ラブリュイエール(その他表記)Jean de La Bruyère

デジタル大辞泉 「ラブリュイエール」の意味・読み・例文・類語

ラ‐ブリュイエール(Jean de La Bruyère)

[1645~1696]フランスモラリスト代表作人さまざま」で当時の風俗人物を鋭く描写・批判した。

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精選版 日本国語大辞典 「ラブリュイエール」の意味・読み・例文・類語

ラ‐ブリュイエール

  1. ( Jean de La Bruyère ジャン=ド━ ) フランスのモラリスト。主著「人さまざま」において、豊富な語彙を用いて当時の人間をさまざまなタイプに描きわけるとともに政治的な風刺を行なった。(一六四五‐九六

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改訂新版 世界大百科事典 「ラブリュイエール」の意味・わかりやすい解説

ラ・ブリュイエール
Jean de La Bruyère
生没年:1645-96

フランスのモラリスト。パリの小市民の出身で,オルレアン大学法律を学び,弁護士となるが,法廷弁論を行った形跡はない。1673年カンの会計総務の官職を買うが,現地には赴かずパリで読書と思索と人間観察の日々を送った。84年ボシュエ推挙で大コンデ公の孫の家庭教師となり,宮廷や大貴族の実態に触れる機会を得るが,同時に注意力散漫で聞きわけのない弟子に手を焼き,宮仕え悲哀も味わった。家庭教師の任務終了後も引き続きコンデ家に仕え,つつましいながらも安定した生活と絶好の人間観察の場を与えられた。88年ギリシアの哲学者テオフラストスの《性格論(人さまざま)》の翻訳とその付録という形で,彼自身の手になる《当世性格論または当世風俗誌》(通称《人さまざま》)を出版するや,たちまち大反響を呼び,版を重ねた。第4版以降大幅な増補改訂が行われ,第8版(1694)の項目数は初版の3倍近くに達した。また彼は新旧論争においては古代派の支持者であったが,93年アカデミー・フランセーズ入会に際してその立場を鮮明にした演説を行い物議をかもした。最晩年はキエティスム論争にかかわり,ボシュエの側に立って《キエティスムに関する対話》を準備したが未完に終わった。

 主著の《人さまざま》には格言,省察,肖像の形式を採った1000余りの文章が16章に分けて収められているが,その内容を大別すると文芸批評,風俗批評,社会批評,宗教的考察の四つになる。本書は人間観においてはラ・ロシュフーコーのペシミズムを,文学観においてはボアローに代表される古典主義をほぼ踏襲しているといえる。その独創性は,著者が見聞した17世紀末のフランス社会を活写し,そこに生きる人間の種々相をあくなき好奇心をもって,ときにはこっけいに,ときには怒りをこめて巧みな肖像に定着したことにある。この点で《人さまざま》はジャンルは異なるとはいえ,モリエールの喜劇やラ・フォンテーヌの寓話詩と相通ずるところがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラブリュイエール」の意味・わかりやすい解説

ラ・ブリュイエール
らぶりゅいえーる
Jean de La Bruyère
(1645―1696)

フランスのモラリスト(人間探究家)。パリに生まれる。弁護士の資格を得たが、おそらく一度も法廷に立たなかった。叔父の遺産でカーン市の税務局収税官の職を買ったが、その職務につくこともなく、パリで気ままな独身生活を送るうち、司教ボシュエの紹介で、当時ブルボン王家傍系中最大の権勢を誇るコンデ大公Le Grand Condé(1621―1686)の孫の家庭教師に任ぜられた。内気で引っ込み思案なこの市井の読書人は、一転して大貴族の生活場裏に身を置くこととなり、観察と思索の好個の環境にあって書きつづったのが彼の主著『人さまざま』(1688)であり、以後1696年の第9版まで増補が重ねられた。「女性について」「宮廷について」などの16章に分かれているが、その構成はかなり自由で、短く辛辣(しんらつ)な警句もあれば、色彩豊かな肖像(典型的人物の描写)もあって、変化に富む。また「新旧論争」の渦中にあり、自らは旧派(古代人派)にくみしながらも、『人さまざま』のうちに散見する政治的風刺はきたるべき18世紀の文学を予告する。

[山田  2015年6月17日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラブリュイエール」の意味・わかりやすい解説

ラ・ブリュイエール
La Bruyère, Jean de

[生]1645.8.17.〈洗礼〉パリ
[没]1696.5.10./1696.5.11. ベルサイユ
フランスのモラリスト。オルレアンで法律を学ぶ。1684年,司教ジャック・B.ボシュエの紹介で大コンデ公の孫の家庭教師となり,終生コンデ家にとどまった。1688年ギリシアの哲学者テオフラストスの『性格論』の翻訳に自作を付した『カラクテール』Les Caractères de Théophraste traduits du grec avec Les Caractères ou les mœurs de ce siècleを刊行して大好評を博した。そのなかでは,人間の外面の動きが生き生きと描かれており,当時の社会の病弊も大胆に暴かれ,民衆の悲惨に深い同情が寄せられている。「新旧論争」においては古代派に属した。遺稿『静寂主義問答』Dialogues sur le quiétisme (1699) がある。

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百科事典マイペディア 「ラブリュイエール」の意味・わかりやすい解説

ラ・ブリュイエール

フランスのモラリスト。法律を学び,パリ高等法院付弁護人,大コンデ公の孫の教師などを務めた。テオフラストスの《性格論》の翻訳の付録の形で出版された《人さまざま》(1688年。正しくは《当世性格論または当世風俗誌》)が代表作。文芸,風俗,社会,宗教の批評と省察からなり,17世紀末の世態を活写して秀逸。
→関連項目新旧論争モラリスト

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