品部(読み)シナベ

デジタル大辞泉 「品部」の意味・読み・例文・類語

しな‐べ【品部】

大化の改新前、特定職能をもって朝廷に仕えた人々の集団伴造とものみやつこに率いられて一定期間朝廷に参勤して労務に従い、産物を献上した。大化の改新大部分公民となった。忌部いんべ山部鍛冶部かじべなど。ともべ。
律令制で、諸官司に配属された特殊技術者の集団。ともべ。

とも‐べ【部】

しなべ(品部)

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精選版 日本国語大辞典 「品部」の意味・読み・例文・類語

とも‐べ【品部】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 令制前に、伴造(とものみやつこ)に管掌されて、種々の職能をもって大王に奉仕する人々の集団。各地に居住して農民と生活し一定の物品を貢納するものや、定期的に官に出仕して労役に服するものなどがある。貢納物や職能の名を冠して呼ばれ、また、管掌する伴造の名を冠して呼ばれることもある。伴造の勢力の強い時にはその私有民の様相を呈していた。令制下では解放されて大部分は公民となった。しなべ。
  3. 令制前の遺制が令制に組込まれて存置された技術者の集団。また、特別の職務に従事する者の集団。官司の中に伴部(とものみやつこ)と総称される専従者が置かれ、これに指揮されて生産・労役に従事する。品部は身分的に公民よりも下で良民と賤民の中間。たとえば、大蔵省に百済手部一〇人・狛部六人があって、それぞれに百済戸・狛戸が属し、典鋳司には一〇人の雑工部と称する伴部を置き、これに雑工戸が属していた。しなべ。
    1. [初出の実例]「古記及釈云。別記云。〈略〉村々狛人三十戸。宮郡狛人十四戸。大狛染六戸。右五色人等為品部」(出典:令集解(701)職員)

しな‐べ【品部】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 大化前代大和政権に貢納・奉仕した部集団の総称。特定の職能をもって宮に奉仕する人民の集団。それぞれ伴造(とものみやつこ)に率いられ、物資を貢献したり、一定期間朝廷に出勤して労力を提供したりする。忌部(いんべ)・山部・馬養部(うまかいべ)鍛冶部(かぬちべ)など、多くの部がある。ともべ。→部(べ)
  3. 令制下では、大化前代の品部の多くは解放されたが、解放されず令制諸官司に隷属した技術者集団。身分的には公民の下に位置し、雑戸(ざっこ・ぞうこ)と共に良賤の中間とされた。ともべ。

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改訂新版 世界大百科事典 「品部」の意味・わかりやすい解説

品部 (しなべ)

大化前代の品部は古訓に〈しなしなのとものを〉とあることから〈しなべ〉を学術用語として採用。また〈とものみやつこ〉という古訓もあることから〈ともべ〉ともいう。この品部については次の二つの考え方がある。(1)部の総称。複数の部に対する呼称。(2)大和朝廷に仕える伴造(とものみやつこ)の管理下におかれた職業部(馬飼部,鍛冶部(かぬちべ)など)と名代(なしろ)を合わせたもの。物資を貢納したり,朝廷に上番して労役に従事した。令制下になると,大化前代の職業部の一部を解放せず,諸官司に配属し特殊な労働や製品の貢納を義務づけた集団を品部とした。この内には図書寮紙戸(しこ)(借品部),雅楽寮楽戸(がくこ),造兵司雑工戸(ざつこうこ)(爪工・楯縫・幄作),鼓吹司鼓吹戸(つづみふえへ),主船司船戸(ふなべ),主鷹司鷹戸(たかかいべ),大蔵省狛戸(こまべ),漆部司漆部(ぬりべ),織部司染戸(そめへ),大膳職雑供戸(ざつくこ),大炊寮大炊戸(おおいべ),典薬寮薬戸(やくこ)・乳戸(にゆうこ),造酒司酒戸(さかへ),園池司園戸(そのへ),土工司泥戸(ぬりへ),主水司氷戸(もひとりへ)等があり,大宝令の官員令別記によると総数は借品部の紙戸を含めて2107戸,品部と明記されないが品部とみなすべきもの380戸,合計2487戸にのぼる。その居住地は畿内とその近国に限られる。彼らはおもに1戸より1丁が一定期間,もしくは臨時に官司に上番し労役に服するか,または一定量の製品の貢納を義務づけられ,その代償として戸内の課役の全部もしくは一部を免除され,また兵士にも充てられなかった。品部は雑戸(ざつこ)と併称されるところから雑戸とともに良賤の中間にあったとされるが,これは誤りで品部に卑賤の観念はなく,雑戸籍に付貫される雑戸と異なり公民と同じ戸籍に登載されている。奈良時代の後半,律令制解体の危機に直面すると,時の為政者は部民的色彩を多分に遺す品部を公民化することによって課役の増益をはかる政策に転じ,759年(天平宝字3)藤原仲麻呂政権下でまず世業の伝習を要しない低技術部門の,ついで事態がより深刻化した桓武朝に機構の縮小と並行してその他の品部の戸数削減をはかったとみられ,品部は平安初期にほとんど姿を消してしまう。
部民
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品部 (ともべ)

品部(しなべ)

