及ぶ(読み)オヨブ

デジタル大辞泉 「及ぶ」の意味・読み・例文・類語

およ・ぶ【及ぶ】

[動バ五(四)]
物事が続いたり広がったりして、ある所・範囲に届く。達する。「五時間に―・ぶ討論」「被害各地に―・んだ」「議論が国際問題に―・ぶ」
ある状態にたちいたる。「この期に―・んで、まだ決めかねている」
結果として、ある状態・段階になる。「実力行使に―・ぶ」
自分の力が届く。なしとげられる。「―・ぶ限りの努力をする」「―・ばぬ恋」
(多く打消しの語を伴って用いる)能力地位実質などの程度がある基準に達する。
㋐追いつく。また、とり返しがつく。「想像も―・ばない進歩」「悔やんでも―・ばない」
㋑匹敵する。かなう。「英会話では彼に―・ぶ者がない」→及びもつかない
(「…にはおよばない」の形で)…する必要がない。…しなくともよい。「遠慮するには―・ばない」
動詞連用形に付いて、動詞の意味を強調し、その動作が最後の段階にまで到達していることを表す。「聞き―・ぶ」
及び腰になる。
「榊をいささか折り給ひて、少し―・びて、参らせ給ふ」〈狭衣・三〉
[下接句]足元にも及ばない言うに及ばず一議に及ばずも舌に及ばず疾雷しつらい耳をおおうに及ばず過ぎたるはなお及ばざるがごとし是非に及ばず
[類語]達する上る適う

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「及ぶ」の意味・読み・例文・類語

およ・ぶ【及】

  1. 〘 自動詞 バ五(四) 〙
  2. 腰をかがめ、手をのばして目標に届くようにする。及び腰になる。また、追いかけて前の人や物に届くようにする。
    1. [初出の実例]「をみなへしの見えしを、およびて折りしほどに馬よりおちて」(出典:遍昭集(10C後か))
    2. 「ひき放ちて出で給ふを、せめてをよびて、『橋柱』と恨みかくるを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)紅葉賀)
  3. 序列の中のある物、所、時、程度などに達する。
    1. (イ) ある物、場所などに届く。ある地位に達する。
      1. [初出の実例]「岩のうへにならべて生ふる松よりも雲井にをよぶ枝も有りなん」(出典:宇津保物語(970‐999頃)藤原の君)
      2. 「はかばかしからぬ身にて、かかる位におよび侍て」(出典:源氏物語(1001‐14頃)行幸)
    2. (ロ) ある時期や数量などに達する。
      1. [初出の実例]「是の皇女、此の天皇の時(みとき)より炊屋姫(かしきやひめ)の天皇の世(みよ)に逮(オヨフ)まで日神の祀に奉(つかまつ)る」(出典:日本書紀(720)用明即位前(図書寮本訓))
      2. 「心よく数献(すこん)に及びて」(出典:徒然草(1331頃)二一五)
    3. (ハ) ある範囲に行き渡る。影響する。
      1. [初出の実例]「聖鑒遐く覃(オヨヘ)り」(出典:天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
      2. 「父祖の善悪は必子孫に及ぶとみえて候」(出典:平家物語(13C前)二)
    4. (ニ) ある状態に達する。あることをするようになる。
      1. [初出の実例]「熱病を煩(わづら)ふて幸に全快に及(オヨ)んだが」(出典:福翁自伝(1899)〈福沢諭吉緒方の塾風)
    5. (ホ) ( 「…に及ぶ」の形で ) ついに…となる。…の状態にたちいたる。
      1. [初出の実例]「但法勝寺なども風下にて候へば、伽藍の滅亡にや及(および)はんずらん」(出典:保元物語(1220頃か)中)
    6. (ヘ) (手、心、言葉などが)その働きを発揮する。また、自分の力が届く。なしとげられる。
      1. [初出の実例]「かたちよりはじめ、交らひたるさまなど、もどかしきところなく、かどかどしく、目もをよばずすぐれいでたれば」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
      2. 「及ばざる事を望み、叶はぬ事を憂へ」(出典:徒然草(1331頃)一三四)
  4. ( 否定表現を伴って ) ある高い標準に達する(ことがない)。
    1. (イ) 程度の高いものと肩を並べる(ことができない)。
      1. [初出の実例]「およぶまじからむ際をだに、めでたしと思はんを、死ぬばかりも思ひかかれかし」(出典:枕草子(10C終)二六八)
      2. 「そのうつは物、昔の人に及ばず」(出典:徒然草(1331頃)五八)
    2. (ロ) あとから行なって、もとの状態をとりもどす(ことができない)。とり返しがつく(つかない)。
      1. [初出の実例]「高倉院かくれさせおはしましぬとききしころみなれ参せし世の事かすかすにおぼえて、およばぬ御事ながらもかぎりなくかなしく」(出典:建礼門院右京大夫集(13C前))
    3. (ハ) ( 「…に及ばず」の形で ) …のことができる(できない)。
      1. [初出の実例]「或は身ひとつ、からうじて逃るるも、資財を取り出づるにおよばず」(出典:方丈記(1212))
    4. (ニ) ( 「…に及ばず(及ばない)」の形で ) …のことが必要である(ことがない)。…するまでも(ない)。
      1. [初出の実例]「かかる身になる事は一旦の歎申にをよび候はねども」(出典:平家物語(13C前)灌頂)

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