精選版 日本国語大辞典 「地頭請」の意味・読み・例文・類語
じとう‐うけヂトウ‥【地頭請】
- 〘 名詞 〙
- ① =じとううけしょ(地頭請所)
- ② 地頭⑤が保証・管理などを行なうこと。
- [初出の実例]「出代り奉公人を皆地頭請にせば、宗門手形は在所にて済ことなる故」(出典:政談(1727頃)四)
鎌倉時代,荘園・公領において,地頭が豊凶にかかわりなく定額年貢の貢納を請け負うこと。鎌倉幕府の地頭に対する恩賞給与,あるいは荘園領主や国司と地頭との所領や権限等をめぐる紛争解決の手段として実現した場合が多い。これによって地頭は荘園・公領の支配・管理権を事実上掌握し,その結果地頭の封建領主化と荘園制の解体が促進されたとみなされている。その成立の形態は,(1)武家(将軍家,北条氏)の口入(くにゆう)によるもの,(2)寄進地系荘園における下司(げし)職が転化・継承されたもの,(3)荘園領主・国司との紛争解決のため当事者間での私的契約にもとづいて成立したもの,などに分類できる。(1)(2)は鎌倉初期,主として東国・北陸地方に成立した事例が多く,(3)は鎌倉中期以降,比較的西国地方に成立した事例が多い。請所地頭の権限は一様ではなく,定額年貢貢納の代償として下地管理・検断・検注の諸権限を掌握しているものもあるが,力関係によって地頭の権限がいちじるしく制約されている例もあり,荘園領主・国司側の申立てによって請負契約が解除されたものもある。幕府は(1)の口入型地頭請は終始保護を加えたが,(3)の私契約型地頭請については,一貫した保護政策を欠き,紛争にさいしては当事者間の話合いにゆだねられた例が多い。
→請所 →下地中分
執筆者:佐々木 銀弥
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荘園(しょうえん)領主が地頭に荘園管理を全面的にゆだねるかわりに、毎年の豊凶にかかわらず一定の年貢の進納を請け負わせる方法のこと。「地頭請所(うけしょ)」ともいう。この一定額の年貢を請料(うけりょう)という。鎌倉初期からみられる現象であるが、一般的な成立は鎌倉中期から後期にかけてである。鎌倉幕府設置の地頭は、その権限を乱用、荘園領主に進納すべき年貢を不法抑留することが多くなった。その年貢抑留の表面上の理由は、水損、風損、干損などの天災による収益の減少であるが、荘園領主はそのたびに地頭と紛争を起こし、幕府への訴訟によって解決を図った。そこでこの紛争解決の煩わしさから免れるためにとられた方法の一つが、この地頭請である。地頭請には、荘園領主と地頭とが直接に私的契約を結んで成立する請所と、幕府口入(くにゅう)の請所があった。後者は、幕府が地頭優遇策として、荘園領主側に請所とすることを要求して成立したもの。このような地頭請は、荘園に限らず国衙(こくが)領でも行われた。このことにより地頭は在地における事実上の支配権を合法的に掌握し、種々の公事(くじ)課役(雑税)を自由に賦課して在地への支配を強化していった。さらに、契約している請料の滞納・未済なども多く、地頭請の結果、地頭の封建領主化が進んだ。
[安田元久]
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
鎌倉中期以後,豊凶にかかわらず毎年一定額の年貢を荘園領主に納入する条件で,荘園の管理が地頭に一任された制度。請けられた荘園を請地という。鎌倉中期になると,地頭の年貢抑留がひどくなり,荘園領主と地頭の相論が多発。地頭請は,こうした地頭の動きを一定限度でくいとめるために,荘園領主側から提起された。反面,これによって領主の荘園現地に対する実態把握の努力は放棄され,地頭の下地(したじ)支配が強化されるきっかけにもなった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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