禁色(読み)キンジキ

デジタル大辞泉 「禁色」の意味・読み・例文・類語

きん‐じき【禁色】

律令制で、位階によって衣服の色が定められ、相当する位階より上位の色の着用が禁じられたこと。また、その色。
天皇皇族などの衣服の色で、臣下の着用が禁じられたもの。黄櫨染こうろぜん・青・赤・黄丹おうに深紫ふかむらさき深緋ふかひ深蘇芳ふかすおうの7色。
有文うもん綾織物、また、霰地あられじの紋のある表袴うえのはかまの着用が禁じられたこと。
禁色宣下せんげ」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「禁色」の意味・読み・例文・類語

きん‐じき【禁色】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 令制で、位階によって着用する袍(ほう)の色の規定があり、そのきまりの色以外のものを着用することが禁じられたこと。また、その色。
    1. [初出の実例]「恣着禁色、既無貴賤之殊」(出典:続日本紀‐延暦二年(783)正月戊寅)
  3. 天皇、皇族などの袍の色で臣下の用いることが禁じられたもの。青色(天皇の袍)、赤色(太上天皇の袍)、黄赤色、およびくちなし色(皇太子以下無品王の袍)、深紫色親王四品以上一位の袍)、深緋(ふかひ)色、深蘇芳(ふかすおう)色の七色が禁じられた。⇔許色(ゆるしいろ)
    1. [初出の実例]「今案くれなゐむらさきはふかき色を禁色となづけあさきをゆるし色といふ」(出典:花鳥余情(1472)四)
  4. 公家社会の伝統に基づき、有文(うもん)の綾織物、また、あられ地に窠(か)の文のある表袴(うえのはかま)などの着用が禁じられたこと。〔羽倉考(1751頃か)〕
  5. を着することを許すこと。また、その許された人。
    1. [初出の実例]「一条御元服、〈略〉正五位下、禁色昇殿等云々」(出典:言継卿記‐永祿元年(1558)正月五日)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「禁色」の意味・わかりやすい解説

禁色
きんじき

天皇、皇太子、親王、公卿(くぎょう)、中宮内親王など上位の者が用いる服色、および織物で、一般の者が着用することを禁じたもの。飛鳥(あすか)時代以来、服色によって身分を表す制度により、位階相当の色、すなわち当色(とうじき)が定められ、それより上位の服色を用いることを禁じた。平安時代以降は当色以外の使用を禁じたほか、天皇の当色である白、黄櫨染(こうろぜん)、青色、皇太子の黄丹(おうに)、上皇の赤色、上位の者が用いる紫や紅の濃い色、および錦(にしき)や二陪(ふたえ)織物は禁色とされた。『三代実録』清和(せいわ)天皇の貞観(じょうがん)12年(870)に、禁色を下衣となすことを許さずとあって、禁色が下着にまで及んでいたことを示している。同じく陽成(ようぜい)天皇の元慶(がんぎょう)5年(881)に、男女とも茜(あかね)、紅花(こうか)を支子(くちなし)に交え染める色は深浅を論ぜず服用することを禁ずとあり、黄丹に見間違える支子色を禁じた。『日本紀略』延喜(えんぎ)14年(914)に、美服紅花の深浅色等を禁ずとあり、紅についても制限された。なお禁色の宣旨を蒙(こうむ)るといって、天皇の許可によって特定の禁色を用いることを「色聴(いろゆ)る」といった。普通は四位、五位のときにこの宣旨を蒙り、摂関家の子弟は元服の日に蒙った。禁色を聴(ゆ)るされた人を禁色人(きんじきのひと)と称した。勅許によって用いるものは、たとえば紫や紅の濃い色、窠(か)に霰(あられ)文の浮織物の表袴(うえのはかま)などであった。また蔵人(くろうど)は青色の袍(ほう)を下賜されて着用した。女性の禁色については、父親の位階に準じて使用することができ、『満佐須計装束抄(まさすけしょうぞくしょう)』によると、上﨟(じょうろう)の女房は青色、赤色の織物の唐衣(からぎぬ)、地摺(じず)りの裳(も)を許された。また男女とも聴るしの色といい、紫と紅の薄い色は使用できた。

