国会開設請願運動の最盛期における中心的な運動組織。1880年3月大阪で開かれた愛国社第4回大会には,愛国社加盟の各結社のほか多数の全国有志が参加して,組織を国会期成同盟と称することや請願書の提出を議決し,国会期成同盟規約を決定した。翌4月,片岡健吉,河野広中が全国2府22県約9万7000名の請願委託者を代表して〈国会を開設するの允可を上願する書〉を提出した。この請願書は,120件に及ぶ国会開設請願書・建白書の中でも,9項目の請願理由を列挙した詳細なもので,その根拠が,天賦の人権,五ヵ条の誓文の国是,兵役ならびに地租負担者の権利,内政および財政の混乱,国権回復など広範にわたっていたことを示している。1880年は開設請願運動の最盛期だったが,11月東京で開かれた国会期成同盟第2回大会(大日本国会期成有志公会と称した)には,全国約13万5000名の請願委託者の代表が参集し,国会期成同盟合議書,遭変者扶助法などを議定し,また翌年10月の東京集会には各府県国郡の戸数の半数以上の賛成を得て上京することや同盟各社が憲法見込案を持参することを決定した。同盟の東京本部は,国会に関する情報交換のために国会期成同盟本部報を配布したが,そのなかには各地の活動状況や東京の情勢のほか,嚶鳴社の立案した憲法草案も記載されて,各地での憲法案討議の参考に供された。また第2回大会において,自由政党組織の提案があり,期成同盟とは別個に,自由党の準備組織がつくられた。81年10月の第3回大会は,開拓使官有物払下事件で沸騰する政局の下で,いわゆる明治14年の政変の直前から開かれたが,まず自由党と国会期成同盟の合同を協議し,さらに国会開設の詔勅(10月12日)発布に対応して自由党の組織結成を急ぐこととなった。こうして期成同盟はいちおうその目的を達したが,なお全国過半数の参加,憲法案の討議などの懸案は,果たされないままに終わった。
→自由民権
執筆者:永井 秀夫
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国会開設請願運動の全国的政治結社。1880年(明治13)3月15日に開催された愛国社第4回大会で、愛国社とは別に、全国の地方政社の運動をつなぐ組織として17日に発足し、国会開設をかちとるまで会を存続させることを決めた。4月8日、2府22県、9万6924人の委託を受けた「国会を開設するの允可(いんか)を上願する書」が起草され、片岡健吉と河野広中(こうのひろなか)が代表で、太政官(だじょうかん)と元老院に提出したが、両方とも受理されなかった。これに激怒した全国各地の民権派は続々と請願や建白の運動を始めたが、いずれも却下されるか、回答を得ることができなかった。
同年11月、東京で開かれた国会期成同盟第2回大会では2府22県13万人を代表する64人が集まり、関東や東北などからも参加があり、運動は拡大した。この大会では、弾圧を受けた者の救援を図るための遭変者扶助法が定められ、また翌81年(明治14)の大会までに、加盟各社が憲法見込案を持参し研究する合議がなされた。これを受けて各地で憲法起草の取り組みが始まったが、明治十四年の政変が起こり、ついに憲法草案の審議をすることなく、国会期成同盟は自由党結成への準備会と合流し、政党組織へと変わっていった。
[新井勝紘]
『内藤正中著『自由民権運動の研究』(1964・青木書店)』▽『後藤靖著『自由民権』(中公新書)』▽『永井秀夫著『日本の歴史25 自由民権』(1976・小学館)』▽『色川大吉著『自由民権』(岩波新書)』▽『江村栄一著『自由民権革命の研究』(1984・法政大学出版局)』
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明治期の自由民権運動の過程で結成された国会開設を目標とする運動組織。1878年(明治11)国会開設・地租軽減・条約改正などを運動目標として再興された愛国社は,80年3月に大阪で第4回大会を開催。大会出席者は,国会期成同盟を結成し,大会を国会期成同盟の第1回大会として継続。国会開設がなるまで同盟を解かないなどとする期成同盟規約を作成,国会開設の願望書の提出を図った。同年秋の第2回大会では,名称を大日本国会期成有志公会とし,憲法見込案の起草などを決めた。81年10月の第3回大会で自由党結党を協議しているさなか国会開設の勅諭が発布された。
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…79年11月の第3回大会には18県21社,約9万名の総代90余名が参加し,国会開設運動を行うことを決議した。翌年3月の第4回大会には2府22県8万7000余名の総代114名が結集し,名を国会期成同盟と改め,片岡健吉と河野広中を願望書捧呈委員にえらび,4月17日に〈国会を開設するの允可を上願する書〉を政府に提出した。【後藤 靖】。…
…運動は初め板垣らの組織した立志社のような士族結社の運動としておこり,連合組織としての愛国社(1875年結成,まもなく解体して78年再興)を生んだが,やがて各地で豪農・豪商を中心とする勢力が地方民会を要求し,府県会議員として登場してこの運動をおしひろげ,これに教員・新聞記者・代言人などの知識人や青年たちが加わって,広範な国民的運動となった。80年3月の愛国社第4回大会には,従来加盟の各結社のほかに,多数の全国有志が参加して国会期成同盟を発足させ,国会開設の上願書を提出した。国会開設を要求する根拠として各請願書・建白書があげているのは,天賦人権論から五ヵ条の誓文にいたる広範なものであるが,その中で一般的に見られるのは,租税・兵役の負担者である国民の財政共議権の要求であり,また内政・財政・外交の諸問題を打開するには国会開設以外にないという観点であった。…
※「国会期成同盟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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