柳樽(読み)ヤナギダル

デジタル大辞泉 「柳樽」の意味・読み・例文・類語

やなぎ‐だる【柳×樽】

柄樽えだる一種で、長い2本の柄のある、祝儀用の酒樽朱漆で塗り、定紋をつけたものもある。→柄樽角樽つのだる
[補説]「家内喜多留」とも当てて書く。
[類語]酒樽ビヤ樽角樽薦被り

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精選版 日本国語大辞典 「柳樽」の意味・読み・例文・類語

やなぎ‐だる【柳樽】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 「柳」は酒のこと。酒を入れた樽の意 )
    1. 柳の白木で作り、たがを二つかけた柄付きの平たい酒樽。婚礼などの祝儀に用いる。祝って「家内喜多留」の字を当てることがある。〔運歩色葉(1548)〕
      1. 柳樽<b>[ 一 ]</b><b>①</b>
        柳樽[ 一 ]
      2. [初出の実例]「祝言の祝義として珍しからぬ塩鯛柳樽(ヤナギダル)若党四兵衛に口上云つけて」(出典:浮世草子・武道伝来記(1687)七)
    2. 酒を入れてある樽で、桶(おけ)にかがみ(ふた)をとりつけた形のもの。手のついたものもある。斗樽(とだる)
      1. [初出の実例]「洩とまれ新酒なかるる柳樽〈利清〉 まへかんなまま藤のうら枯〈忠友〉」(出典:俳諧・生玉万句(1673))
  2. [ 2 ] ( 柳多留 ) 「はいふうやなぎだる(誹風柳多留)」の略称

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改訂新版 世界大百科事典 「柳樽」の意味・わかりやすい解説

柳多留/柳樽 (やなぎだる)

江戸時代の川柳風狂句集。《誹風柳多留》ともいう。1765年(明和2),呉陵軒(ごりようけん)可有の編で初篇を刊行,世に受けて続刊。91年(寛政3)までに初代川柳の撰句の前句を省いて24編を刊行。以後,2世川柳評で70編まで,4世川柳が110編まで,5世が167編(1840年(天保11))まで出して終刊。あと《新編柳多留》と改称し,1850年(嘉永3)までに40編を出した。〈当世の前句は誹諧足代ともならんや〉(二篇)ともあるように,単なる雑俳前句付(まえくづけ)でなく,俳諧的風韻を重んじた作をねらっており,10編あたりまで実行されているが,しだいに観念遊戯的な傾向を強めた。〈塩引の切残されて長閑なり〉〈持なさい女はのちにふけるもの〉(初篇),〈ただも行かれぬがぶさたのなりはじめ〉(七篇)などは初期の秀逸といえる。2世以後の一句立時代に入ると,〈どらもうち敵も討つた国家老〉〈からかさを上へすぼめる大あらし〉〈傾城は生き蠟女房は駄蠟也〉(五十篇)のような駄洒落となり,風俗言語資料としてはともかく,文芸的な味は失ってしまった。初代川柳時代(古川柳時代)の作品は前句付なので,《柳多留》の句にも前句を補って解するのが基本である。2世以後の〈狂句時代〉は,政治・道徳に雌伏してしまっており,明治の復古運動の攻撃目標とされたのも当然のことであったが,川柳風狂句を普及させた功績は見逃せまい。本書の果たした史的役割は,初代が行っていた前句付形式を,付句1句で鑑賞するようにまず読者の側から馴染ませ,ついで創作面でも前句付の題を軽視させて,2世以後の川柳風狂句という一句立の新様式を生み出す母胎となったことであり,ここに至って俳諧連句は,発句(俳句)と平句(狂句)という2様式に分解して明治に引き継がれることになった。
川柳
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百科事典マイペディア 「柳樽」の意味・わかりやすい解説

柳多留【やなぎだる】

川柳集。《誹風柳多留》《柳樽》とも。1765年―1838年に167編刊行。22編まで呉陵軒可有編,24編まで柄井(からい)川柳(初世川柳)の評。初編は川柳評前句付《万句合》から一句独立した佳句700余を選んだもの。この《柳多留》の流行により,前句付の付句がしだいに前句を離れて独立して扱われるようになり,〈川柳〉として確立していく。江戸風俗資料としても貴重。
→関連項目武玉川

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世界大百科事典(旧版)内の柳樽の言及

【樽】より

…また江戸時代になると結樽でも注器の系統をひくものが作られた。円筒形の胴の両側に兎の耳のように2本の把手がついた兎樽(うさぎだる)や柳樽(やなぎだる)で,華やかな朱漆などを塗って祝儀用に用いた。また平たい円形の平樽もあり,これを太鼓樽ともよんだ。…

【柄井川柳】より

…江戸中期の前句付専門点者。名は正通。幼名勇之助。通称八右衛門。緑亭,無名庵と号す。浅草新堀端に住む。38歳で竜宝寺門前町などの名主を継ぎ,1757年に前句付点者となり,山手を中心地盤に,1~7月を休み,毎年8月から年末まで月並み興行。都会的俳諧的な句を採って人気を得,明和(1764‐72)中には江戸の第一人者となったが,安永(1772‐81)以後は狂歌に押され下降気味であった。なお,この定例会のほか,休会中も,角力会や組連主催の五の日興行の〈五五(ごご)の会〉の撰もしたが,彼の名を高めたのは高点付句集《柳多留》であった。…

【川柳】より

前句付(まえくづけ)から独立した雑俳様式の一つ。川柳風狂句。17音を基本とする単独詠だが,発句(ほつく)のように季語や切字(きれじ)を要求せず,人事人情を対象にして端的におもしろくとらえる軽妙洒脱な味を本領とする。江戸の柄井川柳が《柳多留(やなぎだる)》(初編1765)で前句付の前句を省く編集法をとったため,しだいに付け味よりも付句一句の作柄が問題とされ,やがて5・7・5単独一句で作られるようになり,初代川柳の没後,〈下女〉〈居候〉などの題詠として前句付様式から離脱独立した。…

※「柳樽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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