瞑想系身体技法(読み)めいそうけいしんたいぎほう

百科事典マイペディア 「瞑想系身体技法」の意味・わかりやすい解説

瞑想系身体技法【めいそうけいしんたいぎほう】

各種の瞑想こころを静めて神に祈ったり,こころを一つに集中する)をとおして心身の状態にある変化を起こさせる身体技法のこと。その変化とは,癒(いや)し,ストレス解消,心身の調和,精神統一,集中力の向上,心地良さ,禅定(ぜんじょう),観想などさまざまである。最近では,スポーツの成果を高めるためにメンタル・トレーニングイメージ・トレーニングなどにも用いられる。こんにち比較的普及していると思われる瞑想系身体技法は,大きく分けて3つの系譜があると言ってよい。すなわち,ヒンドゥー教仏教道教修行法としてのそれである。 ヒンドゥー教ではヨーガと呼ばれる。ヨーガでは,瞑想には3つの段階がある,と考えられている。(1)ダーラナー凝念):こころを一つに集中する。(2)ディヤーナ静慮):こころの働きを静め,澄み切った状態になる。(3)サマーディ三昧):自分の意識が消え,対象が光り輝く状態に入る。サマーディは仏教でいう悟りとか解脱と呼ばれる状態と同じである。このサマーディに至るための身体技法は昔からさまざまな方法が工夫され,多くの流派を生んでいる。 仏教の瞑想法もまたヨーガの影響を強く受けており,ある意味では,ヨーガの生んだ流派の一つと言ってもよい。仏教でいう瞑想の方法は宗派によって異なる。密教(天台・真言)では観察・観心といい,瞑想の行を積み上げていくことによって,神々や仏の世界が見えるようになってくる,という。一方,禅宗では坐禅座禅)を組むという。坐禅の目標は,一切の雑念を取り払い,無念無想の状態,あるいは無心,空の状態に入ることにある。こころを無にすることによって,なにものにも囚(とら)われない,あるがままの真の自由に到達する。 道教ではタオ(道)と一体になるための瞑想が行われる。タオとは,宇宙の根源的な真理,もしくは真実在の世界のことを意味する。こうしたタオの不滅,タオとの一体化を究極の理想とする道教は,もともとは漢民族のさまざまな土着の宗教に根ざしている。したがって,道教の瞑想系身体技法も多岐にわたる。 以上,ヨーガ,坐禅,タオの3つの系譜の他にも,同様な瞑想系身体技法がさまざまに創意・工夫され,伝承されている。日本の古武術の世界では,古くから瞑想系身体技法が重視され,さまざまな行法が開発されている。古武術では,相手を倒す以外に自分が生き延びる道はないので,つねに生死と隣合せの行が求められ,死の恐怖をいかに克服するかが古武術鍛練の大きな課題であった。この死の恐怖を超克してはじめて,身心が解放され,武術の技が生かされることになる。したがって,古武術の修行では神道や仏教が大きな役割を果たした。たとえば,柳生新陰流柳生流)ではを取り入れ,剣禅一致を理想とした。 近年では,フランスのジャック・マイヨールが坐禅やヨーガなどの瞑想系身体技法を用いて身体改造に成功し,人類初の水深100mに素潜りで到達するという偉業をなしとげた。また,登山家のラインホルト・メスナー〔1944-〕も,同じように瞑想系身体技法をとおして身体改造をはたし,無酸素・単独で8000m以上の登山に成功している。このように瞑想系身体技法は,スポーツの分野にも進出して,これからますます大きな役割を果たすことが期待されている。

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