浅沓(読み)アサグツ

デジタル大辞泉 「浅沓」の意味・読み・例文・類語

あさ‐ぐつ【浅×沓/浅履】

公卿くぎょう殿上人てんじょうびとなどが用いた浅い多くきり黒漆塗りで皮革製もあった。内部に布を張り、足の甲の部分に絹製の綿入れを入れた。→深沓ふかぐつ

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精選版 日本国語大辞典 「浅沓」の意味・読み・例文・類語

あさ‐ぐつ【浅沓・浅履】

  1. 〘 名詞 〙 公卿(くぎょう)殿上人(てんじょうびと)などが常用した浅い沓(くつ)。桐の木を彫って作り、外側を黒漆で塗るのが普通だが、もともとは牛革製だった。内部に布を張り、足の甲にあたる部分に絹製綿入れの込(こみ)を入れた。鼻切沓(はなきれぐつ)雁鼻(かりはな)。⇔深沓
    1. 浅沓
      浅沓
    2. [初出の実例]「親王以下五位以上出堂後靴、〈略〉更着浅履復座」(出典貞観儀式(872)七)
    3. 「初年許は壺胡籙(つぼやなぐひ)浅沓也」(出典:古事談(1212‐15頃)五)

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改訂新版 世界大百科事典 「浅沓」の意味・わかりやすい解説

浅沓 (あさぐつ)

奈良時代前後の制度では,文武官とも朝服には烏皮履(くりかわのくつ)という黒い革製の履(くつ)をはいていた。平安時代になって,中期ころからしだいに束帯が成立し,これが独自の発展をすると,キリの木を彫って黒漆を塗った浅沓が用いられるようになった。足の先の部分を高く,足首のところも低いふちをとったはきもので,今日の神社の神職がこれをはいているが,もちろん古くはもっと形のよいものであった。日常の庭の歩行には使用できたけれども,木製だったので,文官の乗馬のときや,武官には用いられなかった。沓という文字は,中国では〈くつ〉の意味はなく,これを〈くつ〉というのは国訓である。儀式のときには浅沓を用いず,靴(かのくつ)という長ぐつが用いられた。浅沓の足の甲のところに裂(きれ)に綿を入れた〈こみ〉というものをはめ,沓の内部には沓敷といって裂をはったが,これにも大臣は窠(か)に霰(あられ),表袴(うえのはかま)とそろいの裂,公卿は藤の丸,殿上人は平絹などで区別をするという故実ができた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「浅沓」の意味・わかりやすい解説

浅沓
あさぐつ

公家(くげ)の履き物の一種。深沓に対する名称。束帯、衣冠、直衣(のうし)、狩衣(かりぎぬ)などの服装に用いられる。形式は古代、中世前方が丸く盛り上がり、後方が細くなった舟形のもので、皮に黒漆を塗った烏皮履(くりかわのくつ)のほか、木製に黒漆を塗った、いわゆる木履(もくり)が使われた。内部の底敷きとして、白の平絹や白の綾(あや)が張られたが、公卿(くぎょう)以上のものには、その表袴(うえのはかま)と同質の浮織物が用いられた。近世の浅沓は木製のほか、上部に紙を張り合わせてつくった、いわゆる張り抜きに桐(きり)材の底をつけ黒漆を塗ったものが用いられ、前方上部の丸みが直線的となり、全体に大ぶりとなったため、脱げぬように大形の甲当てをつけた。

[高田倭男]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「浅沓」の意味・わかりやすい解説

浅沓
あさぐつ

浅履とも書く。公家が装束を着けたときにはく浅い沓で,深沓 (ふかぐつ) の対語。キリ (桐) の木を彫って角張った舟形にし,外側を黒漆で塗ってつくる。内側の沓敷には絹布か紙を張るが,禁色を許された公家は,表袴の布を内側に張った。もともと奈良時代の皀皮履 (くろかわのくつ) の変化したもので,平安時代には,黒漆を塗った革製の浅沓が一般的であった。

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「浅沓」の解説

浅沓[祭礼・和楽器]
あさぐつ

東海地方、三重県の地域ブランド。
伊勢市で製作されている。浅沓とは、神宮神官の履物。江戸時代中期までは、上位階級のごく一部の神官しか着用が許されていなかった。型づくりは和紙張り、仕上げは本堅地蝋色塗り。型づくりから仕上げまで一貫して製作されている。三重県伝統工芸品。

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