女真(読み)ジョシン

デジタル大辞泉 「女真」の意味・読み・例文・類語

じょしん〔ヂヨシン〕【女真】

中国東北地方東部から沿海州を原住地とするツングース系民族。10世紀以降りょうの支配を受けたが、1115年、完顔ワンヤン部の阿骨打アクダが諸部族を統一してを建国。華北に進出して南宋対峙たいじしたが、1234年、蒙古に滅ぼされた。末の17世紀には、建州女真ヌルハチ後金(のち)を建て、満州族による中国支配の基礎を築いた。女直。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「女真」の意味・読み・例文・類語

じょしんヂョシン【女真】

  1. 〘 名詞 〙 一〇世紀以降中国東北部・沿海州に現われた狩猟牧畜民。女直(じょちょく)とも書く。ツングース系の民族。粛慎靺鞨(まっかつ)と同系統。一〇世紀以後遼の支配下にはいり、一二世紀はじめ阿骨打(アクダ)が諸部族を統一して金国を建て(一一一五)、遼・北宋を滅ぼして、華北に進出、南宋と対峙したが蒙古に滅ぼされた(一二三四)。一七世紀に女真の一部族の建州女真がおこり、ヌルハチは後金国を建てて明と対立、のち中国を制覇して国名を清と改めた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「女真」の意味・わかりやすい解説

女真
じょしん

10世紀初頭以後、史上に現れたツングース系民族。松花江(しょうかこう)、牡丹江(ぼたんこう)、黒竜江下流域、沿海州(現沿海地方)に分布していた。女直とも記されるが、女直は、遼(りょう)の興宗の諱(いみな)の宗真を避けて女直としたものとか、ジュルチンJurchin(女真)のn音の脱落した形などの説がある。唐代に勢力のあった黒水靺鞨(まっかつ)の後裔(こうえい)である。黒水靺鞨以外の靺鞨諸部は高句麗(こうくり)と渤海(ぼっかい)の支配を受けたが、黒水靺鞨は高句麗の支配を受けず、渤海の治下にあったことも明確ではない。黒水靺鞨は遼代には松花江、豆満江(とまんこう)流域、咸鏡(かんきょう)南・北道地方に発展し、遼と高麗(こうらい)に朝貢し、黒水女真、東女真とよばれた。これらの女真を生女真といい、遼の領土内に移され遼の戸籍につけられたものを熟女真という。遼の末期、生女真の完顔(ワンヤン)部が勢力を蓄えて発展し、阿骨打(アクダ)が諸部を統一し金(きん)国を建設し(1115)、遼を滅ぼした。金は華北を制覇し南宋(なんそう)と対立したが、1234年モンゴルに滅ぼされた。元代の女真は東北の森林地帯に散居し、合蘭(ごうらん)府水達達等路の管轄下にあった。明(みん)代では松花江流域に住む女真は海西女直、遼寧(りょうねい)省東部・吉林(きつりん)省東部・豆満江流域の女真は建州女直、牡丹江流域・黒竜江下流域・沿海州の女真は野人女直とよばれた。明国は黒竜江河口に奴児干(ヌルカン)都司を、遼陽に遼東都司を置いて女真諸衛を管轄した。17世紀初頭、建州女直からヌルハチが出て女真各部を統一し、後金(こうきん)国を建てた(1616)。明末清(しん)初の女真はJušen(女真人)と自称し、自らの集団をJušen国といったが、1635年10月、太宗ホンタイジがJušenと称することを禁じ満洲と称することにしてから女真の語は用いられなくなった。

[河内良弘]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「女真」の意味・わかりやすい解説

女真【じょしん】

中国東北の東部に10世紀以来史上に現れた民族。ツングース語系諸族に属する。12世紀,完顔(ワンヤン)部の阿骨打(アクダ)が民族を統一し,を建国。元代を経て明代には女直(じょちょく)と記され,建州(朝鮮の会寧付近)・海西(松花江流域)・野人(黒竜江下流域)の3種に分かれた。17世紀初め,建州女直のヌルハチが統一して後金国を建て,やがてと改称,中国を征服した。
→関連項目後金女真語刀伊の入寇万暦帝満州満州族

