日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
コーエン(Stanley Cohen)
こーえん
Stanley Cohen
(1922―2020)
アメリカの生化学者。ニューヨーク市ブルックリンに生まれる。ブルックリン大学で生物学と化学を学び、1945年オバーリン大学で修士号、1948年ミシガン大学で博士号を取得。コロラド大学の研究員を経て、1952年ワシントン大学でアメリカ対がん協会の博士研究員となった。1959年バンダービルト大学の生化学助教授につき、1962年準教授、1967年教授に昇格(1999年に退職して名誉教授)。1976年アメリカ対がん協会研究所の教授に転じ、1986年特別教授になった。
コロラド大学で新生児の新陳代謝と成長過程の生化学的な研究を行った。ワシントン大学に移ると、R・レビモンタルチーニとともに成長物質を抽出する研究を開始した。この共同研究によって、彼らは神経成長因子(NGF:nerve growth factor)を発見したが、コーエンはNGFを詳しく解析し、ヘビ毒、成熟マウスの唾液腺(だえきせん)にもNGFが含まれていることをみいだした。その後も成長因子の研究を続け、マウスの唾液腺の中から、もう一つの生理活性物質である上皮細胞成長因子(EGF:epidermal growth factor)を発見した。EGFの発見は、その後の細胞分化・増殖、発がんのメカニズムの研究に重要な役割を果たした。これらの業績によって1986年のノーベル医学生理学賞をレビモンタルチーニとともに受賞した。
[編集部 2018年7月20日]