四条
〈京都・山城寺院神社大事典〉
以後本尊の霊験が朝野に広まり、承暦年中(一〇七七―八一)に白河天皇の行幸、天承年中(一一三一―三二)に鳥羽上皇の御幸があり、白河天皇より地蔵院の寺号を受けた。天養元年(一一四四)後白河院の勅命で二条天皇誕生を賀して七日間の本尊開帳を行い、道俗貴賤の信仰を集めたという。次いで建保元年(一二一三)前大和守平宗平は、五条坊門壬生の地から坊城の現在地に寺地を移し、伽藍を建立し寺領を寄付した。正嘉元年二月二八日、一山ことごとく類焼したが、宗平の子左衛門尉政平によって伽藍復旧事業が興され、地蔵菩薩・四天王像を安置する五間四面の本堂、丈六阿弥陀如来像を安置する三間四面の阿弥陀堂のほか、二間四面の釈迦堂、別殿・宝塔・大門が建立され、地蔵院の名を改めて宝幢三昧寺と号し、正嘉二年八月本尊遷座、正元元年惣供養を遂げたと伝える。なお正元元年の惣供養は先に掲げた「百錬抄」の記述で確かめられる。またこの罹災に伴う復興事業には、平政平の尽力とともに律僧で奈良唐招提寺にも学んだ融通念仏の円覚十万上人導御の募財活動が大いに力があった。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
京都市中京(なかぎょう)区壬生梛(なぎ)ノ宮(みや)町にある律宗の別格本山。地蔵院とも宝幢三昧寺(ほうどうさんまいじ)とも称し、通称は壬生地蔵。本尊は地蔵菩薩(ぼさつ)。開山は鑑真和上(がんじんわじょう)。『壬生寺縁起』によれば、三井(みい)寺の僧快賢(かいけん)が仏師定朝(じょうちょう)に三尺(約1メートル)の地蔵菩薩像をつくらせ、これを本尊として1005年(寛弘2)に当寺を開いたという。その後、白河(しらかわ)天皇から地蔵院の勅号を賜り、1213年(建保1)に平宗平(むねひら)が五条坊門壬生から現在地に移した。1257年(正嘉1)に伽藍(がらん)は全焼したが、宗平の子平政平(まさひら)が融通念仏勧進聖道御(ゆうずうねんぶつかんじんひじりどうご)の協力を得て復興した。現在毎年4月21~29日に行われている壬生大念仏会(え)(壬生狂言)は円覚上人(しょうにん)(道御)の融通念仏による勧進法会が起源とされている。1811年(文化8)再建の本堂は、1962年(昭和37)に焼亡し、このとき本尊地蔵菩薩像も焼失した。本堂は1967年再建され、さらに1970年唐招提寺(とうしょうだいじ)から木造地蔵菩薩立像(国重要文化財)を本尊に迎えた。
[水谷 類]
京都市中京区にある律宗の別格本山。宝幢三昧(ほうどうさんまい)院,地蔵院とも号し,通称は壬生地蔵。鑑真の創建とも伝えるが,縁起では,991年(正暦2)園城(おんじよう)寺(三井寺)快賢が仏師定朝に地蔵菩薩像を造らせ,1005年(寛弘2)堂舎を建てて小三井寺と号したのに始まるという。鎌倉中期に当寺を中興した円覚上人は,勧進のため融通大念仏を行い,戒律と念仏を貴賤にすすめたが,このとき児女にまで念仏の妙理を理解させるために始めたと伝えるのが壬生狂言である。毎年4月に鰐口・締太鼓と笛で行う面をつけた無言劇で,2月の節分会とともに境内は参詣者で大いににぎわう。近世の寺領46石。江戸時代を通じて洛中第一の地蔵の霊験で知られたが,本堂・本尊とも1962年に焼失,現在の堂舎は67年の再建で,本尊は唐招提寺から迎えたものである。なお寺の近辺に新撰組壬生屯所址があり,この関係で寺内に芹沢鴨,平山五郎,野口健司など隊士の墓がある。
執筆者:藤井 学
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… 地獄で亡者を責める役柄の鬼は,千葉県匝瑳(そうさ)郡光町の広済寺で行われる鬼来迎(きらいごう)に登場するが,この鬼に責めてもらった病弱な者は,鬼の持つ霊力によって健康になるという信仰もある。地獄の鬼は京都市の壬生(みぶ)寺に伝承されている大念仏狂言の《賽の河原》《餓鬼角力(がきずもう)》にもみられる。この他,鬼は田楽や能・狂言にも登場する。…
…民俗芸能。京都市中京区梛宮(なぎのみや)町の壬生寺に伝えられる無言の念仏狂言で,大念仏狂言,融通大念仏狂言ともいう。国指定重要無形民俗文化財。…
※「壬生寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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