破る(読み)ヤブル

デジタル大辞泉 「破る」の意味・読み・例文・類語

やぶ・る【破る】

[動ラ五(四)]
引き裂いたり、傷をつけたり、穴をあけたりして、もとの形をこわす。「障子を―・る」「書類を―・る」
相手の守りなどを突き抜ける。突破する。「警戒網を―・る」「左中間を―・るヒット
今まで続いてきた状態をそこなう。かきみだす。「太平の夢を―・る」
従来のものに代わって新しくする。記録などを更新する。「世界記録を―・る」
相手を打ち負かす。「強敵を―・る」
守るべき事柄にそむく。きまりや約束などを無視する。「約束を―・る」「校則を―・る」
傷つける。害する。
身体髪膚を―・らずして」〈沙石集・三〉
[可能]やぶれる
[動ラ下二]やぶれる」の文語形
[下接句]あめつちくれを破らずかまどを破る産を破る叢蘭そうらん茂らんと欲し秋風しゅうふうこれやぶみさおを破る横紙を破る
[類語]破く裂く引き裂く破れる破ける裂ける切り裂く張り裂けるはち切れる鉤裂き壊す倒す破壊する損壊する毀損きそんする破損する損傷する損ずるそこなうこぼ傷付ける欠く砕く割る崩すつぶ打ち砕く打ち壊すぶち壊す取り壊す叩き壊す破砕砕破全壊壊滅

や・る【破る】

[動ラ四]やぶる。引き裂く。
「とまれかうまれ、疾く―・りてむ」〈土佐
[動ラ下二]やれる」の文語形。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「破る」の意味・読み・例文・類語

やぶ・る【破】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
    1. 物を突いて原形をこわす。物をうち砕く。割る。破壊する。
      1. [初出の実例]「香島嶺の 机の島の 小螺(しただみ)を い拾ひ持ち来て 石もち つつき破夫利(やブリ)」(出典:万葉集(8C後)一六・三八八〇)
    2. 布や紙などを引き裂く。引きちぎる。やぶく。
      1. [初出の実例]「薄絹を一重破れば」(出典:草枕(1906)〈夏目漱石〉七)
    3. からだに傷をつける。負傷させる。そこなう。害する。
      1. [初出の実例]「霜ふりて草木の花葉を傷(やふレ)り」(出典:日本書紀(720)皇極二年三月(岩崎本院政期訓))
      2. 「身をやぶるよりも、心をいたましむるは、人をそこなふ事なほ甚し」(出典:徒然草(1331頃)一二九)
    4. 気持を傷つける。機嫌をそこねる。
      1. [初出の実例]「憂の箭に苦しく心を傷(ヤフラ)る」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一〇)
    5. 物事をだめにする。ぶちこわしにする。成り立たなくする。
      1. [初出の実例]「内裏より日をとりてくだし給はせて、せめさせ給ふことをば、はかなき私事にてやぶるべきにてはあらず」(出典:宇津保物語(970‐999頃)沖つ白浪)
    6. 慣例や約束など、守るべきことを守らないで無視する。戒律や法律を犯す。
      1. [初出の実例]「制(ことわり)に違ひ、法を害(ヤフル)」(出典:日本書紀(720)推古一二年四月(岩崎本平安中期訓))
      2. 「古来の文章法を破(ヤブ)って平易なる通俗文を用ふる」(出典:福翁自伝(1899)〈福沢諭吉〉雑記)
    7. 備え、守り、囲みなどを突き抜けて向うに出る。突破する。突きやぶる。
      1. [初出の実例]「障子のかためもいと強し。しひてやぶらむをばつらくいみじからむ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)総角)
    8. 戦いや勝負事で相手を負かす。敗北させる。
      1. [初出の実例]「朕崩(し)なむ後に当に皇太子を害(ヤフラ)む」(出典:日本書紀(720)雄略二三年八月(前田本訓))
    9. それまで続いていた穏やかな状態を突然そこなう。
      1. [初出の実例]「青嵐夢を破て、その面影もみえざりけり」(出典:平家物語(13C前)三)
    10. それまで維持されていた記録などを更新する。
      1. [初出の実例]「時々世界のレコードを破(ヤブ)ると云ふやうな高飛とか棒飛とか」(出典:東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉十一月暦)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙やぶれる(破)

や・る【破】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙 やぶる。やぶく。
    1. [初出の実例]「とまれかうまれ、とくやりてん」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月一六日)
    2. 「諸部の般若、偏に第一義空を説(とく)は、衆生の執をやらむが為なり」(出典:梵舜本沙石集(1283)四)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙やれる(破)

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