明治期の新聞(および雑誌)取締法。1875年(明治8)6月28日公布(太政官布告第111号),以後数次の改正をみた。それまでの新聞紙発行条目(1873年10月19日公布)に比べて刑罰規定が格段に整備強化されている点が特徴である。この規定の発動で,一時,逮捕投獄される新聞記者が続出した。さらに,76年7月5日に〈国安妨害〉(後の〈安寧紊乱(びんらん)〉),80年10月12日には〈風俗壊乱〉の記事を掲載した新聞雑誌の発行を禁止・停止できる行政処分の権限を内務卿(大臣)に付与する規定が追加されており,以後はむしろこれが政府の言論取締りの中心的な武器として威力を発揮することになった。83年4月16日には,〈明治14年の政変〉後の政党運動の展開に対応して言論取締りの強化をめざした全面改正が行われて,いわゆる身代り新聞の禁止や行政処分権を府県知事にも付与する条項などが新設されている。87年12月29日付の一部改正では取締りの若干の緩和のほか,従来の新聞雑誌の発行許可制が届出制に改められている点がとくに目をひく。ついで97年3月24日の一部改正では,弾圧規定としてかねてから問題視されてきた内務大臣の発行の禁止・停止の行政処分条項の廃止がついに実現している。新聞紙条例はさらに1909年5月6日付で改正され,名称も新聞紙法と改められた。新法では新聞雑誌の発売頒布を禁止できる内務大臣の行政処分権規定が復活されている。
→讒謗律 →新聞紙法
執筆者:内川 芳美
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1875年(明治8)6月28日に布告された全文16条からなる新聞取締条例。73年10月に布告された新聞紙発行条目が新聞指導条例の意図をもっていたのに対し、この改正条例は、内容規定が整備されるとともに、当時、政府批判の傾向をみせ始めた新聞取締りの意図を明確化したもので、「人ヲ教唆シテ罪ヲ犯サシメタル者」(12条)、「政府ヲ変壊シ国家ヲ顛覆(てんぷく)スルノ論ヲ載セ騒乱ヲ煽起(せんき)セントスル者」(13条)、「成法ヲ誹毀(ひき)シ国民法ニ遵(したが)フノ義ヲ乱(みだ)リ及顕(およびあら)ハニ刑律ニ触レタルノ罪犯ヲ曲庇(きょくひ)スルノ論ヲ為(な)ス者」(14条)には初めて厳しい刑罰規定が設けられた。この条例は、民党系新聞が優勢になる83年4月16日にさらに改定され、発行保証金制度、行政権による発行禁止・停止権、新聞紙差押え権などの新設・拡大によって新聞弾圧の意図をますます深めた。しかし新聞界の反対もあり、以後87年12月28日、97年3月19日の改正などで、行政権による発行停止・頒布の禁止・差押え権などは廃止されたものの、根本的改正をみないまま、1909年(明治42)5月6日、新聞紙法にその内容は引き継がれ、新聞紙条例は廃止となった。
[春原昭彦]
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1875年(明治8)制定の新聞・雑誌取締り法。69年の新聞紙印行条例,73年の新聞紙発行条目を先行法令とし,自由民権派の反政府的言論活動に対処するため,75年6月28日讒謗律(ざんぼうりつ)とともに公布された。政府変壊論・成法誹毀(ひき)などを禁じ,違反者には禁獄刑を科したため,末広鉄腸(てっちょう)をはじめ言論人の投獄があいついだ。76年7月には内務卿の行政処分権による発行禁止と停止の両条項も追加された。政党活動の高まりをうけて83年に全面改正され,取締りを一層強化し保証金制度も設けられた。その後規制は若干緩和され,87年の一部改正では従来の発行許可制が届出制になり,97年には行政権による発行禁止・停止両条項が廃止された。1909年廃止されて新聞紙法となった。
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…発売禁止は一時的な行政処分であるが,発行人等に与える心理的・経済的圧力は大きく,言論・出版の自由に対する深刻な脅威となった。また,それ以前の新聞紙条例の時代には,行政庁の処分としての発行禁止(および発行停止)という制度が認められていた。発行禁止は新聞や雑誌の発行を将来に向かって永久に禁止するものであり,いわば新聞・雑誌への死刑宣告ともいうべき処分であった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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