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ゲームの理論 ゲームのりろんgame theory

翻訳|game theory

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ゲームの理論
ゲームのりろん
game theory

利害が対立,交錯する関係者の意思決定を解明するために用いられる数理的な分析方法。ゲーム理論ともいう。1940年代にアメリカ合衆国プリンストン大学の数学者ジョン・フォン・ノイマンと経済学者オスカー・モルゲンシュテルンによって研究の端緒が開かれ(→ゲームの理論と経済行動),1950年代に同大学の数学者ジョン・ナッシュが「ナッシュの均衡理論」(→クールノ=ナッシュ均衡)を発表し,理論的基礎が築かれた。政治学,特に国際政治学に盛んに応用されるようになったのは,ポーカーチェス,ブリッジ(コントラクトブリッジ),将棋のようなゲームに現実の政治現象・国際政治現象との類似性が認められ,しかも,後者の単純化がはかれると考えられたためである。しかし,一般的な有効性をもってはいても,政治や政治学にとって必ずしも具体的に役立つとはかぎらない。ゲームを演じるプレーヤーはあくまでも合理的に思考し行動するものと想定されており,選択の幅,効用の尺度,結果の蓋然性について明確な予備知識をもつなど,現実にはありえない条件のうえにゲームが組み立てられる。
ゲームには大別して定和ゲーム非定和ゲームとがあり,特に正負利得の総和がゼロになる定和ゲームを零和ゲームと呼ぶ。一方の利得がそのまま相手の損失になるため,プレーヤーはそれぞれの損得を合理的に計算して,やがて,可能な最小の利得か,可能な最小の損失で満足するようになる。このような計算をミニマックスもしくはマックスミニと呼ぶ(→ミニマックス理論)。現実の状況は,利得の総和が一定とならない非定和ゲームに相当することのほうが多い。特に国際政治との類縁性があるとみられる非定和ゲームとしては,両プレーヤーが協力か脅迫かの戦略を与えられており,互いに自己の利得を極大にするために脅迫の戦略を選ぶと,結果として両者とも大きな損失を被るように組み立てられた「チキン・ゲーム」や「囚人のジレンマ・ゲーム」がある。核戦争による人類絶滅の危機をはらみながら各国が相手国を威嚇する国際政治の構図は,こうした非定和ゲームにたとえられよう。しかし,非定和ゲームでは両者の協力によって結果を双方に有利にすることもできる。
このように,ゲームの理論は国際政治の観察・分析に完璧な方法ではないが,明晰な思考への手がかりを与え,また教訓を与える。現実によりいっそう接近するために n人ゲームも考えられているが,複雑になりすぎて明快さという利点を失ってしまうため,まだ十分には発展していない。

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デジタル大辞泉の解説

ゲーム‐の‐りろん【ゲームの理論】

経済競争・戦争など、利害の対立する状態にある複数主体の間の行動を、室内ゲームの競技者の行動から一般化した理論。利益または勝敗は戦略の関数となる。ゲーム理論。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ゲームの理論
げーむのりろん
theory of games

個人、企業、国家など、社会の競争状態のなかにある行動主体(プレイヤー)が、相手の出方を絶えず考慮に入れながら、自己の利益をもっともよく達成するための手段を合理的に選択するという行動を数学的に分析する理論であり、戦後、社会科学の分野に多く取り入れられて発展をみてきたものである。
 この理論の核心部分は、すでに1928年に数学者フォン・ノイマンによって発表されていたが、その後、経済学者モルゲンシュテルンとの共著『ゲームの理論と経済行動』Theory of Games and Economic Behavior(1944)によって、競争状態における経済主体の行動分析として集大成された。
 この理論の出発点となる競争状態のモデルは、「ゼロ和2人ゲーム」zero-sum two-person gameとよばれるものである。これは、2人でゲームを行うときに、双方がどのような手(あるいは戦略strategy)をとっても、一方がある額の利益を得れば他方はかならずそれと同額の損失を被るという場合、すなわち、ゲームの結果の双方の利益(または損失=マイナスの利益)の和がつねにゼロとなる場合である。
 いま、ある産業に競合する2社、A社とB社が存在し、市場において互いに相手の出方を考慮しつつ自社のとるべき戦略を決定しようとしているものとする。両社のとりうる戦略はそれぞれ3種類あり、A社の戦略をa1a2a3とし、B社のそれをb1b2b3とする。そうすると、考えうる両社の戦略の組合せは9種となるが、そのそれぞれの結果が生じた場合に想定されるA社の利益を一覧表の形にして示すとのようになる。表中、A社の利益を表す数字は例示であるが、このような表は利得行列pay-off matrixとよばれる。B社の利得行列は、この表数字の符号を正負逆にしたものとなる。
 このような状況が想定されるとき、A社の戦略決定は次のように行われる。A社が各戦略をとった場合、相手の出方によってもっとも困難な状態(すなわち、もっとも利益の少なくなる状態)となる場合を考える。そして、そのような状態のうちでもっとも有利な戦略を選択する。この例の場合、そのような戦略の組合せは(a2b1)となり、A社は戦略a2をとることになる。他方、B社の戦略決定も同様に行われるものとすると、その戦略の組合せはやはり(a2b1)となり、B社がb1の戦略を決定することによって、両社は同じ戦略の組合せに到達し、双方の決定が矛盾なく執り行われることになる。すなわち、A社が戦略iをとり、B社が戦略jをとったときの利得行列中の値をπijと書くと、A社の戦略決定は

で、B社のそれは

と表現され、両社は

となって均衡状態に到達することになる。
 このように双方が満足のいく結果は「ゲームの解」あるいは「利得関数の鞍(あん)点」saddle pointといわれ、双方のとる戦略に確率を考慮した組合せを考える(混合戦略)ならば、ゲームの解はつねに存在する。これを「ミニマックス定理」minimax theoremといい、ゲームの理論の基礎をなすものである。
 理論モデルは、さらに拡張され、プレイヤーの数が一般にn人の場合(n人ゲームn-person game)、プレイヤーの利得の総和がゼロとならない場合(非ゼロ和ゲームnon-zero-sum game)などについても研究がなされ、この理論は経済理論、経営科学の分野だけでなく、近年では政治学などにも広く応用されつつある。[高島 忠]
『鈴木光男編『ゲーム理論の展開』(1973・東京図書) ▽J・フォン・ノイマン、O・モルゲンシュテルン著、銀林浩・橋本和美・宮本敏雄監訳『ゲームの理論と経済行動』全5冊(1972~73・東京図書) ▽岡田章著『ゲーム理論・入門』(2008・有斐閣)』

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