電荷リレー系としては働かないことが明らかになった。現在では、セリンプロテアーゼの活性中心にあるAsp-102とHis-57がSer-195のヒドロキシ基のプロトンを引き抜き、そのプロトンを基質に渡す酸塩基触媒として働き、Ser-195は基質のカルボニル炭素を攻撃してアシル化がおこると考えられている。この過程のAsp-His系はプロトンリレー系ともよばれている。
 キモトリプシンは、チロシンやフェニルアラニン、トリプトファンなどの芳香族アミノ酸や脂肪族でも疎水性の高いロイシン、イソロイシンなどのカルボニル(C=O)側のペプチド結合をよく切る特異性をもち、アミドやエステル結合も切断する。セリン酵素に共通な阻害剤のDFP(ジイソピルフルオロリン酸)、PMSF(フェニルメタンスルフォニルフルオリド)、TPCK(N-トシル-L-フェニルアラニルクロロメチルケトン)などで不可逆的に阻害される。ただし、DFPは神経毒なので実験には使われなくなっている。放線菌がつくるキモスタチンでも阻害されるが、これはカルパイン、パパイン、カテプシンBなどのチオール(SH)酵素も阻害するのでその特異性は低い。同じ膵液の酵素であるトリプシンやエラスターゼと構造が似ているので、同じ祖先遺伝子から進化したものと考えられているが、その特異性は異なっている。[野村晃司]

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世界大百科事典内のキモトリプシンの言及

【酵素剤】より

…また,乳糖不耐性の乳児(小腸に固有の消化酵素であるラクターゼの遺伝的欠損によってミルク中の乳糖が消化されず,下痢を起こしやすい)に対する補充療法剤としてのβ‐ガラクトシダーゼ(ラクターゼと同様に乳糖を消化しうる酵素)もこのカテゴリーに入る酵素剤である。
[いわゆる消炎酵素剤]
 キモトリプシン,ブロメラインその他の動植物,微生物起源のタンパク質加水分解酵素類や細菌細胞壁のムコペプチドの分解酵素であるリゾチームなどは,これらを内服した場合に種々の炎症症状を改善する作用,副鼻腔や気管支における分泌物,膿汁などの粘度を下げ排出を容易にする作用などが認められるとして,これらの目的で歯科領域,耳鼻咽喉科領域などで使用されているが,理論的裏づけは不明確のまま残されている。
[その他の酵素剤]
 ヒト尿から抽出されるウロキナーゼ(血液凝固機構によって析出凝固したフィブリンすなわち繊維素を溶解する作用をもつ繊溶系の活性化酵素)は,血栓性の疾患に対して血栓の溶解を期待する治療剤として静脈内に注射される。…

【消化酵素】より

… 唾液の中にはデンプン分解酵素である唾液アミラーゼ,胃液中にはタンパク質分解酵素であるペプシンがあり,酸性の環境ではたらく。膵液中にはデンプン分解酵素として膵アミラーゼ,タンパク質分解酵素としてトリプシン,キモトリプシン,カルボキシペプチダーゼ,エラスターゼなど,脂肪分解酵素としてリパーゼ,ホスホリパーゼなどがある。これらは中性ないし弱アルカリ領域ではたらく。…

※「キモトリプシン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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