秋田県西部,日本海に突出する半島。日本海内側島列に属する男鹿島(西部山地)と,その東方に噴出した寒風山が半島の主体部で,雄物川,米代川両河口から伸びた2本の砂州が南北の脚部を構成する。典型的な複式陸繫島で,その内側に大潟村をのせた八郎潟を抱く。西部山地は本山(ほんざん)火山群(本山715m,真山,毛無山)と,北部の目潟群(一ノ目潟,二ノ目潟,三ノ目潟)などから構成される。前者は石英安山岩,流紋岩,変質安山岩などより成る溶岩円頂丘で壮年期の地貌を呈するが,後者は小爆裂火口群で,周辺一帯に目潟火山放出物や戸賀軽石層を堆積した。直線状の西海岸は断層海岸の特色を示し,南半部は40度以上の急斜面をもつ100m前後の海食崖で,海岸には海食洞や天然橋が発達する。半島は全体的に海岸段丘の発達が著しく,5段の段丘面が識別される。農業と漁業を基幹産業とする地域であるが,半島主体部を占める男鹿市の農業就業者率は約2割で,漁業就業者率はその約1/3にすぎない。県内一の漁獲量をもつ船川港をはじめ有力漁港が多いが,冬季のハタハタ漁に特色がある。脚部の潟上市の旧天王町,男鹿市の旧若美町,三種町の旧八竜町は,八郎潟干拓以前は潟漁業の盛んな地域であったが,現在は砂丘や段丘面利用の野菜類やナシ,ブドウなどの生産地である。優れた火山地形や海岸地形をもつ西部山地と,寒風山地区は男鹿国定公園に指定され,近年,観光施設も大いに整った。寒風山頂,八眺(はちぼう)台,入道峠などからの眺望は雄大であり,戸賀~門前間の島めぐりに興ずる観光客も多い。主要集落は男鹿市役所のある船川港であるが,船越と北浦は近世から大正初期まで,それぞれ半島の中心集落として栄えた。年末の奇習なまはげは本山赤神社の行事であったが,現在は半島一円で行われる。
執筆者:北条 寿
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
秋田県のほぼ中央部で日本海に突き出した半島。かつては海峡を隔てて本土と相対していた男鹿島であったが、本土側北部の米代川(よねしろがわ)、南部の雄物川(おものがわ)の運搬物と、島からの流出土砂がしだいに成長して砂州、砂丘となって北と南の両方でつながり、八郎潟(はちろうがた)を抱く陸繋島(りくけいとう)となった。第三紀層からなり、13段ほどの海岸段丘が発達し、その上に西部の本山(ほんざん)火山群と東部の寒風山(かんぷうざん)火山をのせている。本山は標高715メートルで半島の最高峰である。トロイデ型で、黒雲母(くろうんも)流紋岩からなる。北に真山(しんざん)、南に毛無山(けなしやま)の両火山があり、一帯はスギの美林が分布している。同じ火山活動による一ノ目潟、二ノ目潟、三ノ目潟のマール群は北西部海岸近くにあり、戸賀湾も二つのマールが海食により沈水したものといわれる。寒風山は標高355メートル。輝石安山岩からなる二重式火山で、山体はアスピーテトロイデ型をなしている。周辺山麓(さんろく)からは寒風石と称される石材が掘り出され、石垣用や墓石用に使用されている。西海岸は凝灰岩、集塊岩からなる断層海岸で、北部の入道(にゅうどう)崎から南の門前(もんぜん)まで海食洞、天然橋、奇岩怪石などの景観が展開する。寒風山、本山、西海岸は景観に優れ、男鹿国定公園に指定されている。
[宮崎禮次郎]
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出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
…梅雨の現象は弱く,夏の高温期間も短く,晩秋~冬季を除けば,おおむね快適である。ハタハタは市場性は低いが,県の海産魚類の半ばを占め,男鹿半島および八森町のハタハタ漁は,近世以来《秋田音頭》にうたわれ,そのすしは年越の食膳に欠かせぬものであったし,その〈しょっつる〉は〈きりたんぽ〉とともに秋田の味の代表である。 秋田県は奥羽山脈,白神山地,丁岳(ひのとだけ)山地と鳥海山などによって三方を囲まれており,これらの山地は豊かな森林,地下資源を提供してきた。…
※「男鹿半島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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