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百科事典マイペディア 「品部」の意味・わかりやすい解説

品部【しなべ】

〈ともべ〉とも。(1)大和朝廷に特定の物資や労役を世襲的に提供させられた人びとの集団。品は多種多様の意。1.忌部,土師(はじ)部など毎年定額の物資を貢納する型,2.馬飼(うまかい)部,鍛冶(かぬち)部など官庁の工房や牧場に交代で勤務する型,3.舎人(とねり)部,隼人(はやと)など朝廷の下級文武官となる型などがある。大化改新でほぼ解放されたが,1型の一部は品部,2型の大半は雑戸(ざっこ)として再編された。(2)律令制度で諸官庁に世襲的に隷属した下級技術者。(1)の1型品部の一部。《令集解(りょうのしゅうげ)》によると戸数約2000。8世紀前半から技術普及に伴って解放されはじめ,平安初期にほとんど姿を消した。
→関連項目来目部/久米部伴造

品部【ともべ】

品部(しなべ)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「品部」の解説

品部
しなべ

「ともべ」とも。朝廷により組織された特殊な部。大化前代の品部は,「日本書紀」垂仁39年条の伝承にある楯部(たてぬいべ)・神弓削部(かむゆげべ)・玉作部(たまつくりべ)などの10種の品部が著名。当時はさまざまの職業部が,伴造(とものみやつこ)に管掌されて朝廷に物資と労働力を提供し,伴造の経済的基盤となったらしい。最近では名代(なしろ)の部も品部の一種とする説がある。律令時代には大化前代の品部の一部が残存し,たとえば図書(ずしょ)寮の紙戸50戸,造兵司の楯縫(たてぬい)36戸,漆部司(ぬりべのつかさ)の漆部15戸のように,伝統的諸官司に配備されたものとするのが有力な学説である。彼らは所属官司に上番して特殊な労役に服し,調・庸・雑徭(ぞうよう)の全部または一部を免除された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「品部」の意味・わかりやすい解説

品部
ともべ

令制の雑色人。「しなべ」とも読む。大化前代の職業部は,改新後解放されて公民となったが,その一部は令制下において,品部として官庁に所属した。身分は公民であるが,良賤の中間に位置した。雅楽寮の楽戸,造兵司の楯縫戸,鼓吹司の鼓吹戸,主船司の船戸,主鷹司の鷹戸,大蔵省の狛戸・衣染戸・沓縫戸,漆部司の漆部戸,織部司の錦綾織戸,大膳職の雑供戸,大炊寮の大炊戸,典薬寮の薬戸,造酒司の酒戸,園池司の園戸などがあり,調と雑徭または雑徭のみを免除された。

品部
しなべ

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旺文社日本史事典 三訂版 「品部」の解説

品部
しなべ

律令制下の最下層の公民
氏姓社会の品部 (ともべ) の系譜をひき,大化の改新(645)後,良民とされた特殊技術者。漆部司の漆部,図書寮 (ずしよりよう) の紙戸などのように朝廷の諸官司に属し物品を生産した。

品部
ともべ

大化前代、大和政権や大王家が所有した部
伴造 (とものみやつこ) の統率下のもとに,特定の職業・技術をもって貢納し,また賦役を負担した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「品部」の意味・わかりやすい解説

品部
ともべ

品部・雑戸

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世界大百科事典(旧版)内の品部の言及

【品部】より

…大化前代の品部は古訓に〈しなしなのとものを〉とあることから〈しなべ〉を学術用語として採用。また〈とものみやつこ〉という古訓もあることから〈ともべ〉ともいう。…

【氏姓制度】より

…彼らは朝廷をはじめ,天皇,后妃,皇子らの宮,さらに臣,連らの豪族に領有・支配される部民などがまずあげられるが,このような階層には,まだ氏姓は及んでいなかったとみられよう。ただ,そのなかでは,朝廷に出仕して,職務の名を負う品部(しなべ),王名,宮号を負う名代(なしろ)(名代・子代),屯倉(みやけ)の耕作民である田部(たべ)などの先進的な部民に,共同体のなかの戸を単位に編成されるもの,6世紀には,なんらかの籍帳に登載されるものが現れたことが予測され,比較的はやく氏姓を称するにいたったのであろう。それにたいし,豪族の支配下にあった民部(かきべ)は,在地の族長を介して,共同体のまま部に編入し,族長をへて貢納させる形のものが多く,各戸に豪族名を付して,某部・某人部などと称することはなかったと思われる。…

【部民】より

…もともと宮廷には伴(とも)・伴緒(とものお)とよばれる官人の一団があり,内廷の職務を分掌していたが,5,6世紀ごろ朝鮮三国から多くの帰化人を迎え,広範な分掌組織をともなう外廷を成立せしめた。その上部に官人の統率者としての臣(おみ)・連(むらじ)・伴造(とものみやつこ)という階層,その下に実務を担当する百八十部(ももあまりやそのとも),そして各職務に応じ生産・貢納に従う品部(しなべ∥しなじなのとも)という,上下の統属関係にもとづくピラミッド型の官司制を成立させたと考えられる。 まず伴として,畿内の中小豪族を任ずる殿部(とのもり)(天皇の乗輿,宮殿の調度,灯火をつかさどる),水部(もいとり)(供御の清水や氷をつかさどる),掃部(かにもり)(殿内の掃除をつかさどる),門部(かどもり∥かどべ)(宮殿の諸門の守衛をつかさどる),蔵部(くらひと)(内蔵,大蔵の出納をつかさどる),物部(もののべ)・佐伯部(さえきべ)(軍事・警察,刑罰をつかさどる)などがあった。…

※「品部」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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