(読み)ハタ

デジタル大辞泉 「将」の意味・読み・例文・類語

はた【将/当】

[副]
あるいは。それとも。はたまた。「夢か、―幻か」
さらにまた。そのうえまた。「野越え、山越え、―海を越え」
「かくては生けるかいもなし。―如何にして病の牀のつれづれを慰めてんや」〈子規・墨汁一滴〉
ひょっとすると。
「さ雄鹿をしかの鳴くなる山を越え行かむ日だにや君が―逢はざらむ」〈・九三五〉
それはそれとして。こちらはこちらで。
「男れて、逢はむ、と言ふ。女も―、いと逢はじ、とも思へらず」〈伊勢・六九〉
そうはいっても。とはいえ。
「しばし休らふべきに、―侍らねば」〈・帚木〉
いうまでもなく。まして。
「女房共、いまいましきまで泣きあひたり。若君の乳母、―言ふべきやうなし」〈今昔・一九・九〉
思ったとおり。やはり。
「ひとへに魔王となるべく大願を誓ひしが、―平治の乱ぞ出で来ぬる」〈読・雨月・白峯〉
否定・疑問・感動などの表現を強める語。まったく。いったい。
「家のうちに足らぬことなど―無かめるままに」〈・帚木〉
「いで、あな悲し。かく―おぼしなりにけるよ」〈・帚木〉
[類語](1はたまたあるいはそれともまたはもしくはないし/(2そのうえこのうえかつまた且つなおかつおまけに加うるにのみならずしかのみならずそればかりかそれどころかかてて加えて

しょう【将〔將〕】[漢字項目]

[音]ショウ(シャウ)(漢) [訓]まさに はた
学習漢字]6年
軍を統率する長。「将棋将軍将校将兵王将主将智将ちしょう敗将武将勇将
軍隊の階級に用いる語。「将官空将少将中将
引き連れる。もたらす。「将来
これから…しようとする。「将来
[名のり]すけ・すすむ・たすく・ただし・たもつ・のぶ・ひとし・まさ・もち・ゆき
[難読]女将おかみ将曹さかん将監じょう

しょう〔シヤウ〕【将】

軍隊を率い指揮する者。将帥しょうすい。「一軍の
軍人の階級の一。将官。
自衛官の階級の一。最高位の階級で、陸将・海将・空将があり、諸外国軍や旧日本陸海軍の大将・中将に相当する。
律令制近衛府このえふの官名。大将・中将・少将があった。
[類語]将軍知将名将勇将闘将驍将参謀軍師司令官提督

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精選版 日本国語大辞典 「将」の意味・読み・例文・類語

はた【将・当】

  1. 〘 副詞 〙 他の事柄と関連させて判断したり推量したり、あるいは列挙選択したりするときに用いる語。
  2. 事の成否を危惧しながら推量するときに用いる。
    1. (イ) ひょっとして。もしかして。→はたや
      1. [初出の実例]「さ男鹿の鳴くなる山を越え行かむ日だにや君が当(はた)逢はざらむ」(出典:万葉集(8C後)六・九五三)
    2. (ロ) ( 下に否定語を伴って ) まさか。よもや。
      1. [初出の実例]「女もはたいと逢はじとも思へらず」(出典:伊勢物語(10C前)六九)
  3. 当然のこととして肯定する気持を表わす。やはり。さすがに。思ったとおり。はたして。
    1. [初出の実例]「男の御かたち・有様、はたさらにもいはず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
  4. 他に考えてもやはり、と肯定する気持を感動的に表わす。
    1. [初出の実例]「ほととぎす初声聞けばあぢきなくぬし定まらぬ恋せらるはた〈素性〉」(出典:古今和歌集(905‐914)夏・一四三)
  5. 先行の事柄と類似の事柄をさらに想定してみるときに用いる。
    1. (イ) 打消表現と呼応して、それもだめだという気持を表わす。そうはいうものの。しかしながら。
      1. [初出の実例]「げにさせばやと思せど、数より外の大納言になさん事は難し。人のはたとるべきにあらず」(出典:落窪物語(10C後)四)
    2. (ロ) 二つの事柄のどちらを選ぶか迷う気持を表わす。はたまた。それともまた。あるいは。
      1. [初出の実例]「是の諸の行相は一人に具せりとや為む、当(ハタ)多人に具せりとや為む」(出典:蘇悉地羯羅経略疏寛平八年点(896))
  6. 先行の事柄と類似の事柄を列挙するときに用いる。
    1. (イ) それもまた同様であるという気持を表わす。また。同様に。
      1. [初出の実例]「この男はた宮仕へをば苦しき事にして、ただ逍遙をのみして」(出典:平中物語(965頃)一)
    2. (ロ) さらに類似のことが加わることを表わす。その上にまた。さらにまた。いっそう。
      1. [初出の実例]「例の遊び、はたまして、心に入れてし居たり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)嵯峨院)