[高田倭男]

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改訂新版 世界大百科事典 「禁色」の意味・わかりやすい解説

禁色 (きんじき)

服制の上で,勅許されなければ着用できない衣服の色および服地。令制では,親王以下官人の位階に応じて着用する服の色が規定されており,当色(とうじき)という。当色より下位の色目の着用は自由であったが,上位のものは禁じられていた。平安時代に入り,服制の変化,束帯の登場にともなって,青が天皇,赤が上皇,黄丹(きあか)が皇太子,深(こき)紫が親王や一位の着用の色となり,これに同系統の支子(くちなし),深緋,深蘇芳(すおう)が加えられて七色が一般の着用を禁じられた。しかし,大臣の子,孫,天皇に近侍する四,五位(六位も)の蔵人などは特別に宣旨をこうむって着用が認められた。これを〈禁色の宣旨〉といい,勅許されることを〈禁色を聴(ゆ)る〉〈色を聴る〉という。色ばかりでなく,有文(うもん)の綾織物も禁じられ,江戸時代では窠(か)に霰(あられ)文が禁制であった。女子の禁色もあり,青,赤色の綾織物の唐衣(からぎぬ)や地摺りの裳などであった。
服制
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「禁色」の意味・わかりやすい解説

禁色
きんじき

勅許される以外は着用を禁止されていた服色あるいは服地。聴色 (ゆるしいろ) の対。令制の衣服令には品位により王臣の服色が規定されている。天皇の着用する黄櫨染 (こうろぜん) ,麹塵 (きくじん) や,皇太子,親王,内親王などの服色である黄丹 (きあか) 色,深紫色などは,当色 (とうじき。位階に相当する服色) のほかは禁止された。また深紅色は内裏 (だいり) や京都で火災が続いたため,火色,焦色として忌み嫌われ,仁和年間 (885~889) に禁令が出された。一般には,青,赤,黄丹,支子 (くちなし) ,深紫,深緋,深蘇芳 (すおう) の7色と文様の織物 (綾織など) の着用が禁じられた。禁色の取締りにあたっては深紅染めの見本をつくり,取締りの目安として,弾正台 (だんじょうだい) と検非違使 (けびいし) に配布する。昇殿者には禁色を許すことになっており,その際宣旨を下した。後世になるとこの規定も次第に乱れ,江戸時代には有紋の綾織物,特に表袴の織紋の着用の禁止をいった。

禁色
きんしょく

相撲界で禁じられた色をいう。化粧まわしをつくる場合,横綱大関以外は,馬簾の部分に紫色を使ってはいけないことになっている。

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百科事典マイペディア 「禁色」の意味・わかりやすい解説

禁色【きんじき】

服制上着用を禁じられた衣服の色および服地。普通平安時代の服制による赤,青,黄丹(きあか),支子(くちなし),深(こき)紫,深緋(ひ),深蘇芳(すおう)の7色および有文(うもん)の織物をいう。すなわち青は天皇,赤は上皇,黄丹は皇太子,深紫は一位の袍(ほう),他の3色はそれらの類似色であるために禁じられた。女子は赤色,青色の綾(あや)織物の唐衣(からぎぬ),地ずりの裳(も)等が禁色とされた。着用は〈禁色聴許の宣旨〉をもって許される。
→関連項目束帯

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世界大百科事典(旧版)内の禁色の言及

【青】より

…いかに五色の考え方に規制されるところが大きかったか,ということを知る。加えて,平安期をも含めた古代宮廷社会においては,衣服から装身具まで,位階や身分に応じて使用すべき色(当色(とうじき))や使用不許可の色(禁色(きんじき))が厳格に定められてあったから,必然的に,色彩の感じ方にも尊卑観念のつきまとうことは避けられなかった。そして,位袍(いほう)のシステムにおいて,一~三位が紫または黒,四・五位が赤,六・七位が緑,八・初位が縹と定められていたから,〈あお〉の色は,greenおよびblueをひっくるめて尊貴の色に遠いという感じ方が固定してしまった。…

※「禁色」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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