合せる(読み)アワセル

デジタル大辞泉 「合せる」の意味・読み・例文・類語

あわ・せる〔あはせる〕【合(わ)せる】

[動サ下一][文]あは・す[サ下二]《合うようにする、一致させる、が原義
(「併せる」とも書く)二つ以上のものを一つにする。
㋐二つ以上のものをつけて一つにする。「仏前に手を―・せる」「周辺の町村を―・せて市にする」
㋑心や力などをまとめて一つにする。一致させる。「心を―・せて事に当たる」「力を―・せて頑張る」
㋒付け加える。合計する。「三と四とを―・せると七」「人口は両村を―・せても三〇〇〇人」「今までの業績も―・せて考慮する」
㋓薬や食品などをまぜる。調合する。「二種の薬を―・せる」
二つのものを釣り合うようにする。
㋐食い違いのないように、他のものに一致させる。また、一致するように物事を行う。「音楽に―・せて歌う」「彼の予定に―・せる」「歩調を―・せる」「口裏を―・せてごまかす」
㋑釣り合うようにする。相応するようにする。調和させる。「環境に―・せた建築物」「洋服に靴を―・せる」
㋒異なる種類の楽器をいっしょに鳴らす。合奏する。「琴に尺八を―・せる」
㋓正しいかどうか、他と比べて調べてみる。照らし合わせる。「答えを―・せる」「原文と―・せる」
武器を互いに打ち合わせる。転じて、戦う。「チャンピオングローブを―・せる」
対抗させる。戦わせる。「練習試合で昨年の優勝校と―・せる」
夢と事実との合致を判断する。夢判断をする。
「さま異なる夢を見給ひて、―・するものを召して問はせ給へば」〈若紫
夫婦にする。めあわす。
伊勢の守もろみちのむすめを正明中将の君に―・せたりける時に」〈大和・三九〉
比べて優劣を争う。
「詩に歌を―・せられしにも」〈増鏡おどろの下〉
[下接句]顔が合わせられない顔を合わせる口を合わせる口裏くちうらを合わせる心を合わせる力を合わせる調子を合わせる帳尻ちょうじりを合わせる手を合わせるときを合わせる肌を合わせる・腹を合わせる・ひたいを合わせるを合わせるたなごころを合わすむちあぶみを合わす夢を合わす
[類語]合わす合わさる合併併合

