座主
ざす
「一座の主たる者」が原意。中国仏教では、一般に徳高く学秀でた僧をよぶことが多い。日本では、天台宗の総本山比叡山(ひえいざん)延暦寺(えんりゃくじ)で、854年(仁寿4)4月に円仁(えんにん)を延暦寺座主に任ずる官符があり、開山最澄(さいちょう)を嗣(つ)ぐ義真(ぎしん)にさかのぼって初代座主とした。これは天台座主と称せられ、管長職をさす公称となった。山科(やましな)(京都市)元慶寺(がんぎょうじ)の遍昭(へんじょう)、高野山(こうやさん)金剛峯寺(こんごうぶじ)の寿長(じゅちょう)、醍醐寺(だいごじ)の観賢(かんけん)などから、それぞれの寺主を座主と称することになる。このほか、超昇(ちょうしょう)寺(奈良市、廃寺)、貞観(じょうがん)寺(京都市、廃寺)、法性(ほっしょう)寺(京都市)、極楽(ごくらく)寺(鎌倉市)、東光(とうこう)寺(京都市、廃寺)、日光山輪王(りんのう)寺(日光市)でも座主と称する。
[木内堯央]
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ざ‐す【座主】
〘名〙
① 学徳すぐれた、一座の中の上首。また、講席の座の上首。
※十善法語(1775)一〇「博学座主の、口には唯識の理を、微細にいふものも」 〔釈氏要覧‐上〕
② 僧の職名。
大寺の
寺務を統括する
首席の僧。延暦寺の天台座主にはじまり、
金剛峰寺、醍醐寺などでもこの職を置いた。
※三代実録‐貞観一八年(876)八月二九日「勅置二貞観寺座主一」
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座主【ざす】
仏教で大寺の管主の称。元来は学徳すぐれた一座の上首の意。日本では824年義真が延暦寺座主(天台座主)に任命されたのが初め。以後,高野山,醍醐寺,大伝法院,日光山など座主の補任があったが,現在では天台宗が専称する。
→関連項目足利義教|三綱|所司(仏教)|満済|満済准后日記
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デジタル大辞泉
「座主」の意味・読み・例文・類語
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座主
ざす
僧職名。一山の上首となって寺務を統理する者の称。特に天台宗では最高の地位にある僧をいう。
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普及版 字通
「座主」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典内の座主の言及
【住職】より
…たとえば,皇室ゆかりの名刹では,平安時代から勅許によって門跡(門主)の称が許され,いわゆる門跡寺院が現れた。また,延暦寺は座主(ざす),園城(おんじよう)寺(三井寺)は長吏,東寺は長者,西大寺は長老,本願寺は法主(または門跡),東大寺,興福寺,法隆寺は別当,日蓮宗諸本山は貫主(かんじゆ)(貫首),近世の檀林などの宗学研鑚の寺では能化(のうけ),化主などと,その寺独自の呼称があった。そして,近代ではこれら大寺院は宗派を超えて管長と称すことも多い。…
【天台座主】より
…天台宗の貫首(管主)で,同時に比叡山延暦寺一山の住職でもあり,山の座主ともいう。824年(天長1)義真が第1代となり,第3代円仁から太政官符をもって補せられ,円仁と第5代円珍は最澄とともに大師号を受けた。…
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