米代川(読み)よねしろがわ

精選版 日本国語大辞典 「米代川」の意味・読み・例文・類語

よねしろ‐がわ ‥がは【米代川】

秋田県北部を西流する川。奥羽山脈に発し、花輪盆地大館盆地鷹巣盆地などを経て、能代市日本海に注ぐ。古くから水運に利用。全長一三六キロメートル。河口部では能代川という。

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デジタル大辞泉 「米代川」の意味・読み・例文・類語

よねしろ‐がわ〔‐がは〕【米代川】

秋田県北部を西流する川。奥羽山脈中に源を発し、能代のしろで日本海に注ぐ。長さ136キロ。流域の秋田杉鉱産物の舟運に利用された。河口部は能代川ともいう。

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日本歴史地名大系 「米代川」の解説

米代川
よねしろがわ

奥羽山脈の岩手県二戸にのへ安代あしろ町地内に発し、鹿角かづの花輪はなわ盆地・大館盆地・鷹巣たかのす盆地を西流、能代平野を東西に横断して日本海に注ぐ。全長約一三七キロ、秋田県側の流路は約一一〇キロ。

鹿角盆地では八幡平はちまんたい山地からの熊沢くまざわ川・夜明島よあけじま川、青森県境の十和田湖付近山地からの大湯おおゆ川・小坂こさか川を集める。大館盆地では森吉もりよしダム付近山地からのさい川、青森県境炭塚すみづか森付近からの長木ながき川、同県境大日影おおひかげ山付近からの下内しもない川、さらに同県境孫左衛門まござえもん山付近からの岩瀬いわせ川、長慶ちようけい森・ッ森付近山地からの早口はやぐち川を合する。鷹巣盆地では北部山地から糠沢ぬかざわ川・綴子つづれこ川・前山まえやま川、南部山地から摩当まとう川・小猿部おさるべ川・阿仁あに川を集める。能代平野では東端で青森県境からの藤琴ふじこと川・種梅たねうめ川、南部山地からの田代たしろ川・にごり川を合したうち川を集め、平野中部では北部山地から常盤ときわ川が入り、南部山地から檜山ひやま川が入る。流路の南北には豊かな森林山地をもち、支流の数は多い。

上流では岩手県境の湯瀬ゆぜ温泉を中心に南北に十和田八幡平国立公園があり、小坂川上流や鹿角盆地南部は鉱山地帯で、長木川・岩瀬川・早口川流域は森林地帯である。阿仁川は上流に阿仁鉱山をもち、米代川支流中最も長い流路をもつ。またその支流小阿仁こあに川も流路一帯が森林地帯で、上流に萩形はぎなりダムがある。阿仁川支流の小又こまた川上流にも森吉ダムがあり、森吉山県立自然公園となる。藤琴川支流の粕毛かすげ川流域も森林地帯で上流に素波里すばりダムがある。北秋田郡と山本郡の郡境に近い后坂きみまちさかは急峻な崖が米代川に迫る交通の難所で、素波里ダム・藤琴川上流渓谷と併せて、きみまち坂藤里峡県立自然公園となる。河口には能代港がある。

米代川は河口の地名から野城のしろ川とも称し、大高安時能代川添諸役算用状(秋田家文書)に「慶長五年・同六年野城川添諸役之御算用之事」とある。「梅津政景日記」元和八年(一六二二)六月二四日条も「野代川」洪水のことを記し、日記全体を通じて米代川の称はない。「代邑聞見録」には「慶長年中迄は米代と号せし由、東御門主寺免状には、合浦郡米代古川の湊とありと言り」とある。文化一四年(一八一七)の「秋田千年瓦」には「古老の伝説を聞くに、今の米代河、古へは南部にても能代河と唱ひけるを、後に鹿角郡南部領に定りてより米代川と唱ひ、能代河とは唱ふべからずと南部にて令されけるとなん」とあり、これが正しければ、慶長(一五九六―一六一五)の諸大名の転封期に互いに自領意識をもって盛岡藩(南部)領では米代川、秋田藩領では野城川・野代川と称したものであろうか。

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改訂新版 世界大百科事典 「米代川」の意味・わかりやすい解説

米代川 (よねしろがわ)

秋田県北部を西流する川。奥羽山脈の岩手県八幡平市の旧安代(あしろ)町に源を発して秋田県に入り,花輪盆地大館盆地鷹巣(たかのす)盆地出羽山地を貫流し,能代平野より日本海に流出する。河口近くでは能代川とも呼ばれる。幹川流路延長136km,全流域面積4100km2。上流の鹿角(かづの)市,中流の大館市,下流の能代市が中心都市である。奥羽山脈や出羽山地の横谷部は,先行性の流路をとり,上流部の湯瀬渓谷,中流部の徯后(きみまち)坂は景勝地として有名。上流より熊沢川,大湯川,犀(さい)川,長木川,下内川,岩瀬川,早口川,阿仁川,藤琴川,種梅川など多くの支流を合流するが,阿仁川が最大の支流である。流域は日本三大美林の一つと称された秋田杉の宝庫で,近年までいかだ流しが見られた。秋田藩は林政に力を注ぎ,用材の伐採・搬出の義務を負う材木郷を各地に置いて能代奉行が支配したが,各材木郷には戦国武士の系譜を引く大肝煎がいて各村々を統轄した。現在も河口の能代市はじめ,川沿いの北秋田市,大館市などは製材業,木工業が盛んである。流域はまた,日本屈指の非鉄金属鉱物の埋蔵地帯で,小坂鉱山尾去沢鉱山(おさりざわ),花岡鉱山,松峰鉱山,釈迦内鉱山(しやかない),阿仁鉱山などの鉱山が開発された。

