木津庄(読み)きづのしよう

日本歴史地名大系 「木津庄」の解説

木津庄
きづのしよう

古代の水泉いずみ(和名抄)に成立した、藤原摂関家を本家とする南都興福寺領。その母胎は興福寺が泉木津に置いた木屋所であった。荘域は確定できないが室町期にはおよそ近世の木津郷域に及んでいたとみられる。

本家職藤原忠実から女高陽院泰子へ伝えられ、高陽院により法性ほつしよう観自在かんじざい院に寄進された(文治三年六月一四日付「後白河院庁下文」壬生家文書)。元暦二年(一一八五)梶原景時が木津庄を押領するが、荘官の訴えに対し次のような関東下知状(書陵部蔵谷森文書)が出されている。

<資料は省略されています>

この事件に関しては梶原景時室消息写(三条家古文書)があり、当荘は「こつのしょう」とよばれており、「こつのさうのこと、さりふみ(去文)ニハをよはぬことに候、ゐんせん(院宣)をはくたされ候うへには、(誰)さゝ(支)へ申候へき、かつはをうな(女)のみに候へハ、しさいしらぬことに候、ゆひそ(由緒)候はゝ、かちはらもかまくらとのにも申さたし候はんにも、そんし候はんをはしさいしらす、さりふみにをよはぬに、それ候はすとても、ゐんせんのうへには、たかさゝへ申候へき、(下略)」とみえる。元暦二年のものと思われる六月五日付藤原親能書状案(書陵部蔵谷森文書)、同六月六日付大宰権帥藤原経房書状案(同文書)、同日付権左中弁書状(同文書)、文治三年(一一八七)六月一四日付後白河院庁下文などによれば、木津庄の押領は景時の舎弟刑部丞友景が景時の下知と称して行ったものであり、その直接的な当事者は友景の使者散位藤原親能であった。


木津庄
こうつのしよう

延暦寺三千聖供領。木津は平安期以来塩津しおつ大浦おおうら(現伊香郡西浅井町)と並ぶ湖上の重要な湊であった。治暦元年(一〇六五)九月一日の太政官符(壬生家文書)で、刀禰が勘過料と称して運上調物を割き取ることを停止された北陸道中の津泊のなかに木津が含まれており、弘安一〇年(一二八七)にも越中守源仲経が同前のことを上申している(同年七月三日「源仲経申状」勘仲記)。寿永二年(一一八三)四月に木曾義仲追討の平氏軍が西路は木津の宿などを通って敦賀へ向かった(「源平盛衰記」巻二八)。また若狭近江を結ぶ若狭街道が木津で分岐しており、東寺領若狭国太良たら(現福井県小浜市)年貢米は木津へ運ばれている(正安四年四月二三日「若狭太良庄百姓申詞」東寺百合文書)。保延四年(一一三八)一〇月二日、木津庄は鳥羽上皇により千僧供料として延暦寺に施入された(天台座主記)。その四至は南は一三条、西は追分おいわけ(現今津町)、北は一八条で、延暦寺は建保四年(一二一六)に南の古賀こが庄と北の善積よしづみ庄の押領を停止するべく示を打ち定めている(同年八月三日「延暦寺政所下文案」饗庭文書)。永正四年(一五〇七)九月日の祐憲書下状案(同文書)によれば、この四至示は、東は比叡新ひえしん庄を限るとして打ち改められ、南は一三条南境西佐々尾南少阪、西は若狭路追分、北は一八条北境板倉山南字小野を限る。


木津庄
きつのしよう

古代の木津郷(和名抄)の地に立荘されたと考えられる荘園。木津庄とは別に木津郷も中世末まで存続しており、両者の関係、各々の範域などは不明。おそらく近世「木津庄」を冠してよんだ地域が、中世の木津郷・木津庄の地と推測される。

元弘三年(一三三三)五月二〇日付熊谷直久軍忠状(熊谷家文書)に「木津郷」とともに「木津庄」と記され、丹後国田数帳には「木津庄 五十二町二段二百五十四歩 賀茂領」とあり、室町時代には上賀茂かみがも神社(現京都市北区)の社領であったと思われる。


木津庄
きづのしよう

木津郷(和名抄)内に成立した荘園と考えられるが実態は不明。高浜薗部そのべ岩神いわがみ笠原かさわら子生こび坂田さかた鐘寄かねより中津海なかつみの地を含んだとされるが、高浜・笠原以外は史料的には確認できない。荘名は貞治七年(一三六八)正月日付もり兵衛田地譲状(舞鶴市梅垣西浦文書)にみえる(→笠原村


木津庄
きづのしよう

現浪速区南部の旧木津村付近にあったとみられる四天王寺(現天王寺区)領の庄園。文明二年(一四七〇)八月二二日、室町幕府は、当時、四天王寺の別当であった青蓮しようれん(現京都市東山区)に対し、木津庄ほか摂津国内の四天王寺領五ヵ所が押領されているのを停止し、青蓮院の直務支配にする措置をとっている(華頂要略)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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