デジタル大辞泉
「上る」の意味・読み・例文・類語
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のぼ・る【上・登・昇】
- 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
- ① 低い所から高い所へ移動する。また、移動して、ある物の上に乗る。
- [初出の実例]「梯立(はしたて)の 倉梯山は 嶮(さが)しけど 妹と能煩礼(ノボレ)ば 嶮しくもあらず」(出典:古事記(712)下・歌謡)
- ② 特に、霧や煙などが上に向かって動いたり、日や月が出て高い所に移り動いたりする。また、空中にあがる。
- [初出の実例]「志賀の白水郎(あま)の塩焼く煙風をいたみ立ちは不上(のぼらず)山に棚引く」(出典:万葉集(8C後)七・一二四六)
- ③ 水上、水中から陸上へ移る。
- [初出の実例]「この風いましばしやまざらましかば、しほのぼりて残る所なからまし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
- ④ 上流へ向かって進む。
- [初出の実例]「つぎねふや 山城川を 川のぼり 我が能煩礼(ノボレ)ば」(出典:古事記(712)下・歌謡)
- ⑤ 昔へさかのぼる。→上りての世。
- ⑥ 地方から都へ向かって行く。また、品物が都に送られる。京都の中で、内裏のある北の方へ行くのもいう。
- [初出の実例]「大君のみことかしこみ於保(おほ)の浦を背向(そがひ)に見つつ都へ能保流(ノホル)」(出典:万葉集(8C後)二〇・四四七二)
- ⑦ 天皇、皇后など、貴人の御座所近くへ参上する。宮中に出仕する。
- [初出の実例]「この御曹司には、人の見るをも知らでのぼりゐければ」(出典:伊勢物語(10C前)六五)
- ⑧ 地位が進む。昇進する。また、高い位につく。あがる。
- [初出の実例]「国の親となりて、帝王のかみなき位にのぼるべき相おはします人の」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
- ⑨ 古代、官吏登用試験の場に出る。
- [初出の実例]「たびたびのぼりたる学生のをのこども、ざえあるをのこども、てまどひをして」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
- ⑩ ( 血が頭にのぼる意 ) のぼせてぼうっとなる。気持が高まる。夢中になる。また、ふだんの落ち着きを失う。逆上する。
- (イ) 「気がのぼる」の表現の場合。
- [初出の実例]「むげにはづかしと思ひたりつるに、気ののぼりたらん」(出典:落窪物語(10C後)一)
- (ロ) 「のぼる」の主語が表わされない場合。
- [初出の実例]「隣のあげやにあそんでおりますは〈略〉のぼりかかってゐる天竺牢人共」(出典:浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)三)
- 「かほを真赤にして大きにのぼったやうす」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四)
- ⑪ 慢心する。得意になる。
- [初出の実例]「始は金銀ありまやの山と、高くのぼりし身なれ共」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)一)
- ⑫ 物事の度合がすすむ。また、値段が高くなる。あがる。
- [初出の実例]「随って騰貴(ノボ)れば随って制(おさ)へ〈略〉尚々尚々(まだまだまだまだ)と持こたふる程に」(出典:内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉八)
- ⑬ 数量が相当の程度に達する。
- [初出の実例]「一日の売上高八九円より十円に上ぼるとなり」(出典:日本の下層社会(1899)〈横山源之助〉四)
- ⑭ ことばとして表わされる。また、取り上げて示される。取り上げて扱われる。
- [初出の実例]「斯る類の事の言葉に上ぼりしは例なきことなりける」(出典:おとづれ(1897)〈国木田独歩〉上)
- 「時々下の家族が噂に上(ノボ)る事があった」(出典:永日小品(1909)〈夏目漱石〉過去の匂ひ)
- ⑮ ある事や現象が表面にでてくる。浮かぶ。現われる。
- [初出の実例]「柔(やはらか)な微笑が頬に上(ノボ)る」(出典:解剖室(1907)〈三島霜川〉)
- 「手持無沙汰の感じが強く頭に上(ノボ)った」(出典:行人(1912‐13)〈夏目漱石〉塵労)
上るの語誌
( 1 )多義語ではあるが、その基本的な意味は、その過程や経路に重点がおかれた上方への移動であり、意味の変遷もあまりみられない。ただ⑩(ロ)、⑪は、現在方言等には残るが、共通語では「のぼせる」が普通。
( 2 )→「あがる(上)」の語誌
か・る【上】
- 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙 日本音楽で、基本の音より高い調子にすることをいう。⇔める。
- [初出の実例]「若声(にゃくせい)はいまだわらんべ声にて、盤式がかりにかりて行く」(出典:習道書(1430))
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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