千代川(読み)センダイガワ

デジタル大辞泉 「千代川」の意味・読み・例文・類語

せんだい‐がわ〔‐がは〕【千代川】

鳥取県東部を流れる川。中国山地那岐なぎ付近に源を発して北流し、鳥取市賀露かろで日本海に注ぐ。長さ52キロ。下流域に鳥取平野を形成し、流砂は鳥取砂丘をつくる。河口西方に潟湖せきこ湖山池がある。

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日本歴史地名大系 「千代川」の解説

千代川
せんだいがわ

岡山県境に近い智頭ちず駒帰こまがえりの東方おきノ山(一三一八・八メートル)を源流とする。流域面積一一九一平方キロ、幹川流路延長五七キロ、県東部を北流する一級河川。上流域の形状は平均幅およそ二一キロの扇形で、南の中国山地から北流して下る幹川河道を軸に東西に開き、縁辺の脊梁は東におうぎノ山・ひようノ山(須賀ノ山)、南に那岐なぎ山・三国みくに山、西は鷲峰じゆうぼう山の連山に囲まれる。これらの山間渓谷を下る各支川はそれぞれの流域で発達する扇状地を下り、下流の沖積平野を貫流する幹川へと合流する。西岸には汽水湖の湖山こやま(鳥取市)、東岸には旧袋きゆうふくろ川や大路おおろ川の後背湿地帯が分布。河口部には西岸に湖山砂丘、東岸に鳥取砂丘(浜坂砂丘)が発達している。幹川は智頭町南東部を北西流し、同町智頭付近の智頭盆地で土師はじ川・新見にいみ川が合流する。ここから北流して峡谷を抜けると両岸に段丘をもつ穿入河道となり、用瀬もちがせ町用瀬付近で佐治さじ川を合流し、大きく蛇行しながら北流して河原かわはら曳田ひけた曳田川を合せる。この付近から河道は扇状地河道に移り、鳥取平野の扇頂部同町河原で八東はつとう川を合流する。下流に向かって順次河道の幅を広げながら北流し、同町袋河原ふくろがわら辺りで東岸寄りに転流、鳥取市円通寺えんつうじに達する。同市長谷はせ砂見すなみ川を合せ、高い堤防と広い高水敷を整えた河道を北流する。両岸の堤内地には鳥取平野が広がり、都市化が進行している。同市菖蒲しようぶで左岸に有富ありどめ川、吉成よしなりで右岸に大路川、古市ふるいちで袋川を合せて自然堤防地帯からデルタ平野に移り、緩やかな流れで北北西に下る。同市浜坂はまさかで旧袋川を合流し、同市賀露かろ町の鳥取港東方から日本海に流出する。昭和初年までは同市安長やすなが秋里あきさと付近で東に大きく蛇行して流れ、近年まで河口は鳥取港にあった。

一般に流域の地形はグリーンタフ造山活動期の前後に整えられたとされ、鳥取平野は第四紀更新世に古鳥取湾が埋立てられ沖積海岸平野となったとされる。現在幹川に合流する各支川は古鳥取湾へ個別に流入していた単独河川で、各流域から湾内へ土砂を搬入して鳥取平野を造成したとみられ、一方湾内を日本海から遮蔽する湖山・鳥取両砂丘は後期洪積世のリス・ウルム間氷期に形成されたとみられる。千代川水系の縄文海進期以降の地形は人為的な変形があったものの、古代からほぼ変わらず近代に至ったものと思われる。

川名は戦国時代末期から江戸時代初期には「仙大川」とも書かれた(寛永二一年「山県長茂覚書」吉川家文書)。疑問はあるものの「陰徳太平記」には「千谷川」と記され、地元民が「せむだい」とよんだことから「千代」の字があてられるようになったともされる(因幡志)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「千代川」の意味・わかりやすい解説

千代川(川)
せんだいがわ

鳥取県南東部の那岐山(なぎさん)と沖ノ山(おきのせん)に源を発し、北流して鳥取市賀露(かろ)付近で日本海に入る。一級河川。延長52キロメートル。流域面積1190平方キロメートル。支流佐治(さじ)川、八東(はっとう)川、私都(きさいち)川、袋(ふくろ)川などをあわせる。各河谷上流の谷頭(こくとう)侵食部には、芦津三滝(あしづのみたき)、山王滝(さんのうのたき)、三滝渓(みたきけい)(県の名勝地)、雨滝(あめだき)などを形成、その上流には浅い谷と高原面が残り、ダム、水路式電源地帯をなす。山脚が川に迫る峡流地は俗に峯岐(ほうき)とよばれ、三遷急点と三段の段丘の残片が中流域に残る。下流では溺(おぼ)れ谷を埋積して鳥取平野や鳥取砂丘を形成し、西隅には潟湖の湖山(こやま)池がある。平野の条里面より低い微地形面には、蛇行した河道跡が残る。東岸は山白(やましろ)川用水、西岸は大井手(おおいで)用水により灌漑(かんがい)され、氾濫(はんらん)原は近代以前に水田化された。鳥取城下町や外港賀露は、中流以北の水運で結ばれたが、豪雨時には河道が短く急なため、水害が多発し、低湿防御帯に立地した鳥取市は城下町時代から被災を重ねた。治水事業は大正末期以降進み、1931年(昭和6)には本流の、1934年には支流袋川の新河道の掘削通水を完了。第二次世界大戦後は重要港湾鳥取港の修築計画で、河口部河道の直線化が進行し、1990年(平成2)からは1万トン岸壁、5000トン岸壁の供用が開始された。

