デジタル大辞泉 「中庸」の意味・読み・例文・類語
ちゅう‐よう【中庸】
1 かたよることなく、常に変わらないこと。過不足がなく調和がとれていること。また、そのさま。「
2 アリストテレスの倫理学で、徳の中心になる概念。過大と過小の両極端を悪徳とし、徳は正しい中間(中庸)を発見してこれを選ぶことにあるとした。
[類語]中間・
儒教の経典。朱子学の〈四書〉の一つ。もともと《礼記(らいき)》のうちの一編で全文3500余字。古来,孔子の孫の子思の作とされる。本来の《中庸》は前半部のみで,後半部は《誠明書》という別の書だという説や,秦代の子思学派の《中庸説》という解説書だとする武内義雄の説,などがある。武内説は伊藤仁斎の説を発展させたものである。朱熹(子)は《中庸》を儒教哲学の最高峰とたたえてとくに《礼記》からぬき出して〈四書〉の一つに列し,全体を33章に分かち,自己の哲学によって注釈を書いた(《中庸章句》)。内容は,冒頭にまず性・道・教の3概念を提出し,道の絶対性を主張し,慎独,未発の中と已発の和,究極としての〈天地位し万物育す〉る境地を説き,ついで形而上的〈中〉の実践道徳として〈中庸〉の徳・鬼神・誠(天道,人道)を説き,最後に道の形而上性を強調して終わる。雑然としているようであるが,一貫して道(中)の形而上性と中庸の徳の相即性を論じたものだというのが朱子学の見方である。
執筆者:島田 虔次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
もと『礼記(らいき)』の第31篇(ペん)。儒教の教理を述べた書。孔子の孫、子思(しし)の作ともいうが、後世の付加も多く、全篇の成立は秦(しん)代か漢代ごろとされる。古くから独立した一書としても重んじたが、朱熹(しゅき)(朱子)は、孔子門下に伝授された心法を子思が記録して孟子(もうし)に伝えた書とし、道統の継承の線上に位置づけ、四書の一つとして重んじ、旧来の分段を改めて33章に分け、自らの哲学に基づいて『中庸章句』を書いた。それによれば、中庸とは不偏不倚(ふき)、過不及のない平常の道理で、道理は天に基づいて人間に本性として賦与される。本性に従って存養省察して喜怒哀楽の中和を得れば、天地は順応し万物は生育し、人間と自然の統一調和が保たれる。この根本理念がさらに詳細に説明されるとみるのである。本性や存養のとらえ方には、後世には異論もみられたが、『中庸』が儒教教理の書として重んじられたことに変わりはない。
[佐野公治]
『宇野哲人訳注『中庸』(講談社学術文庫)』
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出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…中国の《論語》《孟子》《大学》《中庸》の総称。〈学庸論孟〉ともいい,儒教思想の真髄を得たものとして宋の朱子学以来尊重されてきた。…
※「中庸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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