下りる(読み)オリル

デジタル大辞泉 「下りる」の意味・読み・例文・類語

お・りる【下りる/降りる】

[動ラ上一][文]お・る[ラ上二]
高い所から低い方へと移って、ある位置・場所に着く。上から下へ移動する。「山を―・りる」「木から―・りる」⇔あがる
物が人の操作によって下の方へ移動する。「錠が―・りる」「幕が―・りる」⇔あがる

㋐乗っていた乗り物から出る。「バスを―・りる」⇔のる
㋑(下りる)からだの外へ出る。「回虫が―・りる」
負担になっていたものがなくなる。「胸のつかえが―・りる」「肩の荷が―・りる」

官位役職を退く。職を辞める。「管理職を―・りる」
㋑俳優などが配役を断って、その役を辞める。「主役を―・りる」
(下りる)官公庁などから、支給・下付される。「認可が―・りる」「年金が―・りる」
勝負事で、勝敗を争う権利を捨てる。「勝ち目がないので―・りる」
(降りる)霧や霜などが地上・空中などに生じる。「露が―・りる」
貴人の前から退出する。さがる。
つぼねへいととく―・るれば」〈・八七〉
[用法]おりる・くだる――高い所から低い所へ位置を移す、位置をかえるの意で共通性があるが、「おりる」は「階段を(から)おりてください」「一階におりる」など、下への場所の移動を表すほか、「電車をおりる」「役員をおりる」など、ある物事から離れる意味でも使われる。人以外のものが主体になっても「幕がおりる」「霜がおりる」など下方への移動の意味が中心となる。◇「くだる」は「坂道を下る」「船で川を下る」など、やはり下への場所の移動であるが、どこを通って移動するかに意味の重点がある。「石段を下っていった」と「石段をおりたところに広場がある」とはその点で使い分けられる。◇「あがる⇔おりる」「のぼる⇔くだる」の対応が考えられる。
[類語](1降ろす下げるくだ飛び降りる引き下げる引き下ろす引き摺り下ろす/(3降り立つ降車下車下船下乗下馬降機

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「下りる」の意味・読み・例文・類語

お・りる【下・降】

  1. 〘 自動詞 ラ行上一 〙
    [ 文語形 ]お・る 〘 自動詞 ラ行上二段活用 〙
  2. [ 一 ] そうしようとする意志が働いて、上から下へ人や物の位置が変わる。また、ある位置から退く。
    1. 高い所から低い所へ移り動く。くだる。さがる。⇔のぼる
      1. [初出の実例]「ますらをの高円(たかまと)山にせめたれば里に下(おり)(け)るむざさびそこれ」(出典万葉集(8C後)六・一〇二八)
      2. 「かばかりになりては、飛びおるともおりなん」(出典:徒然草(1331頃)一〇九)
    2. そうなるきまりのものや仕掛けのもの(幕や錠など)が上から下へ動かされる。
      1. [初出の実例]「つれづれなるもの〈略〉馬おりぬ双六(すごろく)」(出典:枕草子(10C終)一三九)
    3. (馬、車、船など)乗っていた乗物から離れる。⇔乗る
      1. [初出の実例]「船よりおりて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    4. 貴人の前から退く。退出する。さがる。⇔あがる
      1. [初出の実例]「曹司(ざうし)におり給へれば」(出典:伊勢物語(10C前)六五)
    5. 天皇が位を退く。また、(一般に)ある職をやめる。
      1. [初出の実例]「俄(にはか)にみかど御ここちなやみ重くて、おり給ひて、東宮位につかせ給ひぬ」(出典:落窪物語(10C後)三)
    6. こすって物を細かく砕く作用をもつ。磨(す)れる。
      1. [初出の実例]「チャガ ヨウ voruru(ヲルル)〈訳〉茶臼(ちゃうす)が良いので挽(ひ)いた茶が石臼から下へよく落ちる」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    7. 上から下への移動と見なし得るそれぞれの動作をいう。
      1. (イ) 卒業したりして学校を離れる。さがる。
        1. [初出の実例]「小学校降りてから、漢字を別に遣ってそれから絵も少し習った」(出典:青春(1905‐06)〈小栗風葉〉春)
      2. (ロ) 仕事や催し、勝負事などに参加する権利をすてる。
        1. [初出の実例]「『彦さん、少し降りてるといいや』残った二人で勝負をつづけてゐる傍で」(出典:普賢(1936)〈石川淳〉三)
      3. (ハ) 官公庁や目上の人などから、金品や指示が与えられる。「恩給がおりる」
        1. [初出の実例]「簡単に許可が降りるかどうか確定的なことは請合へないと」(出典:闘牛(1949)〈井上靖〉)
  3. [ 二 ] 自然の力に従って、上から下へ位置を変える。
    1. (露、霜が)地上に生じる。おく。また、霧が生じる。
      1. [初出の実例]「霧下りて本郷の鐘七つきく〈杜国〉 ふゆまつ納豆たたくなるべし〈野水〉」(出典:俳諧・冬の日(1685))
    2. からだの中から下へ出る。
      1. [初出の実例]「十六に成(なる)むすめ、四年此かた大べんおりずして」(出典:浮世草子・西鶴織留(1694)四)

下りるの補助注記

高い所から低い所への位置の移動を基本的に表わし、「あがる」の対義語と見なされるが、「坂ののぼりおり」「車ののりおり」というように、「のぼる」「のる」と対をなすこともある。

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