精神遅滞(読み)セイシンチタイ(その他表記)mental retardation

デジタル大辞泉 「精神遅滞」の意味・読み・例文・類語

せいしん‐ちたい【精神遅滞】

知的機能が平均より明らかに低く、年齢に応じた行動がとれず、それが成長期(18歳未満)に現れたもの。知能指数IQ)その他の総合的な診断に基づき、軽度・中等度・重度・最重度に分けられる。1970年ころから精神薄弱に代わって用いられた。平成11年(1999)から、法令上は「知的発達障害」「知的障害」という語が用いられている。知的能力障害

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精選版 日本国語大辞典 「精神遅滞」の意味・読み・例文・類語

せいしん‐ちたい【精神遅滞】

  1. 〘 名詞 〙 知能の発達が平均水準以下で、社会的な適応行動に障害がある状態。世界保健機関(WHO)では知能指数(IQ)により、軽度・中等度・重度・最重度に分類している。精神発達遅滞。知的障害。

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改訂新版 世界大百科事典 「精神遅滞」の意味・わかりやすい解説

精神遅滞 (せいしんちたい)
mental retardation

従来,ドイツ語でSchwachsinn(精神薄弱)といわれた概念で,知的能力の発達が遅滞し,学習や知的な作業,身辺の管理,社会的な生活が困難なものをいい,精神発達遅滞ともいう。これに対し,情意発達の遅れないし不均衡が人格異常であり,性的精神発達の遅れないし不均衡が性倒錯である。知能がいったん発達したのち低下するものは認知症で,精神遅滞とは区別される。また,難聴によって言語の習得と知覚発達に遅れがあるものは,本来の知能は保たれているので,仮性の精神遅滞という。

WHOは知能指数(IQ)によって,精神遅滞を最重度,重度,中等度,軽度,境界に分けているが,伝統的には白痴,痴愚,魯鈍(軽愚)および境界に分けられる。一般に情意の障害は知的な障害ほどは目立たず,むしろ人なつこく,愛きょうがあり,すなおなことがある。また,IQは低くても,人づきあいなど世間的な知恵はわりあい発達している場合がある。このため,本当は知能指数だけでなく,社会的成熟度を測定し総合して考える必要がある。

 以下に伝統的な分類について述べる。

 (1)白痴Idiotie ウェクスラー式知能検査でのIQは20以下で,全精神遅滞の5%を占める。片言程度の言語能力しかなく,社会生活全般に介助を要し,排便,経血,摂食など身の回りの処理にも介助を要する。身体的にも弱く,肺炎などで幼時に死亡することが多い。(2)痴愚Imbezillität IQは20から50で,全精神遅滞の20~30%を占める。身辺の事がらは適当に指導されればでき,簡単な反復作業も可能であるが,新しい環境への適応や作業内容の変化に臨機応変に対処することができない。知能年齢は6~7歳で,自立困難である。(3)魯鈍Debilität IQは50から75で,全精神遅滞の60~70%を占める。日常生活はさしつかえなく,きめられた仕事はできるが,自分から考えたり計画をたてたりすることができない。知能年齢は10~12歳で,適切な指導があれば実直な社会人となることが可能である。(4)境界 精神遅滞と正常人の中間に位するもので,IQは75~90のものを境界とする。この群では,小・中学校での学力は不振であるが,比較的単純な労働に従事して社会生活を送ることは十分に可能である。

内因性が約50%,胚珠障害(卵子・精子の形成から受精完了までの時期の障害)ないし胎芽障害(主要器官が形成されヒトらしくなる妊娠2ヵ月末までの時期の障害),乳児期までの間の脳障害による外因性が約50%である。内因性では身体的・神経学的異常はみられず,魯鈍から境界が多い。外因性で最も多いのは出産時障害で,乳児期における脳炎,麻疹や猩紅(しようこう)熱による脳症がこれに次ぐ。染色体異常,先天性代謝障害,内分泌障害,母斑症も後者に含まれる。前者に比して概して重いものが多く,身体的・神経学的異常がみられることが多い。染色体異常による精神遅滞には,常染色体異常によるダウン症候群,性染色体異常によるクラインフェルター症候群ターナー症候群がある。先天性代謝異常による精神遅滞には多くの疾患が知られているが,代表的なものとしては,タンパク質代謝異常によるフェニルケトン尿症,糖質代謝異常によるガルゴイリズム,脂質代謝異常によるニーマン=ピック病,ゴーシェ病,黒内障性白痴などがある。内分泌障害には甲状腺機能低下によるクレチン病,下垂体機能低下によるローレンス=ムーン=ビードル症や小人症があり,母斑症には結節性硬化症やレックリングハウゼン病がある。内因性でないものには予防や治療ができるものが少なくない。現在では出産時障害の最大の原因であった鉗子分娩はほとんど行われなくなり,フェニルケトン尿症,クレチン病,小人症などは予防や治療が可能になっている。

魯鈍までの発生頻度は2~3%とされるが,1953年の中学生を対象とした文部省による3府県のサンプル調査では6~8%で,境界を入れると約20%という数字がでている。
知能
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世界大百科事典(旧版)内の精神遅滞の言及

【アメンチア】より

…以来アメンチアは,外因反応型を呈する疾患,すなわち症状精神病の特徴的な意識障害の一型とされた。なおイギリスでは,amentiaは精神遅滞を意味し,かわってconfusionという言葉が用いられる。【石黒 健夫】。…

※「精神遅滞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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