[岩永 實]



千代川(旧村名)
ちよかわ

茨城県南西部、結城郡(ゆうき)にあった旧村名(千代川村(むら))。現在は下妻市(しもつまし)の南部を占める地域。旧千代川村は1955年(昭和30)宗道(そうどう)、蚕飼(こかい)、大形(おおがた)の3村が合併して成立。2006年(平成18)下妻市に編入。旧村名は江連(えづれ)用水の再興工事総監市村宗四郎の句「樋(ひ)開きや豊田郡(とよだごおり)の千代の水」に由来する。旧村域は結城台地と鬼怒(きぬ)川、小貝(こかい)川沿岸低地よりなる。関東鉄道常総(じょうそう)線と国道294号が通じる。中世より開かれ、近世は下総国(しもうさのくに)豊田郡と岡田郡とに属した。旗本領が多く、鬼怒川水運の宗道河岸(がし)で栄え、近代には結城郡政の中心でもあった。米作と野菜栽培がおもであるが、石下紬(いしげつむぎ)の工場がある。

[櫻井明俊]

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改訂新版 世界大百科事典 「千代川」の意味・わかりやすい解説

千代川 (せんだいがわ)

鳥取県東部を北流する川。岡山・兵庫両県境に近い沖ノ山に源流部があり,中流部で八東川,佐治川を合わせ,下流部で袋川,野坂川などと合流し,鳥取市の賀露(かろ)で日本海に注ぐ。70におよぶ支流は樹枝状の水系を形成し,鳥取県面積の1/3以上の流域を有する。幹川流路延長52km,全流域面積1190km2。流域の大半が山地で,智頭(ちず)川,八東川流域は森林に恵まれ,西日本有数の林業地帯を形成する。中流部には国中(くになか)平野,下流部には鳥取平野がひろがる。河口の賀露付近には,左岸に湖山(こやま)砂丘,右岸に浜坂砂丘(いずれも鳥取砂丘の一部)が形成されている。千代川は過去1200年間に200回以上の洪水の記録があり,近世の250年間の記録は100回以上で,洪水の多い河川であった。近世以後の鳥取藩の治水工事,明治期以後の河川改修により,最近は大きな洪水災害はない。1992年,河口部の付け替え工事とその後の改修工事はほぼ完成した。
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千代川 (ちよかわ)

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百科事典マイペディア 「千代川」の意味・わかりやすい解説

千代川【せんだいがわ】

鳥取県東部の日本海に注ぐ川。長さ52km。流域面積1190km2。中国山地の那岐(なぎ)山に発して北流し,河原町(現・鳥取市)で八東川と合流,下流に鳥取平野と湖山(こやま)池がある。戦国期末には仙大川などとみえ,江戸時代には鳥取を中心とする商品流通の搬路となった。水害が多かったが,1923年河川改修が行われた。上流は木材多産地。
→関連項目智頭[町]鳥取[県]用瀬[町]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「千代川」の意味・わかりやすい解説

千代川
ちよかわ

茨城県南西部,下妻市南部の旧村域。鬼怒川流域にある。 1955年宗道村,蚕飼村,大形村の3村が合体して千代川村が成立。 2006年下妻市に編入。米作中心の農業地域で,ハクサイ,スイカなどの栽培も行なわれる。中心集落の宗道はかつての鬼怒川沿いの河港。

千代川
せんだいがわ

鳥取県東部を北流する川。那岐山,沖ノ山に源を発し,途中で八東川,佐治川,袋川などを合せて鳥取市賀露で日本海に注ぐ。全長約 52km。上流の峡谷部に芦津三滝,雨滝,大鹿滝などがある。中国山地の北斜面を浸食し,中・下流域に鳥取平野を形成,河口部には湖山池や鳥取・湖山砂丘が発達する。かつては水害の多い川であったが 1923年の改修により治水が完成,鳥取平野の灌漑,水力発電に役立っている。

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世界大百科事典(旧版)内の千代川の言及

【鳥取[市]】より

…人口14万6330(1995)。市域は千代(せんだい)川下流部の鳥取平野と周辺の山地からなり,県の政治,経済,文化の中心的役割を果たしている。千代川東岸の低湿な三角州に位置する中心市街地は,近世には池田氏の城下町で,袋川下流部の河道を付け替え,池沼などを埋め立てて形成された。…

※「千代川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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