キルギス(読み)きるぎす(英語表記)Kirghiz

翻訳|Kirghiz

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

キルギス(人)
きるぎす
Kirghiz

シベリアおよび中央アジアのトルコ系民族の一つ。クルグズ(柯尓克孜)と自称するので、より正確な表記は「クルグズ」だが、慣習的にキルギス、キルギズとして通行している。キルギス人は紀元前よりエニセイ川上流域の森林狩猟民として中国の史書に現れ、堅昆(けんこん)、契骨(けいこつ)、黠戛斯(かつかつし)、吉児吉思(キルギス)の名で伝えられている。彼らは元来、イラン系種族であったらしいが、7、8世紀(唐代)ごろにはトルコ化していた。突厥(とっけつ)碑文にはqyrqyz(キルギズ)と記される。狩猟、漁労、農業、牧畜に従事したほか、冶金(やきん)、金属加工にも長じていた。キルギスは匈奴(きょうど)、突厥、ウイグルなどの遊牧国家に圧迫されたが、独立を保ち、唐朝と通交した。840年ごろ、キルギスの君主はウイグル帝国を攻撃し、その王朝を倒し、ウイグル人の南西への移動を決定づけた。13世紀の初め、キルギス部族の君長はチンギス・ハンに服属し(1218)、モンゴル帝国のなかで部族社会を保持し、農耕、毛皮生産、金属加工を生業とした。モンゴル帝国の崩壊した14世紀以降はオイラート人の支配を受け、しだいに天山西部地域とフェルガナ渓谷に移住したとみられ、オイラート人や西方のカザフ遊牧民の圧迫を受け、ブルート(布魯特)とよばれた。17、18世紀以降はジュンガル人、清(しん)朝、帝政ロシアの間接支配下に置かれた。キルギスの叙事詩『マナス』には、彼らの移動説話も含まれている。ソ連が成立すると、その支配下のキルギス人はキルギス社会主義共和国(現キルギス共和国)の主要人口となって、近代化の道をたどっている。中国の新疆(しんきょう)地方にもキルギス人が住む。[佐口 透]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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