所司(読み)ショシ

デジタル大辞泉 「所司」の意味・読み・例文・類語

しょ‐し【所司】

官庁役人
鎌倉幕府侍所さむらいどころ次官
室町幕府の侍所の長官。
僧侶の職名の一。上座・寺主・維那いな三綱さんごうの称。

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精選版 日本国語大辞典 「所司」の意味・読み・例文・類語

しょ‐し【所司】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 官庁の役人。
    1. [初出の実例]「赦令已降、令下二所司上レ之」(出典:続日本紀‐大宝元年(701)一一月乙酉)
    2. 「蔵人所の所司によしすけとかや云者ありけり」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)四)
  3. 鎌倉幕府の職名の一つ。侍所、小侍所の次官で、別当を補佐した。
    1. [初出の実例]「所司 平景時 梶原平三」(出典:吾妻鏡‐建久二年(1191)正月一五日)
  4. 室町幕府の職名の一つ。侍所、小侍所の長官。
    1. [初出の実例]「足利殿の世となりては、別当をば補せずして、所司一員を置れたりければ」(出典:武家名目抄(19C中か)職名部)
  5. 貴族の家などの雑務をつかさどる者。また、世話役。
    1. [初出の実例]「ことなることなき車の、おそく参りたるとて、康頼が所司にて、けしからずはらだちて、牛飼をいひののしるに」(出典:たまきはる(1219))
  6. 僧侶の職名。行事・勾当・公文など寺務をつかさどる僧の総称。また上座・寺主・都維那(ついな)の三綱(さんごう)の称。
    1. [初出の実例]「御堂の所司、題名僧皆絹得つつ立ちぬ」(出典:栄花物語(1028‐92頃)もとのしづく)

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改訂新版 世界大百科事典 「所司」の意味・わかりやすい解説

所司 (しょし)

古代,中世の官司・官人の一つ。(1)奈良・平安時代に,ある事柄を担当する官司,あるいは官人の意味で用いられた言葉。《令集解(りようのしゆうげ)》賦役令・車牛人力条の〈古記〉は〈事に関わるの司,これを所司というのみ〉と説明する。特定の官司の官人を指した用語ではない。(2)寺院の寺官である三綱(さんごう)(上座(じようざ),寺主(じしゆ),都維那(ついな))のこと。三綱の下に組織された専当(せんとう),中綱(ちゆうごう)などを下所司という。(3)鎌倉幕府の侍所(さむらいどころ)や小侍所の次官のこと。源頼朝によって侍所の長官である別当に和田義盛,所司に梶原景時が任命されたのが始まり。のち別当職は執権北条氏が兼帯し,所司には北条氏の家人である御内人(みうちびと)が任ぜられた。小侍所の所司も小侍所別当の家人が任ぜられた。(4)室町幕府の侍所の長官である頭人(とうにん)のこと。所司の下には代官である所司代,小所司代などが組織された。(5)安土桃山~江戸時代における京都所司代。禁中および京都の警衛朝廷との折衝などの重要な権限をもっていた。
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百科事典マイペディア 「所司」の意味・わかりやすい解説

所司(日本史)【しょし】

(1)鎌倉幕府の職名。侍所(さむらいどころ)・小侍所の次官で,別当を補佐する。北条氏が執権として別当の地位独占するようになると,長崎氏が所司を世襲した。(2)室町幕府の職名。侍所の長官である頭人(とうにん)のこと。管領(かんれい)に次ぐ重要な職で,山名・赤松・一色京極の各氏が交代で務め,四職(ししき)といわれた。

所司(仏教)【しょし】

上座・寺主(じしゅ)・都維那(といな)の三つの役職を総称する語。三綱(さんごう)ともいったが,後に別当座主(ざす)の下で,寺務を管轄する役僧の名となった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「所司」の意味・わかりやすい解説

所司
しょし

官庁の役人。 (1) 鎌倉幕府では侍所の次官で,別当を補佐した。初めは定員4人であったが,のちに別当を執権が兼任したので,北条氏の家令長崎氏が所司を世襲した。 (2) 室町幕府では侍所の長官をさし,その下に所司代がおかれた。所司は頭人ともいい,赤松,山名,一色,京極の4氏が交代でつとめた。管領に次ぐ重職で,一般には4氏を総称して四職と呼んだ。 (3) 寺院では上座,寺主,都維那 (ついな) の三綱をさした。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「所司」の解説

所司
しょし

一般には官庁の役人の呼称。鎌倉幕府では侍所(さむらいどころ)・小侍所の副官の職名。初代侍所所司は源頼朝の側近の有力御家人梶原景時。北条氏が侍所別当を独占するようになると,北条氏得宗家の被官が所司に就任,鎌倉後期には得宗家の家令長崎氏がほぼ世襲した。小侍所も別当は北条氏が独占,所司はその被官が勤めた。室町幕府では侍所に別当はおかれず,長官が所司とも頭人ともよばれた。小侍所では別当・所司の呼称はなくなり,長官はたんに小侍所といわれた。寺院では上座(じょうざ)・寺主(じしゅ)・都維那(ついな)の三綱(さんごう)を所司と称した。

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旺文社日本史事典 三訂版 「所司」の解説

所司
しょし

①鎌倉幕府の職名
②室町幕府の職名
侍所の次官で,別当を補佐した。初代所司は梶原景時。のち北条氏の家宰長崎氏が世襲。
侍所の長官。管領 (かんれい) につぐ重職で,山名・赤松・一色・京極4氏が交替で就任,四職と呼ばれる。山城国守護を兼任することもあった。

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普及版 字通 「所司」の読み・字形・画数・意味

【所司】しよし

主管。

字通「所」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の所司の言及

【三綱】より

…寺内の僧尼を統轄し,庶務を処理する僧職。上座(じようざ),寺主(じしゆ∥てらじゆ),都維那(つゆいな∥ついな)(維那)の3者で,所司ともいう。すでにインドや中国南北朝で寺院の統轄者として,上座または寺主,もしくは都維那が置かれた。…

【所司代】より


[中世]
 幕府侍所頭人(所司)の代官。所司代は鎌倉時代には知られていないが,南北朝期になると1343年(興国4∥康永2)に都筑(つづき)入道(頭人細川顕氏),1363年(正平18∥貞治2)に若宮左衛門尉(頭人京極高秀)などの名がみえ,侍所の命をうけて洛中の謀叛人や放火殺害人の追捕に当たっている。…

※「所司」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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