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「女真」の解説

女真(じょしん)
Nüzhen

ジュルチン(Jurchin)の音訳。女直(じょちょく)とも記す。10世紀以来東北アジアに現れる民族名。もと渤海(ぼっかい)遺民であったが,に滅ぼされたのち,生(せい)女真の完顔(ワンヤン)部の阿骨打(アグダ)が1115年統一して国を建て,やがて遼,北宋を滅ぼした。女真の大半は華北に移住し,南宋と対峙するが,1234年モンゴルに滅ぼされた。東北アジアにとどまった女真は明のとき,その羈縻(きび)政策に服し,建州女直,海西女直,野人(やじん)女直に分かれた。16世紀末,建州女直部のヌルハチが諸部を併せてマンジュ国をつくり,ついで女真人の統一帝国である後金(こうきん)国を建て(1616年),1619年,サルフの戦いで明‐朝鮮連合軍を破った。2代太宗(ホンタイジ)のとき,女真人を満洲人,後金国をと改めた。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「女真」の意味・わかりやすい解説

女真
じょしん
Nü-zhen; Nü-chên

女直ともいう。中国,東北地方 (満州) 東部に拠ったツングース系民族の 10世紀以後の名称。渤海国を建てた靺鞨 (まっかつ) 族の後身。渤海滅亡後朝に服属,以来女真といわれた。彼らは,遼東地方に拠り農業に従事し遼の戸籍に登録された熟女真,松花江流域に拠り狩猟と農業に従事し部族制を保って単に遼に統制された生女真に分れる。後者の完顔部にワンヤンアクダ (完顔阿骨打)が出ると東北地方を統一,収国1 (1115) 年朝を建設した。天興3 (1234) 年モンゴルに滅ぼされ,明朝が興ると,有力首長に官爵を授けて衛所を設立し,貿易権も与えるという間接統治に服した。当時女真は北方の海西,南方の建州,東北方の奥地の野人の三大部に分立。次第に社会が発展し,そのなかから建州女真のヌルハチ (奴児哈赤) が出て全女真を統一,天命4 (1619) 年清の前身である後金国を建てた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「女真」の解説

女真
じょしん

10世紀以来,中国東北地方の北東部から沿海州方面に住んだ半農半猟のツングース系民族。女直 (じよちよく) とも書く
ジュルチンの音訳で,粛慎 (しゆくしん) ・靺鞨 (まつかつ) もこれと同系。10世紀以後,遼 (りよう) に支配され,12世紀初めに完顔 (ワンヤン) 部の族長阿骨打 (アグダ) が諸部族を統一して金を建てた。さらに第2代太宗のときに遼を滅ぼし華北に侵入,南宋と対立した。1234年金がモンゴルに滅ぼされたのち,分裂して元・明の支配を受けた。16世紀の末,日本による朝鮮出兵によって明の女真に対する統制がゆるみ,17世紀建州女直の族長ヌルハチが諸族を統一して後金国を建国,満州族と称し,清(後金を改称)の基礎をつくった。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「女真」の解説

女真
じょしん

女直(じょちょく)とも。10世紀後半から17世紀初期まで中国東北部からアムール川流域,沿海州にかけての地域に現れた集団。女真・女直は自称の一つJurchinの宛字ともいわれる。言語は残された文字資料(女真文字)の研究から満州・ツングース諸語の一つで,満州語の祖語的な存在であることが知られている。12世紀には彼らが建てた金王朝が中国の北半分を支配し,17世紀から20世紀初めまで清王朝が中国全土を支配した。清朝の成立とともに,女真にかわってマンジュ(満州,あるいは満珠)という呼称が採用され,女真・女直の名は歴史から姿を消した。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「女真」の意味・わかりやすい解説

女真 (じょしん)
Nǚ zhēn

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の女真の言及

【金】より

…女真(じよしん)Jürchin(女直(じよちよく)Jürchi)族の完顔(かんがん)部長の阿骨打(アクダ)が中国東北地方に建てた王朝。1115‐1234年。…

【ツングース語系諸族】より

…シベリア語群にはエベンキ語(ソロン方言を含む),ネギダール語,エベン語が含まれ,アムール下流語群にはナナイ語,ウリチ語,ウイルタ語,オロチ語,ウデヘ語が含まれる。一方,満州語群は満州語(シボ方言を含む)と女真語(死語)からなっている。 シベリア語群,アムール下流語群の諸語を使用する民族は,ソロン族を除いてほとんどがロシア領に居住する。…

【刀伊の入寇】より

…平安中期の1019年(寛仁3)3月末~4月に,いわゆる〈刀伊の賊〉が大宰府管内に侵入した事件。刀伊とは高麗が蛮族とくに女真を呼んだもの。女真は後に金を建国するツングース系民族で,沿海州地方に住み,狩猟・牧畜を行い,高麗の北辺に接し,海から高麗に侵入・略奪を行っていた。…

※「女真」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android