禁色(読み)きんじき

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

禁色
きんじき

勅許される以外は着用を禁止されていた服色あるいは服地。聴 (ゆるしいろ) の対。令制衣服令には品位により王臣の服色が規定されている。天皇の着用する黄櫨染 (こうろぜん) ,麹塵 (きくじん) や,皇太子,親王,内親王などの服色である黄丹 (きあか) 色,深紫色などは,当色 (とうじき。位階に相当する服色) のほかは禁止された。また深紅色は内裏 (だいり) や京都で火災が続いたため,火色,焦色として忌み嫌われ,仁和年間 (885~889) に禁令が出された。一般には,青,赤,黄丹,支子 (くちなし) ,深紫,深緋,深蘇芳 (すおう) の7色と文様の織物 (綾織など) の着用が禁じられた。禁色の取締りにあたっては深紅染めの見本をつくり,取締りの目安として,弾正台 (だんじょうだい) と検非違使 (けびいし) に配布する。昇殿者には禁色を許すことになっており,その際宣旨を下した。後世になるとこの規定も次第に乱れ,江戸時代には有紋の綾織物,特に表袴の織紋の着用の禁止をいった。

禁色
きんしょく

相撲界で禁じられた色をいう。化粧まわしをつくる場合,横綱大関以外は,馬簾の部分に紫色を使ってはいけないことになっている。

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デジタル大辞泉の解説

きん‐じき【禁色】

律令制で、位階によって衣服の色が定められ、相当する位階より上位の色の着用が禁じられたこと。また、その色。
天皇や皇族などの衣服の色で、臣下の着用が禁じられたもの。黄櫨染(こうろぜん)・青・赤・黄丹(おうに)・深紫(ふかむらさき)・深緋(ふかひ)・深蘇芳(ふかすおう)の7色。
有文(うもん)の綾織物、また、霰地(あられじ)窠(か)の紋のある表袴(うえのはかま)の着用が禁じられたこと。
禁色宣下(せんげ)」の略。

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百科事典マイペディアの解説

禁色【きんじき】

服制上着用を禁じられた衣服の色および服地。普通平安時代の服制による赤,青,黄丹(きあか),支子(くちなし),深(こき)紫,深緋(ひ),深蘇芳(すおう)の7色および有文(うもん)の織物をいう。すなわち青は天皇,赤は上皇,黄丹は皇太子,深紫は一位の袍(ほう),他の3色はそれらの類似色であるために禁じられた。女子は赤色,青色の綾(あや)織物の唐衣(からぎぬ),地ずりの裳(も)等が禁色とされた。着用は〈禁色聴許の宣旨〉をもって許される。
→関連項目束帯

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世界大百科事典 第2版の解説

きんじき【禁色】

服制の上で,勅許されなければ着用できない衣服の色および服地。令制では,親王以下官人の位階に応じて着用する服の色が規定されており,当色(とうじき)という。当色より下位の色目の着用は自由であったが,上位のものは禁じられていた。平安時代に入り,服制の変化,束帯の登場にともなって,青が天皇,赤が上皇,黄丹(きあか)が皇太子,深(こき)紫が親王や一位の着用の色となり,これに同系統の支子(くちなし),深緋,深蘇芳(すおう)が加えられて七色が一般の着用を禁じられた。

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大辞林 第三版の解説

きんじき【禁色】

着用を禁じられた服の色。
大宝令による位階相当の色より上位の色。
天皇・皇族の袍ほうの色。青(麴塵)・深赤・黄丹おうに・くちなし・深紫・深緋・深蘇芳ふかすおうの七色。
有文うもんの綾織物。および女性の装束の青色・赤色の織物の唐衣。のちには窠に霰地あられじの文も禁じられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

禁色
きんじき

天皇、皇太子、親王、公卿(くぎょう)、中宮、内親王など上位の者が用いる服色、および織物で、一般の者が着用することを禁じたもの。飛鳥(あすか)時代以来、服色によって身分を表す制度により、位階相当の色、すなわち当色(とうじき)が定められ、それより上位の服色を用いることを禁じた。平安時代以降は当色以外の使用を禁じたほか、天皇の当色である白、黄櫨染(こうろぜん)、青色、皇太子の黄丹(おうに)、上皇の赤色、上位の者が用いる紫や紅の濃い色、および錦(にしき)や二陪(ふたえ)織物は禁色とされた。『三代実録』清和(せいわ)天皇の貞観(じょうがん)12年(870)に、禁色を下衣となすことを許さずとあって、禁色が下着にまで及んでいたことを示している。同じく陽成(ようぜい)天皇の元慶(がんぎょう)5年(881)に、男女とも茜(あかね)、紅花(こうか)を支子(くちなし)に交え染める色は深浅を論ぜず服用することを禁ずとあり、黄丹に見間違える支子色を禁じた。『日本紀略』延喜(えんぎ)14年(914)に、美服紅花の深浅色等を禁ずとあり、紅についても制限された。なお禁色の宣旨を蒙(こうむ)るといって、天皇の許可によって特定の禁色を用いることを「色聴(いろゆ)る」といった。普通は四位、五位のときにこの宣旨を蒙り、摂関家の子弟は元服の日に蒙った。禁色を聴(ゆ)るされた人を禁色人(きんじきのひと)と称した。勅許によって用いるものは、たとえば紫や紅の濃い色、(か)に霰(あられ)文の浮織物の表袴(うえのはかま)などであった。また蔵人(くろうど)は青色の袍(ほう)を下賜されて着用した。女性の禁色については、父親の位階に準じて使用することができ、『満佐須計装束抄(まさすけしょうぞくしょう)』によると、上(じょうろう)の女房は青色、赤色の織物の唐衣(からぎぬ)、地摺(じず)りの裳(も)を許された。また男女とも聴るしの色といい、紫と紅の薄い色は使用できた。[高田倭男]

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世界大百科事典内の禁色の言及

【青】より

…いかに五色の考え方に規制されるところが大きかったか,ということを知る。加えて,平安期をも含めた古代宮廷社会においては,衣服から装身具まで,位階や身分に応じて使用すべき色(当色(とうじき))や使用不許可の色(禁色(きんじき))が厳格に定められてあったから,必然的に,色彩の感じ方にも尊卑観念のつきまとうことは避けられなかった。そして,位袍(いほう)のシステムにおいて,一~三位が紫または黒,四・五位が赤,六・七位が緑,八・初位が縹と定められていたから,〈あお〉の色は,greenおよびblueをひっくるめて尊貴の色に遠いという感じ方が固定してしまった。…

※「禁色」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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