公方(読み)くぼう

デジタル大辞泉の解説

おおやけ‐がた〔おほやけ‐〕【公方】

朝廷・政治などに関する方面
「―の御後見はさらにも言はず」〈澪標

く‐ぼう〔‐バウ〕【公方】

おおやけ。おもてむき。公事。
「和殿をもちてこそ、―、私、心安く」〈曽我・一〉
天皇。また、朝廷。
「―までもきこしめしひらかれ」〈曽我・一〉
鎌倉・室町時代、幕府将軍家をさしていう語。また、鎌倉府の長をいう。
中世、守護荘園領主をいう。
江戸時代、将軍をいう。

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世界大百科事典 第2版の解説

くぼう【公方】

平安中期の《源氏物語》《枕草子》などにみられる〈おおやけかた〉と同義で,1181年(養和1)8月の後白河院庁公文所問注記集(《東大寺文書》)に〈公方済物〉,1256年(康元1)8月の感神院政所下文案(《八坂神社文書》)に〈公方に訴え申す〉などとあるように,〈私〉の対語として公家,朝廷の方面をさす語であった。この用法は中世を通じても見られるが,鎌倉中期の1283年(弘安6)将軍家御教書(みぎようしよ)を〈公方御教書〉といったのを早い例として,将軍をさす言葉として用いられるようになった。

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大辞林 第三版の解説

おおやけがた【公方】

公的な事柄に関する方面。朝廷・国家に関する方面。 「 -の御後見はさらにも言はず/源氏 澪標

くぼう【公方】

天皇。または朝廷。おおやけ。
鎌倉末期から室町・江戸時代、将軍の尊称。 「 -様」
中世後期以後、寺社本所・守護・国一揆など荘園公領の支配者各層をさす場合もある。 「古河-」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

公方
くぼう

公的権力の所有者をさすことば。「おおやけかた」ともいい、公家(くげ)の方、すなわち天皇、ひいては朝廷をいったが、鎌倉時代末期には、幕府の家人(けにん)が将軍を公方と敬称した。室町時代には将軍はもちろん、鎌倉御所や九州探題をも公方とよび、幕府そのものをも公方とよぶことがあった。江戸幕府ではもっぱら将軍を公方といい、幕府を公儀(こうぎ)と称した。5代将軍徳川綱吉(つなよし)が「犬(いぬ)公方」とよばれたことはよく知られている。このほか荘園(しょうえん)制のもとで、荘官や農民らは荘園領主をも公方と尊称していた。[百瀬今朝雄]

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精選版 日本国語大辞典の解説

おおやけ‐がた おほやけ‥【公方】

〘名〙
① 公式の事柄に関する方面。
※宇津保(970‐999頃)楼上下「僧の方よりも、おほやけがたにつけて、責め懲(てう)じ家を滅(ほろぼ)し侍り」
② 朝廷、国家などに関する方面。また、その人々。
御伽草子・福富長者物語(室町末)「その芸あさましくいぶせければ、〈略〉おのづからおほやけがたにもきこしめし伝へ給ひて」

く‐ぼう ‥バウ【公方】

〘名〙
① 公務。公事。朝廷、幕府に奉仕する役。
※極楽寺殿御消息(13C中)第五四条「そうりゃうたる人はくはうをつとめ、そしを心やすくあらすべし」
② 天皇、または朝廷のこと。
※随筆・嘉良喜随筆(1750頃)一「公方とは禁裏のこと也」
③ 鎌倉時代後期、室町時代、守護地頭や荘園領主に対する上級裁判権者としての幕府の呼称。
※宇都宮家式条(1283)三八条「内談之時者、以公方并他所事、先可其沙汰
④ 鎌倉時代後期、室町時代、幕府と朝廷の両者を総体としてさす呼称。
※九条家文書‐(年月日未詳)(鎌倉)九条禅閤忠教家雑掌初度目安案「早為公方之御沙汰、可渡本所者哉」
⑤ 室町時代、将軍家を指す呼称。また、特に在職中の征夷大将軍を他と区別していう。
※園太暦‐康永三年(1344)一〇月二三日「公方御沙汰不子細哉之由申之」
⑥ 室町時代、将軍家の一族であった鎌倉公方、古河公方(こがくぼう)、堀越公方などをいう。
※喜連川判鑑(1653)「今年関東の諸家京都へ訴申し、鎌倉へ請侍し如元公方と称す」
⑦ 室町時代、守護(しゅご)の尊称。
※高野山文書‐永享五年(1433)一二月日・上田入道浄願事書「たとい公方様の御使にて候共、かやうに情なくらんぼう仕候事はあるまじく候」
⑧ 中世、荘園領主をいう。
※和泉松尾寺文書‐建長四年(1252)五月一一日・唐国村刀禰百姓等置文案「公方御大事時は、人夫伝馬可之」
⑨ 近世、将軍家、また将軍職の人をいう。
[語誌]元来は、①の公務やその役をいったが、鎌倉時代後期には、③④のように幕府(将軍家)や朝廷をさすようになる一方、荘園・公領を支配する寺社本所・武家をおしなべて公方とよぶ習慣も同時に一般化する。これは、この語が国家的統治権の所在を指すようになったためであろうと思われる。室町時代になると、そのことがもっと明確化し、⑦⑧のように守護領主・荘園領主をも指すようになる。

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世界大百科事典内の公方の言及

【荘園】より

…しかし大田文に載せられた公田数を基準に,これらの一円領に一国平均の段銭を賦課,守護を通じて徴収させる室町幕府の体制はともあれここに軌道にのったのである。 一円領が形成されるころから,年貢を収取するその支配者は共通して公方(くぼう)とよばれるようになり,公方は荘務を掌握する預所に当たる所務職を補任,所務職保持者は現地での実務,地頭・守護との訴訟,交渉をその代官に請け負わせた。武家領でもすでに得宗(とくそう)領,北条氏所領は給主に与えられ,給主代が現地の政所で実務を行う体制がみられたが,それは足利氏所領から室町幕府,鎌倉公方の御料所にうけつがれ,御料所はその奉公衆に預け置かれたのである。…

【天役】より

…天役(天皇の課したもの)から点役(主君=領主の点定した役)への語句および語義の変化の内に,中世社会の展開を読みとることは容易であろう。公方が朝廷,将軍の意から,守護,荘園領主,個々の在地領主をも意味するようになっていく流れと同じである。新田義貞が,〈兵粮のためにとて近国の荘園に臨時の天役を掛け〉たように(《太平記》),以後守護の賦課した守護役も天役と称されるようになっていく。…

※「公方」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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