(1)能の曲名。五番目物。観世信光作。前ジテは唐土の老人。後ジテは虎。日本の僧(ワキ)が仏法東漸の跡を訪ねて唐土に渡ると,ある山で薪を背負った老人(前ジテ)と若者(ツレ)に出会う。僧が遠くに見える異様な竹林に目をつけて老人に尋ねると,あそこは虎の住みかで,向こうの高山から雲がかかると竜が下りてきて,竜虎の戦いが始まるのだと言う。老人はさらに,竜と虎が位の高い畜類であることを説明して,里に帰って行く(〈クセ〉)。僧が竹林に近づき,老人に教えられたように岩陰に隠れていると,竜(ツレ)が黒雲から下りてきて挑みかかる。やがて虎(後ジテ)が岩洞から現れ,竜と激しく戦うのだった(〈ノリ地・打合イ働(はたらき)〉)。たとえに引かれる〈竜虎の争い〉を舞台化した,見た目本位の能。クセ中心の夢幻能の典型的構成をとるが,前ジテは化身体(けしんたい)ではない。
執筆者:横道 万里雄(2)歌舞伎舞踊。歌舞伎舞踊は〈りゅうこ〉という。義太夫。本名題《竜虎の聯(れん)》。作詞大野恵造。作曲野沢松之輔。振付坂東三津之丞。1953年9月大阪歌舞伎座で初演。配役は8世坂東三津五郎の竜,3世実川延若の虎。能の《竜虎》によっており扮装も能風である。稲妻,雷鳴,暴風などに音響や照明を駆使し,戦後の代表的な作品といえる。なお,杵屋(きねや)正邦作曲の新邦楽によるものもあり,1952年東京歌舞伎座で初演された。
執筆者:権藤 芳一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
…日本の僧(ワキ)が仏法東漸の跡を訪ねて唐土に渡ると,ある山で薪を背負った老人(前ジテ)と若者(ツレ)に出会う。僧が遠くに見える異様な竹林に目をつけて老人に尋ねると,あそこは虎の住みかで,向こうの高山から雲がかかると竜が下りてきて,竜虎の戦いが始まるのだと言う。老人はさらに,竜と虎が位の高い畜類であることを説明して,里に帰って行く(〈クセ〉)。…
※「竜虎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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