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木材や石材などに穴をうがち,また材面を削ったりする工具の総称だが,金工や石工で用いるものは鏨(たがね)という。鑿は斧とともにもっとも古くから用いられた工具で,縄文時代のくり舟などの工作には鑿状石器が使われ,弥生時代にはいち早く鉄器化した。
刃部と柄部からなるが,鏨は両部とも鉄で一体である。これを共柄という。刃は木工用のものはすべて片刃であるが,鏨は両刃である。刃は柄に対して込差し(こみざし)されるが,槌打ち用の叩(たたき)鑿は柄尻に冠(鉄環)をはめ,込みの部分には口金をはめる。押して用いる押鑿(突鑿,指鑿ともいう)は冠がなく柄が長い。刃部を穂ともいい,鑿の大小は穂幅であらわす。穴あけ専用のものは穂幅が狭く,厚みが大であり,削りに用いられるものは穂幅が広く,厚みが小さい。押鑿はさらに薄い。鑿の刃裏は鉋(かんな)刃裏と異なり逃げ(凹み)が少なく,一般にべた裏といわれる(鉋は糸裏といわれる)。
普通の形のものを平(ひら)鑿といい,叩鑿と押鑿があり,叩鑿のうち深穴あけ用を向待(むこうまち)鑿,削り用を追入(おいいれ)鑿という。押鑿には,穂の断面が鋭角の鎬(しのぎ)鑿と,鏝(こて)鑿がある。ほかに穂形が特殊なものとして,鎌鑿,銛(もり)鑿,搔上鑿などがあり,さらに木造船工作で大釘打ちのとき錐(きり)の代用をする鍔(つば)鑿もある。彫刻刀の丸刀,三角刀なども押鑿の一種である。
執筆者:成田 寿一郎
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