上る(読み)ノボル

デジタル大辞泉 「上る」の意味・読み・例文・類語

のぼ・る【上る/登る/昇る】

[動ラ五(四)]
下から上へ、低い所から高い所へ移る。⇔下る
㋐他より一段と高い所へ移り進む。「山に―・る」「演壇に―・る」
㋑そこを通って高い所に行く。「坂道を―・る」
㋒川の上流へ向かって進む。さかのぼる。「川を―・る」
地方から中央へ行く。都へ向かう。「京へ―・る」「江戸へ―・る」⇔下る
高い地位につく。昇進する。「大臣の位に―・る」
貴人の御座所近くへ参上する。
御前に人々所もなく居たるに、今―・りたるは少し遠き柱もとなどに居たるを」〈・二七六〉
太陽・月などが空高く現れる。また、上方へすすんで高い所に達する。「日が―・る」「気球が―・る」
(「頭に血がのぼる」などの形で)のぼせる。夢中になる。「頭に血が―・って見境がなくなる」
数量が、無視できない相当の程度に達する。「死傷者が数百人に―・る」
あるところで、取りたてて問題とされる。「世上の口に―・る」「話題に―・る」
がる[用法]
[補説]1㋐は「登る」、35は「昇る」、その他は「上る」と書くことが多い。
[可能]のぼれる
[下接句]ありの思いも天に登る口のに上るしびれ京へ上れ船頭多くして船山に上る血が上る
[類語](1上がる上昇上り詰める立ち上がる立ちのぼる這い上がるよじ登る駆け上がる/(5出る現れる差し昇る/(7及ぶ達する

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精選版 日本国語大辞典 「上る」の意味・読み・例文・類語

のぼ・る【上・登・昇】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. 低い所から高い所へ移動する。また、移動して、ある物の上に乗る。
    1. [初出の実例]「梯立(はしたて)倉梯山は 嶮(さが)しけど 妹と能煩礼(ノボレ)ば 嶮しくもあらず」(出典:古事記(712)下・歌謡)
  3. 特に、霧や煙などが上に向かって動いたり、日や月が出て高い所に移り動いたりする。また、空中にあがる。
    1. [初出の実例]「志賀の白水郎(あま)の塩焼く煙風をいたみ立ちは不上(のぼらず)山に棚引く」(出典:万葉集(8C後)七・一二四六)
  4. 水上、水中から陸上へ移る。
    1. [初出の実例]「この風いましばしやまざらましかば、しほのぼりて残る所なからまし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
  5. 上流へ向かって進む。
    1. [初出の実例]「つぎねふや 山城川を 川のぼり 我が能煩礼(ノボレ)ば」(出典:古事記(712)下・歌謡)
  6. 昔へさかのぼる。→上りての世
  7. 地方から都へ向かって行く。また、品物が都に送られる。京都の中で、内裏のある北の方へ行くのもいう。
    1. [初出の実例]「大君のみことかしこみ於保(おほ)の浦を背向(そがひ)に見つつ都へ能保流(ノホル)」(出典:万葉集(8C後)二〇・四四七二)
  8. 天皇、皇后など、貴人の御座所近くへ参上する。宮中に出仕する。
    1. [初出の実例]「この御曹司には、人の見るをも知らでのぼりゐければ」(出典:伊勢物語(10C前)六五)
  9. 地位が進む。昇進する。また、高い位につく。あがる。
    1. [初出の実例]「国の親となりて、帝王のかみなき位にのぼるべき相おはします人の」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
  10. 古代、官吏登用試験の場に出る。
    1. [初出の実例]「たびたびのぼりたる学生のをのこども、ざえあるをのこども、てまどひをして」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
  11. ( 血が頭にのぼる意 ) のぼせてぼうっとなる。気持が高まる。夢中になる。また、ふだんの落ち着きを失う。逆上する。
    1. (イ) 「気がのぼる」の表現の場合。
      1. [初出の実例]「むげにはづかしと思ひたりつるに、気ののぼりたらん」(出典:落窪物語(10C後)一)
    2. (ロ) 「のぼる」の主語が表わされない場合。
      1. [初出の実例]「隣のあげやにあそんでおりますは〈略〉のぼりかかってゐる天竺牢人共」(出典:浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)三)
      2. 「かほを真赤にして大きにのぼったやうす」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四)
  12. 慢心する。得意になる。
    1. [初出の実例]「始は金銀ありまやの山と、高くのぼりし身なれ共」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)一)
  13. 物事の度合がすすむ。また、値段が高くなる。あがる。
    1. [初出の実例]「随って騰貴(ノボ)れば随って制(おさ)へ〈略〉尚々尚々(まだまだまだまだ)と持こたふる程に」(出典:内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉八)
  14. 数量が相当の程度に達する。
    1. [初出の実例]「一日の売上高八九円より十円に上ぼるとなり」(出典:日本の下層社会(1899)〈横山源之助〉四)
  15. ことばとして表わされる。また、取り上げて示される。取り上げて扱われる。
    1. [初出の実例]「斯る類の事の言葉に上ぼりしは例なきことなりける」(出典:おとづれ(1897)〈国木田独歩〉上)
    2. 「時々下の家族が噂に上(ノボ)る事があった」(出典:永日小品(1909)〈夏目漱石〉過去の匂ひ)
  16. ある事や現象が表面にでてくる。浮かぶ。現われる。
    1. [初出の実例]「柔(やはらか)微笑が頬に上(ノボ)る」(出典:解剖室(1907)〈三島霜川〉)
    2. 「手持無沙汰の感じが強く頭に上(ノボ)った」(出典:行人(1912‐13)〈夏目漱石〉塵労)

上るの語誌

( 1 )多義語ではあるが、その基本的な意味は、その過程や経路に重点がおかれた上方への移動であり、意味の変遷もあまりみられない。ただ(ロ)は、現在方言等には残るが、共通語では「のぼせる」が普通。
( 2 )→「あがる(上)」の語誌


か・る【上】

  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙 日本音楽で、基本の音より高い調子にすることをいう。⇔める
    1. [初出の実例]「若声(にゃくせい)はいまだわらんべ声にて、盤式がかりにかりて行く」(出典:習道書(1430))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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