節分(狂言)(読み)せつぶん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「節分(狂言)」の意味・わかりやすい解説

節分(狂言)
せつぶん

狂言曲名。鬼狂言。夫が出雲(いずも)大社へ年籠(としごも)り(大晦日(おおみそか)夜から元旦(がんたん)朝にかけて参籠(さんろう)すること)に行った留守を守っている妻のところへ、蓬莱(ほうらい)の島(渤海(ぼっかい)の中にあるという想像上の霊山)の鬼(シテ)が、節分の豆を拾って食べようと日本へやってくる。この家の灯(ひ)を頼って案内を請い、荒麦(あらむぎ)を与えられるが、見れば美しい女房である。心を奪われ、なんとか気に入られようと、蓬莱の島にはやる小歌を次々に謡って慕い寄るが、女が受け付けないので、ついに泣きだしてしまう。そこで女は心を和らげたふりをして、鬼の宝である隠れ蓑(みの)と隠れ笠(がさ)を取り上げてから家へ入れると、さて時分もよし、「鬼は外へ」と豆を鬼にぶつけて追い立てていく。鬼が純情な男性のような恋情を示すのが漫画的で、鬼の謡う豊富な民衆流行歌謡も楽しい。

[小林 責]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

自動車税・軽自動車税

自動車税は自動車(軽自動車税の対象となる軽自動車等および固定資産税の対象となる大型特殊自動車を除く)の所有者に対し都道府県が課する税であり、軽自動車税は軽自動車等(原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自...

自動車税・軽自動車税の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android