 鉄道開通前は県北地方の物資輸送路としても重要で,能代を中心に,二ッ井・荷上場(能代市),鷹巣・米内沢(よないざわ)(北秋田市),扇田・大館・十二所(大館市)などに河港が発達し,扇田までは大船と呼ばれた200俵積みくらいの船が通行した。終航地は十二所であったが,明治初年の水利開発により,花輪(鹿角市)まで通船可能となった。下り荷は米,銅,硫黄など,上り荷は塩,魚,砂糖,日用品が主であった。1905年の奥羽本線開通後は水運はすたれ,河港は衰退した。流域の総人口は県人口の約2割を占める。流域は米産地帯であるが,随所にみられる河岸段丘は普通畑,リンゴ園に利用され,畜産もまた盛んである。なお二ッ井町より上流の町では,近世以来の伝統をもつ定期市が開設されている。
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百科事典マイペディア 「米代川」の意味・わかりやすい解説

米代川【よねしろがわ】

秋田県北部の川。長さ136km,流域面積4100km2。奥羽山脈の西側に発し,鹿角(かづの),大館,鷹巣(たかのす)の各盆地と峡谷を連ねて西流し,能代市で日本海に注ぐ。盆地部には河岸段丘が発達,下流は能代平野を形成。江戸時代には野城川とも称し,木材・鉱石を運ぶ水路として重視され,サケなどの川漁もみられた。流域周辺は木材の大産地で,沿岸の主要集落に製材業が発達する。
→関連項目合川[町]秋田[県]鷹巣[町]田代[町]比内[町]藤里[町]二ッ井[町]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「米代川」の意味・わかりやすい解説

米代川
よねしろがわ

秋田県北部を西流して日本海に注ぐ川。一級河川。秋田県三大河川の一つ。延長136キロメートル(秋田県側で110キロメートル)、流域面積4100平方キロメートル。岩手県の奥羽山脈に発する兄(せ)川、根石川などの水を集め、秋田県に入ると花輪、大館(おおだて)、鷹巣(たかのす)の各盆地と能代(のしろ)平野を貫流して日本海に流入する。支流は31に及び、おもな支流に、鉱山地帯の小坂川、森林地帯の長木川・岩瀬川・早口(はやぐち)川、阿仁(あに)鉱山のある阿仁川などがある。奥羽山脈、出羽山地を横断する先行河川で平均勾配(こうばい)は670分の1、荷上場(にあげば)、早口、大滝、湯瀬(ゆぜ)付近は流路が階段状をなすため、河川交通時代にはかなりの制約を受けた。流域の鉱産物や秋田杉を日本海沿いの能代まで運ぶため江戸時代から舟運が利用されてきた。河口から荷上場(能代市)、鷹巣(北秋田市)、大館(おおだて)・扇田(おうぎだ)・十二所(じゅうにしょ)(大館市)などの河港が発達し、扇田までは200俵積みの大船が通った。終航地は普通は十二所で、風のよいときは沢尻(さわしり)(鹿角(かづの)市)まで上った。天保(てんぽう)年間(1830~1844)には上流から米、大豆、荏粕(えかす)、銅、硫黄(いおう)などを運び、能代港からは塩、松前物水産物・水産加工物)、砂糖、繰綿(くりわた)、日用品を上流に荷揚げした。1905年(明治38)奥羽線が全通してから舟運は衰えた。

[宮崎禮次郎]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「米代川」の意味・わかりやすい解説

米代川
よねしろがわ

秋田県北部を流れる川。全長 136km。奥羽山脈に発し,花輪,大館,鷹巣の各盆地を貫流し,能代市で日本海に注ぐ。下流部は能代川とも呼ばれる。盆地内では河岸段丘が発達し,下流部に能代平野を形成。古くから流域で産する米,大豆,銅鉱などの物資の輸送路として利用され,江戸時代には能代,二ツ井,鷹巣,米内沢 (よないざわ) などの河港が発達した。奥羽本線の開通に伴い,河川交通は衰微したが,流域は銅鉱や秋田杉などの資源が豊富で,木材の集散や製材,木工業が盛んである。支流の阿仁川水系は田沢地区を含めて,発電,灌漑などの総合開発が進められ,県下有数の穀倉,電源地帯となっている。

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