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ヒッグス粒子 ひっぐすりゅうしHiggs particle

知恵蔵の解説

ヒッグス粒子

万物に質量を与えるヒッグス場の担い手。標準理論の枠内で見つかっていない最後の重要粒子LHCでの発見に期待が集まる。宇宙誕生直後、質量なしで飛び回っていた素粒子の多くにとって、真空を満たすヒッグス場が足手まといになった。質量は、足手まといの強さの反映。この考え方は1964年、P.W.ヒッグスが示した。

(尾関章 朝日新聞記者 / 2007年)

ヒッグス粒子

神の粒子」とも呼ばれ、宇宙が誕生して間もない頃、他の素粒子に質量を与えたとされる粒子。1964年に素粒子の質量獲得モデル(ヒッグス機構)を提唱したイギリスの物理学者ピーター・ヒッグス氏の名にちなむ。素粒子物理学の標準理論であるワインバーグ・サラム理論の中で存在が予言された17種類の素粒子のうち、最後まで発見されなかったが、2012年7月、日米欧の国際的な研究グループが、欧州合同原子核研究機構CERN(セルン)でヒッグス粒子とみられる粒子を発見したと発表し、更に13年3月にはこの粒子がヒッグス粒子であると確認された。
宇宙の大きさは、誕生時には素粒子のように小さかったが、直後にインフレーションと呼ばれる加速度的急膨張が起こって、誕生から10の34乗分の1秒後までの間にマクロな大きさとなった。その後、膨張が緩やかになったため、大量の潜熱が解放されて宇宙は高温となり、ビッグバンが起こって大量の素粒子が生み出された。ヒッグス機構によれば、当初、全ての素粒子は高速で自由に飛び回っており質量を持たなかったが、宇宙が冷却するに従って、真空にあるヒッグス場が自発的対称性の乱れを生じ、一部の素粒子はこのヒッグス場と力を及ぼし合って動きにくくなった。動きにくさの度合いが質量の大きさであるとされ、軽い素粒子ほど動きやすく、重い粒子ほど動きにくい。ここで素粒子と力を及ぼし合ったのが、ヒッグス場を満たすヒッグス粒子である。
ヒッグス粒子の発見が難しかったのは、ヒッグス粒子が非常に小さく、宇宙空間に密集して存在しているため、検出するには宇宙の誕生時のような大きなエネルギーを使って空間から取り出す必要があったからである。CERNではスイスのジュネーブ郊外に建設された1周27キロメートルの世界最大の円形加速器LHCを使い、光速に近いスピードで陽子どうしを衝突させて宇宙の誕生直後を再現し、これによって生まれた無数の粒子を探索する中で質量125~126ギガ電子ボルトの範囲にヒッグス粒子がとらえられた。
ヒッグス粒子の発見を受け、13年10月、ピーター・ヒッグス氏とベルギーのブリュッセル自由大名誉教授フランソワ・アングレール氏にノーベル物理学賞が授与された。アングレール氏はヒッグス氏とは別の論文で、同じく64年にヒッグス粒子の存在を提唱している。
ヒッグス粒子は複数種類あるとの説や、ヒッグス粒子こそが宇宙空間の96%を占めるダークマター(暗黒物質)の正体ではないかとの見方もあり、今後は次世代加速器ILCを使い、ヒッグス粒子の性質の解明が行われる。

(葛西奈津子 フリーランスライター / 2013年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

ヒッグス粒子

物質などのもとになる17種類の「素粒子」のうち唯一見つかっていなかったもの。素粒子は、(1)物質の大もとになるもの(12種類)(2)のりのような役目を果たすもの(4種類)(3)ヒッグス粒子、の三つに分かれている。ヒッグス粒子は、素粒子に水あめのようにまとわりついて動きにくくし、あらゆる物に重さ(質量)を与えるとされている。

(2013-08-19 朝日新聞 朝刊 1経済)

