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『大学』『論語』『孟子(もうし)』『中庸(ちゅうよう)』の儒教の四経典。朱子(朱熹(しゅき))は『礼記(らいき)』の大学篇(へん)、中庸篇を取り出して『大学章句』『中庸章句』を書き、『論語集註(しっちゅう)』『孟子集註』を書いて教説の中核に据えた。そして自らの注釈に従って「初学の徳に入るの門」の『大学』に始まり、『論語』『孟子』と進み、孔子(孔丘)以来の心法を記載する『中庸』に至り、そののちに六経(五経)を学べと指示した。この学習順序は書籍の難易という点からいわれており、五経を軽視するものではないが、旧来の五経中心の学問にかわって朱子学では四書中心へと経書の比重が移動することになった。朱子学の普及に伴い、元(げん)代中期には官吏資格試験(科挙(かきょ))では四書と、五経のうちの一書について朱子学的解釈を主とする出題が課され、明清(みんしん)代ではもっぱら朱子学的解釈によると規定された。明代には宋元(そうげん)の朱子学的四書説を集成した『四書大全』が編纂(へんさん)頒布され、科挙の解答基準として国定教科書的な権威を保つようになった。元明代の思想学説は四書に基づくことが多く、明代の独創的思想家王陽明(ようめい)(守仁(しゅじん))の学説も四書の新解釈から得られている。明代中期以降には陽明学や仏教思想を導入した四書の新解釈が現れ、章句・集註や大全の権威は低下し、科挙の答案はこれによらないこともあった。清代にはふたたび五経を重んずる学風が現れ、四書の地位は低下したが、科挙ではやはり四書章句・集註が重視された。わが国では江戸時代に朱子学的注釈から明代の注釈に至るまでよく読まれ、和刻本も多量に出版されている。
[佐野公治]
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
中国の《論語》《孟子》《大学》《中庸》の総称。〈学庸論孟〉ともいい,儒教思想の真髄を得たものとして宋の朱子学以来尊重されてきた。《大学》《中庸》はもと《礼記(らいき)》中の2編であったが特に重視されるようになり,朱熹に至って論孟に合わせて《四書章句集注》が作られた。孔子と孟子の言葉の間に曾子の言葉《大学》と子思の言葉《中庸》をはさんで,聖人の教えの伝統(道統)を明らかにしようというのが,朱熹の意図であった。煩雑で難解な五経よりも,簡潔でかつ要点を得た思索的な内容が当時の好みに合致し,さらに朱子学が科挙の試験科目になると,四書の勉学は必須のものとなった。《四書大全》36巻は明の胡広らの編纂(1415)で,その受験参考書として有名であるが,内容は粗雑である。四書は江戸時代にも広く読まれ,日本人の教養を育てるうえでも重要な役割を果たした。
執筆者:金谷 治
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