叡尊(えいぞん)(読み)えいぞん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「叡尊(えいぞん)」の意味・わかりやすい解説

叡尊(えいぞん)
えいぞん
(1201―1290)

鎌倉中期の律宗(りっしゅう)の僧。姓は源氏。大和(やまと)国(奈良県)添上(そうのかみ)郡箕田(みのた)の人。字(あざな)は思円(しえん)。諱(いみな)は興正菩薩(こうしょうぼさつ)。11歳で醍醐寺(だいごじ)睿賢(えいけん)に師事した。その後、恵操(えそう)、信経(しんぎょう)らに密教唯識(ゆいしき)を学んだが、空海(くうかい)の遺誡(いかい)を読み、戒律(かいりつ)による衆生済度(しゅじょうさいど)を決意して、戒如(かいにょ)(生没年不詳)、覚証(かくしょう)らに戒律を学ぶ。36歳のとき、東大寺大仏殿で覚盛(かくじょう)らと自誓受戒(じせいじゅかい)したのち、西大寺を拠点に各地で授戒した。また、殺生(せっしょう)禁断、慈善事業を行い、文殊(もんじゅ)信仰による非人(ひにん)救済も積極的に推進した。1262年(弘長2)北条実時(ほうじょうさねとき)招請によって鎌倉を教化、蒙古(もうこ)襲来における祈祷(きとう)、光明真言会(こうみょうしんごんえ)の興行を行って西大寺流の顕揚と発展を促した。著書には自叙伝感身学正記(かんじんがくしょうき)』や『梵網経古迹記文集(ぼんもうきょうこじゃくきもんじゅう)』『表無表章文集(ひょうむひょうしょうもんじゅう)』などがあり、『菩薩戒本宗要(ぼさつかいほんしゅうよう)』などの開板(かいばん)もしている。正応(しょうおう)3年8月25日、90歳で西大寺に没す。

[納冨常天 2017年5月19日]

『和島芳男著『叡尊・忍性』(1959/新装版・1988・吉川弘文館)』『奈良国立文化財研究所監修『西大寺叡尊伝記集成』(1956・大谷出版社/複製・1977・法蔵館)』

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