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テルペン terpene

翻訳|terpene

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

テルペン
terpene

テルペノイドとも呼ばれる。主として植物中に含まれる天然有機化合物で,炭素原子数が5の倍数であるような化学式をもつものの総称。モノテルペン,セスキテルペンジテルペントリテルペン,テトラテルペン,ポリテルペンなどに分類される。モノテルペンは炭素原子数 10の化学式をもつもので,主として植物精油中に含まれ,代表的なものとしてはショウノウ,メントールピネンなどがある。セスキテルペンは炭素原子数 15の化学式をもつもので,サントニン (駆虫剤) などがある。ジテルペンは炭素原子数 20の化学式をもつもので,ビタミンA,アビエチン酸などがよく知られている。トリテルペンは炭素原子数 30で,スクアレン,オレアノール酸などがある。テトラテルペンは炭素原子数 40で,カロテンがその例である。炭素原子数の非常に多いポリテルペンとしては天然ゴムがある。テルペン類はいずれも生体内で,酢酸,メバロン酸を経由して生合成されることが明らかになっている。

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百科事典マイペディアの解説

テルペン

植物などがつくる天然有機化合物のうち,イソプレンの低量重合体(C5H8)(/n)の組成をもつ炭化水素およびこれらの誘導体であるアルコール,アルデヒド,ケトンの総称。
→関連項目森林浴

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世界大百科事典 第2版の解説

テルペン【terpene】

イソプレンC5H8を構成単位とする重合体(C5H8)nからなる炭化水素およびその誘導体の総称。テルペノイドterpenoid,イソプレノイドisoprenoidとも呼ばれる。代表的なものは植物の香気成分の精油であり,多くの色素,樹,ゴム質もすべて形式的にはテルペンに含める。 n=2にあたる炭化水素C10H16はモノテルペンmonoterpeneと呼ばれ,精油の主成分はこのモノテルペンおよびその含水素誘導体であるため,狭義のテルペンといえばモノテルペンをさす。

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大辞林 第三版の解説

テルペン【terpene】

植物精油の主成分。イソプレンが重合した骨格 (C5H8n をもつ炭化水素およびその誘導体の総称。樟脳しようのう・メントール・ビタミン A など。香料・医薬品などの原料にする。テルペノイド。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

テルペン
てるぺん
terpene

精油の主要成分となっている化合物のなかで、イソプレンC5H8が先端と末端で結合(頭尾結合head to tail)した基本骨格(C5H8)nをもつ化合物を総称してテルペンとよぶ。テルペノイドterpenoid、イソプレノイドisoprenoidともよばれる。テルペンは精油の主要成分であり、精油中のテルペンは、植物の生体内で酢酸が酵素の作用によってスクアレンを経てコレステリン(コレステロール)となる生合成の初期段階で生成する。[佐藤菊正]

テルペンの基本構造と分類

テルペンは枝鎖C5単位(以下イソプレン単位という)が基礎となる。鎖状および環状テルペン系炭化水素は、イソプレン単位の数によって、モノテルペン(n=2)、セスキテルペン(n=3)、ジテルペン(n=4)およびトリテルペン(n=6)に分類され、さらに環状テルペン系炭化水素については単環性、双環性、三環性テルペン系炭化水素に分類される。そして、これらのテルペン系炭化水素と同じ炭素骨格をもつアルコール、アルデヒド、ケトンおよびカルボン酸が含まれる。[佐藤菊正]

テルペンの生合成機構

テルペンは広く植物界に分布しており、その生合成機構はメバロン酸の発見によって著しい進展をした。メバロン酸はすべてのテルペン(モノ、セスキおよびジテルペン系化合物)の生合成における前駆物質である。現在では植物生体内でテルペンがメバロン酸経路によって生合成される全段階は確立されている。[佐藤菊正]

テルペンと精油

テルペンは天然香料の主体となる植物精油の主成分である。商業生産される精油のうちで、とくに生産量も多く重要なものとその主成分を以下に示す。
〔シトロネラ油〕 ゲラニオール、シトロネラール、d-シトロネロール
〔レモングラス油〕 シトラール
〔針葉油〕 α-ピネン
〔ローズ油〕 ロジノール、ゲラニオール、ネロール
〔ラベンダー油〕 リナロール、酢酸リナリル
〔びゃくだん油〕 αおよびβ-サンタロール
〔オレンジ油〕 リモネン
〔はっか油〕 l-メントール
以上でわかるように、テルペン類は天然香料として高い価値をもっている。[佐藤菊正]

合成法と用途

モノおよびセスキテルペン系化合物は植物精油から水蒸気蒸留などによって留出される。モノテルペン系化合物は芳香を有するが、セスキテルペン系化合物以上は無臭である。植物を資源とするモノテルペン系化合物は香料および医薬品の合成原料として多量に必要となり、植物から得られるテルペンのみでは需要に応じきれない状況となった。そこで天然の未利用資源、たとえばα(アルファ)-ピネンあるいは石油化学製品、たとえばアセチレン、アセトン、イソプレンなどを出発原料としてテルペン系化合物は大量生産されている。
 現在、テルペン化合物を工業的に製造するには、(1)ピネン法、(2)アセトン・アセチレン法、(3)イソブテン・アセトン・ホルマリン法、(4)イソプレン法がおもに行われている。これらのうちで(1)以外の合成法はすべてメチルヘプテノンを中間体とする方法であり、このメチルヘプテノンをどのように製造するかが各製法の焦点となっている。(1)によるカンファー(樟脳(しょうのう))、ボルネオール、リナロールの合成、(2)によるリナロールの合成、(4)によるリナロールの合成が工業化されている。
 香料として多く使用されているゲラニオールやパチュリアルコールなどはモノおよびセスキテルペン系化合物であり、ビタミンEの合成原料であるフィトール、イソフィトールやビタミンAなどはジテルペン系化合物である。またトリテルペン系化合物であるスクアランおよびスクアレンは重要な化粧品基材としてともに生産されている。ニンジンの色素であるカロチン(カロチノイドのうちのある一群)はテトラテルペン系化合物である。さらに、ポリテルペン系化合物は補酵素Q10の合成原料であるタバコの葉から得られるソラネソールが重要である。このように、テルペンは古くから香料および医薬品の原料として用いられ、天然有機化合物の一つの重要な位置を占めている。[佐藤菊正]
『奥田治著『香料化学総覧』(1967、68・広川書店) ▽立岡末雄・石井象二郎・市来崎厳ほか著『近代工業化学15 低分子工業化学』(1968・朝倉書店) ▽須賀恭一・渡辺昭次著『香料の化学』(1972・講談社) ▽園田昇・亀岡弘編『有機工業化学』(1993・化学同人) ▽伏谷伸宏・広田洋ほか著『天然有機化合物の構造解析――機器分析による構造決定法』(1994・シュプリンガー・フェアラーク東京)』

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世界大百科事典内のテルペンの言及

【イソプレン】より

… 精油,樹脂,弾性ゴム,カロチノイド色素,ビタミンAなど,天然にはイソプレンの重合体,誘導体とみなすことができるものが多い。これらをテルペンと総称するが,その炭素骨格がイソプレンの炭素骨格から成ることをイソプレン則という。表におもなものと重合様式の一例を示す。…

【脂質】より

…各種ステロール,胆汁酸,ステロイドホルモンとしておのおの重要な生理的役割を担っている。ステロイド
[テルペン]
 イソプレンの重合体とその誘導体をテルペンまたはテルペノイドと総称する。植物の芳香油成分やカロチノイド(植物の緑葉や根および動物の卵黄や黄体の色素)はこれにあたる。…

※「テルペン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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