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デジタル大辞泉の解説

ヒッグス‐りゅうし〔‐リフシ〕【ヒッグス粒子】

Higgs particle素粒子に質量を与える役割を担う素粒子。素粒子物理学標準模型、特にワインバーグサラム理論の中でその存在が予言され、長年にわたり探索が続けられたが、2012年7月にCERNLHC加速器で未知の新粒子が見つかり、翌年ヒッグス粒子であると発表された。1964年に素粒子の質量獲得モデル(ヒッグス機構)を提唱した英国の物理学者ヒッグスの名にちなむ。H粒子
[補説]ビッグバンによって宇宙ができた直後、素粒子には質量がなく光速で飛び交っていたが、宇宙が膨張・冷却する過程で真空の性質が変化した。この変化は真空の相転移とよばれ、ヒッグス粒子が凝縮して真空に満ちることで素粒子が動きにくくなった。ヒッグス機構によると動きにくさの度合いは、素粒子の質量の大きさを表し、軽い素粒子ほど動きやすく、重い粒子ほど動きにくいとされる。CERNのLHC加速器に設置されたATLASCMSなどの検出器でヒッグス粒子の探索が行われ、2012年7月、質量125~126GeVの範囲にヒッグス粒子と思われる新しい粒子を発見。さらに2013年3月にはスカラー粒子(スピンが零のボース粒子)であることが確認され、新粒子はほぼ間違いなくヒッグス粒子であると発表された。同粒子の存在を提唱したヒッグスは、おなじく素粒子が質量を獲得する理論を独立して発表したベルギーのアングレールとともに、2013年にノーベル物理学賞を受賞。

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百科事典マイペディアの解説

ヒッグス粒子【ヒッグスりゅうし】

電弱統一理論が成立するために必要な粒子で,中性でスピンがO。電弱統一理論は実験的に正しいことが確かめられているが,この理論では電弱相互作用(相互作用)を媒介する粒子として4個の粒子が導入されている。

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法則の辞典の解説

ヒッグス粒子【Higgs particle】

ヒッグス機構*において,「真空」と同じ量子数をもつスカラー粒子が出現するが.これをヒッグス粒子という.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ヒッグス粒子
ヒッグスりゅうし
Higgs boson; Higgs particle

ヒッグス場に付随する粒子。ヒッグスボソンともいう。現代物理学によれば,光子に対応する電磁場電子に対応する電子場などのように,すべての粒子にはそれに対応するがある。ほかの粒子の場は複数の成分をもつが,ヒッグス場はスカラー場と呼ばれ,その値は成分一つで表され,方向がない。それはスピンが 0であることを意味する。また全空間で 0でない値をもっており,それが理由となってほかの粒子(電子やクォークなど)に質量を与える。粒子によって質量が違うのは,それぞれヒッグス場との相互作用の強さが異なるからである。このメカニズムをヒッグス機構といい,1964年にイギリスのエディンバラ大学のピーター・ヒッグスにより提唱された。そして,ワインバーグ=サラムの理論などにより,今日の素粒子の標準理論のなかに一つの要素として取り入れられた。ヒッグス場の存在を実験で確認するには,それに付随する粒子であるヒッグス粒子を発見する必要がある。ヒッグス粒子は短命であり短時間でほかの複数の粒子に転換する。2012年7月,ヨーロッパ原子核研究機関 CERNの大型ハドロン衝突型加速器 LHCで実験を行なっていた科学者が,ヒッグス粒子が転換した結果と思われる現象を発見したと発表した。それによれば,ヒッグス粒子の質量は 125~126GeV(ギガ電子ボルト),水素原子の約 130倍であった。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ヒッグス粒子
ひっぐすりゅうし
Higgs boson

素粒子の統一理論から予想される粒子で、あらゆる物質の質量を生み出す機能をもつとされる。神の粒子とよばれることもある。自然界の基本的な力には、強い力、電磁力、弱い力、重力の四つの力がある。電磁力は二つの素粒子間に光子を交換することによって、弱い力はウィークボソンの交換によって媒介されるが、統一理論はこの二つの力を統合することに成功した。この理論はゲージ対称性にもとづいてつくられているが、その場合、交換する粒子の質量はゼロとなる。ところが、現実にはウィークボソンは陽子の100倍の質量をもつ。そこで、ゲージ対称性を見かけ上破ることによって質量を発生させるヒッグス機構が考案された。真空中にはヒッグス粒子がつまっており、素粒子はこのヒッグス粒子との衝突によって摩擦をおこし、それが質量を発生させたと考える。現段階ではあくまでも仮説であるが、もしヒッグス機構が正しいとすれば、ヒッグス粒子とよぶ新粒子の存在が予想されることになり、その発見がこれからの素粒子物理学の最大の課題とされる。[広瀬立成]

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

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