下す(読み)クダス

デジタル大辞泉 「下す」の意味・読み・例文・類語

くだ・す【下す/降す】

[動サ五(四)]
高いところから低いところへ移す。
㋐価値・地位などを低くする。「位を―・す」
㋑流れを利用して、物を下流へ移動させる。「いかだを―・す」
中央から地方に派遣する。「使者を―・す」
上位の人が下の者に物を与えたり、命令・判断などを与えたりする。「褒美を―・しおく」「判決を―・す」
自分ではっきりと判断する。「結論を―・す」「断を―・す」
自分で実際に処理する。「手を―・す」
(ふつう「降す」と書く)降参させる。従わせる。スポーツや勝負事で相手を負かす。「敵を―・す」

㋐薬の作用などで、体外へ出す。「虫を―・す」
㋑(「瀉す」とも書く)下痢をする。「腹を―・す」
筆を紙の上におろして書く。執筆する。「筆を―・す」
動詞の連用形に付いて)動作を滞りなく進行させ、一気に終わらせる。「読み―・す」「書き―・す」
10 雨などを降らせる。
杣山そまやまに立つけぶりこそ神無月時雨を―・す雲となりけれ」〈拾遺・雑秋〉
[可能]くだせる
[類語]下げる下ろす下りる飛び降りる引き下げる引き下ろす引き摺り下ろす倒す破る討つ討ち果たすなぎ倒す打ち破る打ち負かす打ち取るほふやっつける打倒するノックアウトする

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「下す」の意味・読み・例文・類語

くだ・す【下・降】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
  2. 天、空などから下の方へ移す。雨などを降らす。
    1. [初出の実例]「素戔嗚尊は是性(ひととなり)残害(そこなひやぶる)ことを好む。故、下(クタシ)て根国を治(しらせ)む」(出典:日本書紀(720)神代上(水戸本訓))
    2. 「そま山にたつけぶりこそ神無月時雨をくだす雲となりけれ〈大中臣能宣〉」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)雑秋・一一三八)
  3. 川の上流から下流へ流す。
    1. [初出の実例]「大井河くだす筏のみなれ棹みなれぬ人もこひしかりけり〈よみ人しらず〉」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)恋一・六三九)
  4. (紙などに)筆をおろす。また、碁、将棋などで、盤上に駒や石を打つ。
    1. [初出の実例]「かかる御中におもなくくだす筆のほど、さりともなん思う給ふる」(出典:源氏物語(1001‐14頃)梅枝)
    2. 「ヘボ碁ですから、石を下(クダ)すのも早いし」(出典:行人(1912‐13)〈夏目漱石塵労)
  5. 刃物をあてる。
    1. [初出の実例]「誠に木をきらんには、しきりにをのをくだせば、とくきれ侍るべし」(出典:九冊本宝物集(1179頃)九)
  6. 人を都から地方へ行かせる。物を都から地方へ送る。
    1. [初出の実例]「あの殿のゆるしなくは、親子の面(おもて)も見でくだしてんずるか」(出典:落窪物語(10C後)四)
    2. 「聖(ひじり)力及ばで関東へ下し奉る」(出典:平家物語(13C前)一二)
  7. 上位の人から下位の人へ与える。下賜する。
    1. [初出の実例]「平家にむすぼほれたりし人々も、源氏の世の強りし後は、或は文(ふみ)をくだし、或は使者をつかはし、さまざまにへつらひ給ひしか共」(出典:平家物語(13C前)一二)
  8. 命令、判決などを言い渡す。
    1. [初出の実例]「御門悦給て、雨のしたにみことのりをくたして」(出典:観智院本三宝絵(984)中)
    2. 「審判なしに宣告を下だすことは如何なる野蛮の法律も許るさぬ」(出典:火の柱(1904)〈木下尚江〉一八)
  9. 程度、価値、音調、地位などを低くする。さげる。
    1. [初出の実例]「琴の緒もいとゆるに張りて、いたうくだして調べ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
    2. 「ココロザシヲ cudasazu(クダサズ)」(出典:天草本伊曾保(1593)椶梠と竹の事)
  10. 戦争、スポーツ、勝負事などで相手を負かす。降参させる。
    1. [初出の実例]「もろもろのくにを降伏(カウフク)(〈注〉クタシフセン)せんとおもはんに」(出典:妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)五)
    2. 「秀吉は〈略〉島津義久等を降して、遂に天下を一統せり」(出典:尋常小学読本(1887)〈文部省〉七)
  11. 物事に対して自分ではっきりした判断をつける。また、それによって事を行なう。「手をくだす」
    1. [初出の実例]「旧史を補て新意を下て注したほどに」(出典:史記抄(1477)三)
    2. 「にわかにわたしとしては断定をくだしがたい」(出典:小説平家(1965‐67)〈花田清輝〉四)
  12. 下痢する。
    1. [初出の実例]「折節、腹中(ふくちう)をわづらひ、膿血(うみち)をくだしければ」(出典:仮名草子・竹斎(1621‐23)下)
    2. 「平生から胃腸の能くない男で〈略〉稍(やや)ともすると吐いたり下(クダ)したりした」(出典:行人(1912‐13)〈夏目漱石〉友達)
  13. ( 動詞の連用形につけて補助的に用い ) 上の動詞の表わす動作をすらすらと進行させる。「読みくだす」「書きくだす」など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

ドクターイエロー

《〈和〉doctor+yellow》新幹線の区間を走行しながら線路状態などを点検する車両。監視カメラやレーザー式センサーを備え、時速250キロ以上で走行することができる。名称は、車体が黄色(イエロー)...

ドクターイエローの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android