大膳職
だいぜんしき
古代の中央官庁。宮内省(くないしょう)の管轄で、諸国の調(ちょう)の品物を出納し、宮中の官人の食事や朝廷での会食の調理を担当した。正五位(しょうごい)の大夫(だいぶ)(長官)以下役人4人、主醤(ひしおのつかさ)・主菓餅(くだもののつかさ)各2人、調理をする膳部(かしわで)160人、使部(つかいべ)30人、直丁(じきちょう)2人、駈使丁(くしちょう)80人、ほかに鵜飼(うかい)や網引(あびき)(網曳)などの雑供戸(ざつくこ)が所属した。平城宮跡の調査により、奈良時代の大膳職は第一次大極殿(だいごくでん)地区の北側と推定されている。巨大な井戸3か所とそれを囲む建物跡44棟、土坑約20、膨大な量の食器類とともに、地方からの貢進物である米・クルミや塩・海藻・ウニなどの海産物の荷札木簡が多数出土しており、これらの食料がここで調理されたことがわかる。また小豆・醤(ひしお)・酢・「未醤(みそ)」等を請求した文書木簡もある。
[岩本次郎]
『奈良文化財研究所編・刊『平城宮発掘調査報告Ⅱ・Ⅳ』(1962・1966)』▽『直木孝次郎著「平城宮跡出土の木簡と大膳職」(『奈良時代史の諸問題』所収・1968・塙書房)』
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大膳職【だいぜんしき】
宮内省所属の令制官司。和訓は〈おおかしわでのつかさ〉。大宝令によりそれまでの膳職が大膳職と天皇の供御(くご)を司る内膳司に分離した。職掌は官人の副食・調味料の調理・製造・供給など。職員は大夫(だいぶ)・亮(すけ)・大進(だいじょう)・少進・大属(だいさかん)・少属各1人ほか。《延喜式》では内廷関係などに職掌が狭められている。→大宝律令/養老律令
→関連項目贄
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だいぜん‐しょく【大膳職】
〘名〙
① 明治一九年(
一八八六)二月四日、宮内省に置かれた
役所で、供御
(くご)・宴饗・
賜饌のことをつかさどり大夫・亮などの職員がいた。同二二年七月の官制改正により、膳部長、同副長、膳部、膳部補などを加えて、機構が整備されたが、同四〇年一一月に
大膳寮と改称。大膳。
※明治職官沿革表(1886‐94)二「大膳職 大夫 一人
勅任」
だいぜん‐しき【大膳職】
〘名〙
① 令制での官司の一つ。宮内省に属し、宮中の食饌を作り、配膳することをつかさどる。職員に大夫、亮、大少進、大少属各一人の四等官のほかに、主醤二人、主菓餠二人、膳部一六〇人その他がある。おおかしわでのつかさ。大膳。
※続日本紀‐和銅六年(713)六月癸丑「始置二大膳職史生四員一」
おおかしわで‐の‐つかさ おほかしはで‥【大膳職】
〘名〙 令制での官司の一つ。宮内省に属し、宮中の膳のことをつかさどる。職員に大夫、亮、大少進、大少属各一人の四等官のほかに、主醤二人、主菓餠二人、膳部一六〇人その他がある。だいぜんしき。〔二十巻本
和名抄(934頃)〕
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だいぜん‐しき【大膳▽職】
律令制で、宮内省に属し、宮中の食事や儀式の饗膳などをつかさどった役所。おおかしわでのつかさ。
おおかしわで‐の‐つかさ〔おほかしはで‐〕【大▽膳▽職】
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だいぜんしき【大膳職】
令制の宮内省所属の官司。和訓は〈おほかしはてのつかさ〉。職員は,大夫(長官),亮(次官),大進・少進(判官),大属・少属(主典)各1人,主醬,主菓餅(品官)各2人,膳部(かしわで)(伴部)160人,雑供戸(品部)等。朝廷における恒例・臨時の職務に携わる官人等には,俸禄とは別に主食,副食,調味料が素材または調理品の形で給食されるが,主食は大炊寮が担当し,大膳職は副食,調味料の調達,製造,調理,供給を担当した。
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世界大百科事典内の大膳職の言及
【大膳職】より
…職員は,大夫(長官),亮(次官),大進・少進(判官),大属・少属(主典)各1人,主醬,主菓餅(品官)各2人,膳部(かしわで)(伴部)160人,雑供戸(品部)等。朝廷における恒例・臨時の職務に携わる官人等には,俸禄とは別に主食,副食,調味料が素材または調理品の形で給食されるが,主食は大炊寮が担当し,大膳職は副食,調味料の調達,製造,調理,供給を担当した。ただし,《延喜式》の段階では,神仏寺料等,節会料等の供給のほかは親王以下采女等までの内廷関係への月料支給に職掌が狭められている。…
【平城宮】より
…このほか,この地域を中宮とする説もある。
[官衙区域]
平城宮内で見つかった官衙区域のうち名称が推定できたものは,馬寮(めりよう),大膳職(だいぜんしき),陰陽寮(おんみようりよう),式部省,兵部省,民部省,造酒司(さけのつかさ)等であり,その遺跡を直接確認したものは馬寮,大膳職,陰陽寮,造酒司である。馬寮は平城宮西辺にあって,長い細殿的な建物からなり,その細殿にかこまれて広い空間がある。…
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