つち‐ぐも【土蜘蛛】
[1] 〘名〙
② 古代、中央政府の
威徳に服しない
土着の人々を、蔑視して呼んだ称。穴居して、性凶暴であったという。神話、伝説に見える。
※
古事記(712)中「忍坂の大室に到りたまひし時、尾生る土雲〈訓みて具毛
(グモ)と云ふ〉八十建、其の室に在りて待ち伊那流
(いなる)」
[2]
[一] (金春・
宝生流は「土蜘」と書く) 謡曲。
五番目物。各流。作者不詳。
病床に伏す
源頼光の
枕元に僧形の者が訪れ、千筋の糸を投げて苦しめるので頼光が刀で切りつけるとたちまち姿を消す。頼光の声に驚いてかけつけた
武者が、従者たちと血の流れた跡をたどって古塚を見つけ、岩陰から出てきたさきの土
蜘蛛の精を退治する。
[二] (土蜘) 長唄。大薩摩物。三世杵屋勘五郎作曲。文久二年(
一八六二)
江戸芝末広御殿で
初演。常磐津「蜘蛛の糸」の
改作で、上中下三段より成り、
上段(通称「切
」)だけが現在でも演奏される。
[三] (土蜘)
歌舞伎所作事。長唄。河竹黙阿彌作。三世杵屋正次郎作曲。初代花柳寿輔振付。明治一四年(
一八八一)
東京新富座初演。(一)に取材した松羽目物。
新古演劇十種の一つ。
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デジタル大辞泉
「土蜘蛛」の意味・読み・例文・類語
つち‐ぐも【土蜘=蛛】
1 ジグモの別名。
2 古代、大和朝廷の命に従わず、異民族視された辺境の民の称。
[補説]曲名別項。→土蜘蛛
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土蜘蛛 (つちぐも)
古代,ヤマト王権の勢力に従わない在地土着の首長ないし集団を呼んだ名称。土雲とも書く。その内容については土窟に住む農民説,蝦夷説,国津神説,などの諸説がある。土蜘蛛の所伝は大和をはじめ,東は陸奥から西は日向におよぶ広範囲にみられ,ヤマト王権の征討伝承の中に抵抗する凶賊として登場し,土窟に穴居して未開の生活を営み,凶暴であるとして異民族視されている。征討伝承は《古事記》《日本書紀》にあり,常陸,豊後,肥前の各風土記や摂津,越後,肥後,日向諸国の同逸文にも各地土着の土蜘蛛の記事がみえる。《日本書紀》神武即位前紀は土蜘蛛の身が短く手足が長いとしており,同景行紀では石窟に住み皇命に従わなかったとある。また《常陸国風土記》は土窟に穴居したとし,《摂津国風土記逸文》にもつねに穴居することから土蜘蛛と賤称したとする。しかし,これらの習俗はむしろ土蜘蛛の名から作られたものか。
執筆者:佐藤 信
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土蜘蛛
つちぐも
能の曲名。切能物 (→尾能 ) 。各流にあり,宝生,金春流では『土蜘』と書く。作者未詳。小書 (こがき) に「入違之伝」「黒頭」 (観世) ,「千筋之糸」 (金剛) がある。『平家物語』剣の巻により,有名な曲で,浄瑠璃,歌舞伎にも取入れられている。
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土蜘蛛 つちぐも
伝承上の妖怪。
朝廷にしたがわなかった先住民をよんだ名。「古事記」「日本書紀」などにみえる。背はひくいが手足はながく,オオカミの性質とフクロウの心をもつという。中世になると妖怪変化の象徴とされ,能,歌舞伎などの題材にとりあげられた。
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土蜘蛛
〔長唄〕
つちぐも
歌舞伎・浄瑠璃の外題。- 作者
- 河竹新七(2代)
- 初演
- 明治14.6(東京・新富座(梅寿追善興行))
土蜘蛛
(通称)
つちぐも
歌舞伎・浄瑠璃の外題。- 元の外題
- 花盞大江山
- 初演
- 弘化2.11(江戸・中村座)
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報