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「合せる」の意味・読み・例文・類語

あわ・せるあはせる【合・会・逢・遭】

  1. 〘 他動詞 サ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]あは・す 〘 他動詞 サ行下二段活用 〙
  2. [ 一 ] ( 合 ) 物と物とを一つに重ねる。また、物と物とをつり合うようにする。
    1. 物と物とを寄せて一つにする。食い違わないようにする。
      1. (イ) 一方を他にうまく重ねる。また、すきまなくくっつける。
        1. [初出の実例]「いとうるはしう袖をあはせて、二人ばかり出で来て」(出典:枕草子(10C終)一四二)
      2. (ロ) (心、力、声、数量などを)うまく一致させる。
        1. [初出の実例]「これは、きみもひとも、身をあはせたりといふなるべし」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
        2. 「声あはせて舞ふほどもいとをかしきに」(出典:能因本枕(10C終)一四五)
        3. 「時計を号砲(どん)に合(アハ)せることを忘れた時には」(出典:雁(1911‐13)〈森鴎外〉一)
      3. (ハ) ある事に応じて行なう。ある事がなされる時に一致するように行なう。
        1. [初出の実例]「つばくらめ尾をさげていたくめぐるにあはせて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
        2. 「御いらへに、いかがはと啓するにあはせて」(出典:枕草子(10C終)一八四)
      4. (ニ) つけ加える。また、いっしょにする。一つにまとめる。合計する。
        1. [初出の実例]「もち月のあかさを十合せたるばかりにて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
        2. 「法師原、大中童子などあはせて七八十人ばかり」(出典:大鏡(12C前)四)
        3. 「越王、呉を并するのみならず、晉楚斉秦を平げて」(出典:三国伝記(1407‐46頃か)六)
      5. (ホ) (薬、薫香、食品などを)うまく混ぜる。調合する。
        1. [初出の実例]「おほやけ、わたくしのどやかなるころほひにたき物あはせ給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)梅枝)
        2. 「願はくは是れを読みて薬を合せ給へ」(出典:日本読本(1887)〈新保磐次〉四)
      6. (ヘ) ( 占いと事実とを一致させる意 ) 夢で、吉凶を判断する。うらなう。
        1. [初出の実例]「よき御男ぞいでこむとあはするに」(出典:伊勢物語(10C前)六三)
        2. 「様異なる夢を見給ひてあはする者を召して問はせ給へば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
      7. (ト) 釣りで、あたりに合わせて竿などを上げ、針を魚に引っかける。
        1. [初出の実例]「其処らで合せないと可(いけ)ませんよ、ソウーラ…餌を奪られましたらう」(出典:落語・佃島(1900)〈初代三遊亭金馬〉)
        2. 「鉤(はり)を合(ア)はせてぐっと引揚げた」(出典:茶話(1915‐30)〈薄田泣菫〉片腕)
    2. 状態や程度を適合させる。
      1. (イ) ある状態や時期、程度などにふさわしいようにする。また、相手の言動に応じてうまくあしらう。
        1. [初出の実例]「家のほど、身の程にあはせて侍るなりといらふ」(出典:枕草子(10C終)八)
        2. 「こいつはようござりませう〈略〉と、調子を合せけるを」(出典:滑稽本・古朽木(1780)三)
      2. (ロ) 二つ以上の音、声、動きなどを調和させる。調子をととのえる。
        1. [初出の実例]「かのひめ君、琵琶あはせてあそばしし」(出典:宇津保物語(970‐999頃)内侍督)
        2. 「足踏みを拍子(はうし)にあはせて」(出典:枕草子(10C終)一四二)
    3. ( 刃と石とを適合させる意か ) といで刃を鋭くする。
      1. [初出の実例]「髪そりを、よふあわせい」(出典:天理本狂言・忠喜(室町末‐近世初))
  3. [ 二 ] ( 会・逢・遭 ) 顔をあわせる。男女をあわせる。力と力とをぶつからせる。
    1. 対面させる。面会させる。また、(顔を)互いに向ける。
      1. [初出の実例]「われにかれみそかにあはせよ」(出典:落窪物語(10C後)一)
      2. 「主人は滅多に吾輩と顔を合せる事がない」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一)
    2. ある現象や事件などにぶつかるようにする。経験させる。
      1. [初出の実例]「住吉(すみのえ)の あが大御神 船の舳(へ)に うしはきいまし〈略〉荒き風 波に安波世(アハセ)ず 平けく 率(ゐ)て帰りませ もとの国家(みかど)に」(出典:万葉集(8C後)一九・四二四五)
      2. 「四海の民を一人も無く、飢渇(けかち)に合せんと思て」(出典:太平記(14C後)一二)
    3. 夫婦にする。結婚させる。めあわす。
      1. [初出の実例]「願はくは幡梭(はたひの)皇女を得て以て大泊瀬(はつせの)皇子に配(アハセ)(む)」(出典:日本書紀(720)安康元年二月(図書寮本訓))
      2. 「さりともつひに男あはせざらんやはと思ひて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    4. 武器を互いに打ちあわせる。立ち向かわせる。戦わせる。
      1. [初出の実例]「試に是の人を召して蹶速に当(アハセ)んと欲ふ」(出典:日本書紀(720)垂仁七年七月(熱田本訓))
      2. 「ちゃうどあはせてをどりのく」(出典:平家物語(13C前)一二)
      3. [その他の文献]〔日葡辞書(1603‐04)〕
    5. 鷹狩りで、鳥をねらって鷹を放つ。
      1. [初出の実例]「狩り暮らしあはする鷹のみねこえに行末しらぬほどぞかなしき」(出典:長秋詠藻(1178)上)
    6. 物と物、あるいは人と人とを比べる。比較する。また、物の優劣を比べる遊びをする。
      1. [初出の実例]「かぎりなくめでたく見えし君だち、このいまみゆるにあはすれば、こよなくみゆ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)嵯峨院)
      2. 「竹取のおきなに宇津保のとしかげをあはせて争ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)絵合)

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