下げる(読み)サゲル

デジタル大辞泉 「下げる」の意味・読み・例文・類語

さ・げる【下げる】

[動ガ下一][文]さ・ぐ[ガ下二]

㋐物の一端を固定して下に垂らす。つるす。ぶらさげる。「風鈴を―・げる」「カーテンを―・げる」
㋑(「提げる」とも書く)物を手・肩・腰などで支えて下に垂らす。「かばんを手に―・げて持つ」「肩からカメラを―・げる」
高い所・位置から低い所・位置へ移す。位置を低くする。「頭を―・げる」「機首を―・げる」「目尻を―・げる」「一字―・げて書く」
今までよりも低い段階に移す。
㋐位・階級を低くする。等級順序などを下の方にする。「役付から―・げられる」「等級を―・げて出荷する」⇔上げる
㋑価値・値段・評価などを低くする。「男を―・げる」「値を―・げて売る」「コストを―・げる」⇔上げる
㋒能力・技量などを劣った状態にする。「調子を―・げる」「腕を―・げる」
㋓程度・度合いを低くする。おとす。「部屋の温度を―・げる」「あまり話を―・げるなよ」
㋔けなす。くさす。「人を上げたり―・げたりする」⇔上げる
身分の高い人や上位の存在から遠ざける。
目上の人の前からしりぞかせる。「家族の者を―・げる」
㋑高位の場所からしりぞける。人の前などから取り去ってかたづける。「供物を―・げる」「おぜんを―・げる」⇔上げる
奉公人などに暇を出す。また、退学させる。「家の事情で学校から―・げる」
目上の者から目下の者へものを渡す。官庁などが許可・金銭などを与える。さげ渡す。交付する。「洋服を妹に―・げる」「鑑札を―・げる」
一度自分の手を離れて他に出したものを再び自分のもとに返す。
㋐提出したものを引っ込める。「要求を―・げる」「訴えを―・げる」
金融機関から、預けた金を引き出す。おろす。「貯金を全部―・げる」
後方に移す。「駐車位置を―・げる」
「持つ」「携える」「有する」などの意の俗な言い方。「五〇づら―・げてそんなまねができるか」
[下接句]上げたり下げたり頭を下げる男を下げる手鍋てなべ提げてもどのつら下げて目尻めじりを下げる
[類語]下ろすくだ下りる飛び降りる引き下げる引き下ろす引き摺り下ろす

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「下げる」の意味・読み・例文・類語

さ・げる【下・提】

  1. 〘 他動詞 ガ下一段活用 〙
    [ 文語形 ]さ・ぐ 〘 他動詞 ガ下二段活用 〙
  2. 物の一端を固定して下へ垂らす。
    1. (イ) 物に掛けてつるす。つりさげる。
      1. [初出の実例]「庭に生ふる 唐薺(からなづな)はよき菜なり はれ 宮人の 左久留(サグル)袋を おのれ懸けたり」(出典:催馬楽(7C後‐8C)庭に生ふる)
      2. 「煤はらひ梅にさげたる瓢かな〈一髪〉」(出典:俳諧・曠野(1689)五)
    2. (ロ) ( 提 ) 手に持って下へ垂らす。ぶらさげる。
      1. [初出の実例]「ちちかるかやのどうしんは、はなかごをてにさけて、おくのゐんよりおかへりあると」(出典:説経節・説経苅萱(1631)下)
  3. 前から後ろへと位置を変わらせる。後ろへ移す。「一歩さげる」
  4. 地位が上の人のいる所から離れさせる。
    1. (イ) 目上の人や客などのいる前から退かせる。
      1. [初出の実例]「心地なやましければ、人々さげずおさへさせてなむと聞こえさせよ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
    2. (ロ) 人の前から料理などをとりかたづけて台所などへ運び出す。
      1. [初出の実例]「お種は勝手へ下げる物を片付けて婢(をんな)を呼ぶと」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉後)
    3. (ハ) ある人の近くから物を他へ移す。
      1. [初出の実例]「生憎此間から夜具蒲団を洗濯に下(サ)げて今宅にないのでございます」(出典:落語・宗漢(1895)〈四代目橘家円喬〉)
    4. (ニ) 奉公先、稽古所、学校などから帰らせる。また、そこへ行くのをやめさせる。
      1. [初出の実例]「諷ではどふてくへぬとおやじ下げ」(出典:雑俳・川柳評万句合‐明和六(1769)智三)
      2. 「もうひとり小間使がゐましたが、訳があって下げたので、当分は忙しからう」(出典:細君(1889)〈坪内逍遙〉一)
  5. 高い所から低い所へと移す。おろす。⇔あげる
    1. [初出の実例]「トリノ エヲ モタセ サシアゲバ、トリモ ウエニ アガリ sagueba(サゲバ) トリモマタ サガル ヤウニ ナラワセテ」(出典:天草本伊曾保(1593)エジットよりの不審の条々)
  6. 一方または一部分を他より低くする。⇔あげる
    1. [初出の実例]「つばくらめ尾をさけていたくめぐるにあはせて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 「お種が辞儀をすれば、柳之助も同じやうに頭を低(サ)げて」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前)
  7. 物事の程度などを低くする。⇔あげる
    1. (イ) 地位や格式、価値などを低くする。
      1. [初出の実例]「わが身にあやまつ事はなけれども、すてられたてまつるだにあるに、座敷をさへさけらるることの心うさよ」(出典:高野本平家(13C前)一)
    2. (ロ) 値段、相場などを安くする。
      1. [初出の実例]「茶の買置をさげて売出す〈孤屋〉 この春はどうやら花の静なる〈利牛〉」(出典:俳諧・炭俵(1694)上)
    3. (ハ) 音の高さ、大きさを低くしたり速度、濃度などを減じたりする。
      1. [初出の実例]「上声五句斗(ばかり)、指声五句斗、下て云ひ納むるまで、五六句斗、曲舞十二三句歟」(出典:三道(1423))
      2. 「九哩の速力をどうしても、もっと下げなければならない筈であった」(出典:海に生くる人々(1926)〈葉山嘉樹〉二五)
  8. 目上の者から目下の者へ渡す。また、官府が書類などを返したり渡したりする。
    1. [初出の実例]「おれが名代に、畠山さまへ行たれば、随分金子は下(サ)げつかはすが」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)初)
  9. 貯金などを引き出す。
    1. [初出の実例]「けさ郵便局から小遣ひをさげておかうと思ひながら」(出典:苦の世界(1918‐21)〈宇野浩二〉六)
  10. 軽蔑する。見下げる。
    1. [初出の実例]「わどのをさぐるにはあらず、存ずるむねがあれば名のるまじいぞ」(出典:平家物語(13C前)七)
  11. ( (ロ) の意から ) ある性質、気持、顔つきなどを持つ、有する。
    1. [初出の実例]「おのれが五体どこを不足にうみ付た。人間の根性なぜさげぬ」(出典:浄瑠璃・女殺油地獄(1721)中)
    2. 「こちとらア四十づらアさげて色気もそっけもねへけれど」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉初)
  12. 支払う。
    1. [初出の実例]「玉をさげぬ内は子共を廻さず」(出典:洒落本・玉之帳(1789‐1801頃))
  13. 支払いを待ってやる。つけにしてやる。
    1. [初出の実例]「下らふといっても茶屋は下げず」(出典:洒落本・駅舎三友(1779頃)出立)

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