熊野市(読み)クマノシ

デジタル大辞泉 「熊野市」の意味・読み・例文・類語

くまの‐し【熊野市】

熊野

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日本歴史地名大系 「熊野市」の解説

熊野市
くまのし

面積:二五七・六二平方キロ

紀伊半島南端の潮岬しおのみさき(和歌山県)と志摩半島大王だいおう崎との中間にあり、北東部は大台おおだいはら山を主座とする大台山系が、また北西部は北山川を隔てて大峰おおみね山系の山々がそびえる。南東部はリアス海岸となり熊野灘に面する。市内面積の八六パーセントは林野で、北東部の山岳地帯は尾鷲おわせ市に接し、南西部は南牟婁みなみむろ紀和きわ町・御浜みはま町に接する。集落はリアス海岸に点在する沿海部と、北山川およびその支流の平地に点在する山間部に分れる。山間部は農林業、沿海部は漁業が主産業であるが、温暖の地という特質を活用して近時柑橘園が造成されている。名勝おにじよう獅子しし岩・花窟はなのいわやなどは観光地として知られる。

「日本書紀」神代巻の一書に「伊弉冉尊、火神を生む時に、灼かれて神退去りましぬ。故、紀伊国の熊野の有馬村に葬りまつる」とあり、熊野の地名が現れる。

〔原始・古代〕

釜平かまのだいらをはじめとする遺跡からは、縄文各期の遺物が多量に出土し、縄文時代に続く弥生・古墳時代の土師器須恵器もりなど各遺跡から出土する。津ノ森遺跡は熊野地方最大級の遺跡である。弥生遺跡には水田農耕の跡が認められる。古代、当市域のほとんどは紀伊国牟婁むろ神戸かんべ郷に属したと考えられる。

〔中世〕

熊野の竹原八郎入道が大塔宮に忠勤を尽したことが「太平記」にみえるが、その屋敷跡という地が神川かみかわ花知はなじりにあり、南北朝時代より室町初期にかけて現飛鳥あすか町・五郷いさと町・育生いくせい町・神川町などの地域は、後南朝の終焉に至るまで南朝方に属した。室町中期以降は各地域に土豪が出現した。

熊野別当家の出自といわれる産田うぶた神社神官の榎本氏は有馬ありま一帯を領してその子孫は有馬氏を名乗ったが、応永(一三九四―一四二八)頃、有馬和泉守忠永は阿田和あたわ(現南牟婁郡御浜町)より行野ゆくの(現尾鷲市)に及ぶ地域を支配したという。その子和泉守忠親は大永(一五二一―二八)末頃一族内の抗争に敗れて死に、ついで忠親の子の孫三郎が嗣子のないまま没すると、新宮の堀内氏が有馬城を攻撃、和議を結んだが結局堀内氏善が有馬城を手中に収めた。


熊野市
くまのし

2005年11月1日:熊野市と南牟婁郡紀和町が合併
【熊野市】三重県
【紀和町】三重県:南牟婁郡

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「熊野市」の意味・わかりやすい解説

熊野〔市〕
くまの

三重県南部,熊野灘に臨む市。北東部などで奈良県に,中北部から南西部にかけて和歌山県に接する。 1954年木本町と荒坂村,新鹿村泊村有井村,神川村,五郷村,飛鳥村の7村が合体,市制。 1957年神志山村の一部を編入。 2005年紀和町と合体。市名は古来の国名による。市域の大部分紀伊山地で,平地は少ない。江戸時代は中心市街地の木本に紀州藩 (→和歌山藩 ) の代官所が置かれ,東紀州の政治・商業の中心地であった。 1959年に国鉄紀勢本線が全通するまでは紀勢西線の終点で,三重県主要部との鉄道連絡がなく,経済圏は大阪市,生活圏は新宮市 (和歌山県) に属していた。紀勢本線の全通,1967年の国道 42号線の改修で交通の便は飛躍的によくなり,三重県の経済圏に入った。紀州材として知られる紀州杉を中心とする林業,木本港,二木島港を基地とする漁業,大規模なミカン栽培などが主産業。熊野参詣道伊勢路 (国指定史跡) が市域を通り,「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産の文化遺産に登録されている。赤木城跡および田平子峠刑場跡は国指定史跡。海岸部は七里御浜など景勝地に富み,鬼ヶ城,獅子巌はともに国の天然記念物および名勝に指定される。奈良県,和歌山県との県境にある瀞峡は渓谷美で知られ,瀞八丁として国の特別名勝および天然記念物に指定。瀞峡を含む北山川熊野川の流域と海岸一帯は吉野熊野国立公園に属する。 JR紀勢本線,国道 42号線,169号線,309号線,311号線が通る。面積 373.35km2。人口 1万5965(2020)。

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