百韻(読み)ヒャクイン

デジタル大辞泉 「百韻」の意味・読み・例文・類語

ひゃく‐いん〔‐ヰン〕【百韻】

連歌俳諧で、100句を連ねて一巻きとする形式懐紙4枚を用い、初折しょおりは表8句・裏14句、二の折・三の折は表裏とも各14句、名残の折は表14句・裏8句を記す。

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精選版 日本国語大辞典 「百韻」の意味・読み・例文・類語

ひゃく‐いん‥ヰン【百韻】

  1. 〘 名詞 〙 連歌や俳諧連句で、一巻が百句で成り立っているもの。四枚の懐紙に、初折表八句・初折裏一四句・二折表一四句・二折裏一四句・三折表一四句・三折裏一四句・名残折表一四句・名残折裏八句の順で書きつける。
    1. [初出の実例]「連歌。昔は五十韻百韻とつづくる事はなし」(出典:八雲御抄(1242頃)一)

百韻の語誌

( 1 )聯句(れんく)において、中古末期に百韻という形式が確立し、その影響を受けて連歌にも用いられたとみられる。その後、連歌・俳諧の興隆により、もっぱら連俳のものを指すようになった。
( 2 )五十韻」「千句」等の形式もでき、俳諧では「歌仙」(三六句)、「世吉(よよし)」(四四句)等も行なわれたが、連俳ともに百韻を基本形式とする。

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改訂新版 世界大百科事典 「百韻」の意味・わかりやすい解説

百韻 (ひゃくいん)

連歌や俳諧で,5・7・5の長句と7・7の短句を交互に連ねて100句に至る形式のもの。〈百韻〉とは,中国の聯句(れんく)からの影響とされる。連歌ははじめ2句の唱和からしだいに連続する句数が増えていったが,1200年前後に100句の形式が成立したらしい(現存資料では《明月記》正治2年(1200)9月20日の記事がもっとも古い)。13世紀以後,連歌の基本的形式となり,これを10かさねて千句,千句を10かさねて万句という型式も生まれた。江戸初期の貞門談林時代の俳諧は百韻の形式によって連句を制作したが,蕉門が確立するに従って〈歌仙〉形式に移行するに至った。

 百韻の記載には歴史的に種々の方式があったらしいが,一般的には,懐紙4枚を用い,それぞれ,初折,二の折,三の折,名残(なごり)の折と名付け,初折の表に8句,裏に14句,二の折と三の折はともに表裏14句ずつ,名残の折は表に14句,裏に8句を書く句割である。最初の3句を〈発句〉〈脇(脇句)〉〈第三〉,最後の句を〈挙句(あげく)〉とよぶ。百韻の構成には種々の約束事があり,月の句,花の句などを詠むべき位置定座)や回数などは連歌,連句の式目とかかわりつつ規定されている。ただし,それについても歴史的変遷があって必ずしも一様でない。
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百科事典マイペディア 「百韻」の意味・わかりやすい解説

百韻【ひゃくいん】

歌仙,世吉(よよし)等とともに連歌・俳諧の一体。長句,短句を交互に百韻(句)連ねたもの。多くは連歌および貞門談林派の俳諧で行われた。芭蕉に至って歌仙形式に移行した。
→関連項目紹巴水無瀬三吟百韻連歌連句

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「百韻」の意味・わかりやすい解説

百韻
ひゃくいん

連歌(れんが)・俳諧(はいかい)の作品形式で、百句のまとまりをいう。五・七・五の長句と七・七の短句を交互につけて合計百句となるもの。名称は漢詩の聯句(れんく)に由来するので、韻は踏まないが百という。最初の3句を、発句(ほっく)・脇(わき)(句)・第三とよび、最後の百句目を挙句(あげく)(または揚句)とよぶ。一般的な書式では、懐紙4枚を用い、初折表(しょおりおもて)8句・裏14句、二の折、三の折はそれぞれ表裏とも14句ずつ、名残(なごり)の折表14句・裏8句を記す。千句、万句などの作品も百韻を基本単位とする。13世紀初めごろに記録がみえるが、平安時代後期にはすでに用いられていた形式と考えられ、以後中世末期までもっとも一般的な形式であったが、連歌が俳諧に移行するにしたがって、歌仙(36句)の形式が優勢になった。

[奥田 勲]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「百韻」の意味・わかりやすい解説

百韻
ひゃくいん

(1) 韻字を 100踏んだ長編の漢詩。多くは 200句から成る。 (2) 連歌俳諧用語。連歌および連句で,発句から挙句 (最後の句) までの1巻が 100句から成る形式。横半折にした懐紙4枚の表裏に一定の句割によって記される。この形式は鎌倉時代に完成し,南北朝,室町時代以後連歌および貞門,談林の俳諧の主流をなした。蕉風以後は 36句の歌仙形式が多くなった。

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世界大百科事典(旧版)内の百韻の言及

【連歌】より

…一人の作者が詠み通す場合(〈独吟〉という)もある。また100句(〈百韻(ひやくいん)〉という)を10回連作して〈千句〉とすることも多い。
[成立]
 記紀歌謡のヤマトタケルと御火焼之老人(みひたきのおきな)との片歌による問答(5・7・7/5・7・7)を連歌の起源とする立場が古来あり,〈新治(にいばり)筑波を過ぎて……〉というヤマトタケルの歌から,〈筑波の道〉が連歌の別称となった。…

※「百韻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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