しょうシャウ【将】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 一軍を指揮し統率する者。軍隊の長。将帥。
    1. [初出の実例]「征て功を立(たつる)は武人のわざなり。此わざに誉れあらば将とするにたれり」(出典:神皇正統記(1339‐43)中)
    2. [その他の文献]〔史記‐朝鮮〕
  3. 近衛府の官名。大将、中将、少将に分ける。
  4. 旧陸海軍の階級の一つ。将官。

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普及版 字通 「将」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 10画

(旧字)將
人名用漢字 11画

[字音] ショウ(シャウ)・ソウ(サウ)
[字訓] すすめる・ひきいる・おこなう・まさに

[説文解字]
[金文]
[その他]

[字形] 会意
旧字は將に作り、爿(しよう)+(肉)+寸。爿は足のある几(き)(机)の形で、その上に肉をおいて奨(すす)め、神に供える。軍事には、将軍が軍祭の胙肉(そにく)を奉じて行動した。その胙肉を(し)といい、師の初文。帥(そつ)もその形に従う。これを以ていえば、將とはその胙肉を携えて、軍を率いる人である。殷器にはを標識として用いるものがあり、王族出自の親王家を示す図象であるらしく、その身分のものが軍将に任じ、作戦の中核となった。將・壯(壮)の字に含まれる爿は、その図象と関係があるものと思われる。〔説文〕三下に「帥(ひき)ゐるなり」と訓し、(しよう)の省声とするが、は將声に従う字であるから、將がの省声ということはありえない。奬(奨)は將の繁文。將は訓義多く、字書に列するものは五十数義に及ぶが、将帥が字の原義である。

[訓義]
1. すすめる、ささげる、祭肉を神にすすめる。
2. ひきいる、その祭肉を携えて軍をひきいる。
3. おこなう、進める、おくる、いたす、なす、たすける、もつ、もちいる、やしなう。
4. おおきい、さかん、うつくしい。
5. ねがう、ねがはくは。
6. ほとんど、まさに、まさに~す。
7. 副詞として、すなわち、あるいは。
8. 助詞として、はた、かつ、ただ、それ、もし、なお。

[古辞書の訓]
名義抄〕將 スト・モノ・モツ・オクル・ヒキヰル・マサニ・ムス・コオフ・オホイナリ・ヤシナフ・タスク・ホトリ・カル・ユク・マサニ(~)セントス・コフ・トモナフ・ヰテ・ヰル・モチ・モハラ・モテヰテ/戰將 イクサノキミ/將來 ユクスエ・ヰテキタル・モチキタル・ユクサキ 〔字鏡集〕將 ムス・コフ・ユク・ス・ト・モツ・シテ・トモ・ヰル・モチ・ヤル・ハタ・ホシ・ウゴナフ・オホイナリ・モハラ・ヤシナフ・トモナフ・タレカ・イクサ・マサニ・オクル・ヒトトナル・タマフ・オキテ・ヰテ・ヰル・モチヒル・タスク・ホトリ・オサム・ヤスム・セントス・ウケル・ヒキヰル

[声系]
〔説文〕に將声として・奬など五字を収める。獎を〔説文〕十上に「犬を嗾(そそのか)して、之れを(はげ)ますなり」とするが、犬牲を供える意であろう。

[語系]
將・奬・tziangは同声。肉を薦めて祭事を「将(おこな)う」ことを將といい、犬牲を以てするを獎といい、これによって軍事を助けることを「(たす)く」という。軍の中堅を壯tzhiangというのは、將とともに、殷の金文図象と関係があるものと思われる。

[熟語]
将愛・将位・将引・将家・将器将戯・将御将迎・将護・将校・将佐・将材・将士・将指・将次・将事・将順・将相・将将・将食・将帥・将摂・将送・将息・将率・将美・将父・将弁・将命・将門・将養・将来・将略・将領
[下接語]
亜将・鋭将・客将・干将・悍将将・騎将・強将・梟将・驍将・軍将・健将・賢将・豪将・次将・主将・首将・宿将・上将・神将・善将・賊将・大将・智将・闘将・飛将・裨将・扶将・武将・部将・副将・辺将・偏将・奉将・謀将・名将・猛将・勇将・虜将・良将・領将・老将

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