1950年代のアメリカに起こったビート運動になんらかのかかわりをもった世代(ビートニクbeatnik)の総称。ビート運動は,抑圧的で非人間的な機能をもつ社会体制と,そこに安住しようとするスクエアsquareすなわち保守的で中産階級的な価値観とに反逆し,人間性の無条件な解放のために積極的に貧困に甘んじ,原始的なコミューン生活を行おうとする一種の生活運動である。この運動は第2次大戦中の原子爆弾の製造と爆発,ナチスによるユダヤ人大量虐殺などによって予感されはじめ,戦後,東西両陣営の冷戦と呼ばれる緊迫した対立や,それに便乗して極右的な権力操作をもくろんだマッカーシイズムなどによっていっそう顕在化した。そして,日常的な行動様式,性の問題,服飾など,一般の風俗的な価値観などにも多大の影響をおよぼした。この運動の端緒の一つに,解放された個性の自然発生的な発動に力点をおこうとする文学・芸術上の新運動があったが,アレン・ギンズバーグの詩《吠える》(1956),ジャック・ケラワックの小説《路上》(1957)などは,ビート運動の高らかな宣言であったともいえるし,ノーマン・メーラーの評論《白い黒人》(1957)などはその強力な擁護論であった。この運動に参加した人たちは,具体的には,それぞれの行動様式にニュアンスをもたせて,ヒッピー,ヒップスター,〈聖なる野蛮人〉などと呼ばれることもある。この運動の一つの特色として,西欧的な合理主義に背を向けて東洋的なもの,ことに禅Zenと呼ばれるものへの著しい傾斜がある。現象としてのこの運動は,ヨーロッパ各国や日本にも受け入れられて,今日のさまざまな体制批判的な思考や行動,あるいは一般的な習俗の変容,などにまで尾を引いている。
ちなみに,ビートという語の意味は,打ちのめされた結果としての消耗と枯渇,ジャズ音楽のビート,至福beatitudeなどといった意味の複合であるといわれ,そのような意味でこの語を最初に用いたのはケラワックであった。
執筆者:大橋 吉之輔
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…科学・技術の進歩に対して単純な希望を託し得ないことが明瞭になり,ルネサンス以降西欧文明が不純物として切り捨てつづけてきたものの中にこそ,人間にとって重要なものがあったのではないかという反省も出てくる。小説家ケラワックや詩人ギンズバーグ,スナイダーなどの50年代ビート・ジェネレーションが東洋的なものへの志向を示した理由もそこにある。伝統的なアングロ・サクソン支配の体制がゆらぐにつれ,疎外感をかかえながら生きてきた黒人やユダヤ系の作家たちも,その屈折した心情を文学に結実させることが多くなった。…
…サンフランシスコ生れ。アレン・ギンズバーグとともに,いわゆるビート運動(ビート・ジェネレーション),およびそのライフスタイルの教祖的存在である。1956年から日本で臨済禅を合計8年近くも修行,ほかに真言密教,ヒンドゥー教,アメリカ・インディアンの神話にも通じ,影響を受けている。…
※「ビートジェネレーション」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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